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Daybreak?  作者: 灯妃幸
2/10

2

 出逢った夜明けは雨が降っていた。全てを洗い流せるような雨。

 昨晩、赤い目をした化け物が家族を襲って殺した。化け物は私たちとなんの変哲も無い人間の姿で、人間の血を吸う。ここ最近、テレビや新聞を騒がせている連続殺人事件と同じ手口だった。

 父さんも母さんも兄弟も化け物が噛み付いたら即死。私も結構な量の血を吸われた。でも、まだ生きている。

 ソファーから逆さまに倒れたまま、どれくらい時間が過ぎたのだろう。夜が更け、雨が降り始め、外が少しずつ明るくなっていた。

母さんが噛み付かれた私を守ろうとして、化け物を花瓶で殴った。衝撃で化け物は私を離したけど、頭から血をぼたぼた流しながら、母さんに噛み付いた。

カーペットに落ちて染みた血。花瓶の欠片と生けていたトルコキキョウと相対的に、黒く変色していた。人のものとは思えないくらい、醜い色。

化け物は人間の姿で姿を誤魔化せても、中身に詰まっているのはどす黒い汚物だね。

母さんは自分を犠牲にしてまで私を助けてくれたけど、もう遅かった。


 ついさっきまで重かった体が動けないほど軽くなる。息をすると体中が痛かったけど、しないほうが楽なことに気が付いた。

 そろそろ死ぬんだ。

 一足遅れてみんなの所へ追い付くだけなんだから、怖くない。私は息を止めた。


 つま先、足、お腹、首の順番で冷たくなって、冷たくなくなって、感覚が消えた。呼吸を止めてもしつこく残っていた化け物の生臭い血の香りが消えた。視界がチカチカするから頭がまだ痛いかもしれない。最後の力を振り絞って目を閉じた。

 なにも感じなくなった。なにも匂わなくなった。なにも見えなくなった。

 音だけが聞こえた。


 心地良い雨の音。

しずくの一つが庭の草木に滴り落ちる。

 遠くから車がやってくる音。

早朝の住宅街には珍しいことじゃない。

 家の前に停まる音。

新聞配達?いや、あれは原付で来る。

 前庭の砂利が踏まれる音。

 宅配便?早すぎやしないかい。

 化け物が窓ガラスを蹴破ったおかげで外で何が起きているかがよく聞こえる。

 誰だろう。もしかして、化け物?

私にトドメを刺していないことを思い出して、戻ってきたのかな?

 でも私、そろそろ死んじゃうよ。


 飛び散ったガラスが踏まれて割れる音。

止まったはずの心臓が暴れる。

 化け物が入ってきた。

お願い、来ないで。

 歩き回る靴音。

私に気付かないで。

 ゆっくりと近付く靴音。

 靴音が止まる。

すぐそこで。


 あーあ、トドメを刺されちゃう。あっけないな。もう少しの間だけ雨の音を楽しんでいたかったな。


 私に触れる衣擦れの音。

 化け物の息。荒くない。


「死にてえか?」

 男の声だった。


 ぱちん、と弾ける雨粒の音がとても愛おしく思った。

止まってた息がひゅうひゅう溢れた。

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