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14歳になったあたしに、叔父さんがすっごいシンミョーな顔をしてボロい手帳をくれた。あたしがこれくらいになったら渡そうと思っていたんだって。
なにそれ。ファンタジー系ラノベとかでよくあるやつじゃん。魔法の書ですか?それとも冒険の書?すっごいワクワクする。
ご飯が終わって部屋のベッドに寝転んで手帳をゆっくり開いた。
「うわあ……。」
乱暴に書き殴られた文字は古文書のミミズ文字みたいで読みにくい……。
最初の数ページだけ読んだ。吸血鬼被害に遭った女性の話。プロローグが本編と時間軸が違ってたり、二人の出逢いを~とかなんとかあったから、小説の原稿かな。
とりあえず、一族の重要な書物を読まされてるんだと思う。
頭がぐるぐるするから、手帳を閉じて寝転んだ。
「これを読み終わった時、お前はどんな道を選んでも自由だよ。」
叔父さんはケーキを切り分けながらそう言っていた。
自由?そんなことないよ。
あたしはこのまま大人になって、一族が決めた男と結婚して、一族のために生きなきゃいけない。
これのどこが自由なのだろう。
窓を叩く音がした。きた!あたしは子犬のように飛び起きて窓を開けた。
「美紅!たんおめ!」
「うあ」
着崩した高校の制服に青いメッシュの入った髪型。
恋人の蒼矢が悪戯っぽく笑ってコンビニ袋を突き出す。
裸足で3階のあたしの部屋に飛び入る蒼矢。叔父さんに入場規制をかけられたっておかしくないや。あたしはわざと怒った素振りをした。
家がすぐ側で小さい時からあたし達はお互いの部屋に行ったり来たりしていた。でも、最近はめっきり蒼矢の部屋に行かなくなった。わざとそうしてる。
「食おうぜ!」
蒼矢がコンビニ袋の中からたくさんのアイスクリームを取り出した。
「あんたが食べたかっただけじゃないの?」
「ちげーよ!」
蒼矢が買ってきてくれたアイスクリームはどれもあたしが好きなやつばっかり。これ、全部食べていいのかな?
「お前、また本なんか読んでんの?」
ベットに置いたままの手帳。
「触らないでよ!叔父さんから貰った大事な物なの!」
勝手に手帳を開いた蒼矢の頭を軽く叩いた。アイスクリームが着いたらどうするの。
「お前んとこのオッサン、金ならいっぱい持ってるだろ。姪っ子の誕生日にボロ本1冊なんて、ケチくせえな。」
蒼矢はページをぺらぺら捲って読みながら、叔父さんを馬鹿にする。しっかりと読んでるくせに。
でも、急に蒼矢は手帳を閉じて苦虫を噛み潰した顔になる。
「これ、俺が読んだら殺される。」
この手帳は魔法の書でも冒険の書でもなく、一族の機密情報が書かれている様子。
全然、自由になれないよ。




