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Daybreak?  作者: 灯妃幸
5/10

5

「いてっ」

 看護士が注射を刺すのに失敗した。その跡から真っ赤な血が一滴流れる。


「え。」

 看護士が声を上げ、私は声が出なかった。

 血が流れた注射の傷跡が一瞬で消えたのだから。

 刺せども刺せども、血が一滴流れて傷跡はきれいさっぱり消える。その速さは異常だった。


 医者は鼻息を荒くして興奮を隠せない。看護士を押しのけて、私の左手をがっしりと掴んでボールペンを突き刺した。

「痛い」

ボールペンは肉を抉って真っ赤な直線を描く。

「やめて!」

 肉が抉れた傷跡は痛みが走ると血が滴り落ちるより早く塞がる。

「なんと」

 医者は傷跡をなぞる。そこには痣一つ無かった。変わりもしない、私の手。

「離して……」

息がひゅうひゅう漏れるだけだった。

ボールペンの先端に着いた血はどす黒く変色していた。


「何をした?」

彼が目を覚ます。

血が着いた医者のボールペンを奪い取ると、片手でへし折る。私も医者も看護士もあっけらかん。

そして彼は立ち上がり、輸血パックの口を開いた。私の中に入ってくる筈の血だ。

「飲め」

血を飲むなんて。気色悪い。でも、とてもおいしそうだった。

口の中に涎がじゅるりと溢れる。

喉が乾いた。


 パックをむしり取って血を口いっぱいに含む。とてもおいしい。水のように体に染み渡る気がした。

わかった。私は人間の道を踏み外した。


「行くぞ。早くしろ。」

 パックの中身が一滴も無くなると、体に繋がった線と管を引き抜く。そして彼は私を抱えて窓から飛び降りた。5階ぐらいの窓からだ。

悪い気がするけど、今この体がどうなっているのかはこんな病院では解らないだろう。

 でも、この男は知っているのだろう。

彼はふわりと地面に降り立って、車に飛び乗った。


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