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俺のサークルの先輩はお嬢様だったみたいだ

すっかり梅雨入りしてしまった今日日。

こんな天気では通学ですら面倒に感じてしまう。

雨は鬱陶しいから好きではない。

しかし、姉ちゃんは違う。


「夏夜くん夏夜くん」

「はひ?」


やっぱりアイスはソーダ味に限る。


「雨降ってるね」

「ふん」

「なのに何でテンション低いの?」

「ほへは・・・・・・俺が雨嫌いだからだ」

「変なの、まぁ夏夜くんがいればどの季節どの天気、どの気候でも私はいいんだけど」

「姉ちゃん仕事は?」

「収録が順調過ぎて今日は休み、深夜に生でラジオだから晩御飯作れないの」

「そっか、じゃあそろそろ大学いってくるよ」

「行ってらっしゃーい、今度サークル見に行くね」

「見るようなもんないから来なくていいよ」


てか来ないで。

サークルが潰れかねない。

別に潰れてくれてもいいんだが先輩楽しそうだし、潰すのは少し可哀想な気もする。

本人曰く、今まで自分の趣味の話を聞いてくれる人が外にも家にもいなかったらしい。

ぼっちでは無いらしいが、熱く語れる自分を受け入れてくれる雰囲気じゃなかったからだ。

まぁ、俺には先輩の高校時代や家での事なんて知ったことじゃないけど。

でも出来るなら俺はすぐにでもあのサークル抜けたい。

かれこれ五年は愛用してる傘をさして俺は駅に向かった。


■□■□■□■


今日の講義も終了。

久し振りにゼミに顔出しといた方がいい気もするがあえてサボろう。

面倒だから。

てか雨やんでないな。

でもやっぱ六月だとこの時間帯でもまだ日が沈みきってない。

さっさと暮れればいいのに。

そんな事を考えつつ俺は部室の前へ来ていた。


ガチャ


「もぉ、遅いで━━━━━━」


ガチャ


帰るか。


ガチャ


「ちょっ、何で秋菜見た瞬間に帰ろうとしてんですか!?」

「離せ!腕にしがみつくなアホ!」

「アホとはなんですか!?先輩こそ秋菜に冷たくする世界一の愚か者ですよ」

「言ってること無茶苦茶だからな、気づいてる?」

「何が?」


さすがアホの子。

貴様に俺を愚か者呼ばわりする権限もなにもない。

むしろどっちが愚者か考えてから出直してこい。


「とにかく林檎ちゃんも待ってるし早く来てください」

「林檎ちゃん!?」

「えっ、可笑しいですか?」

「いや、別に」

「早く来てください」


てかなんでこいつがいんだよ。

お前このサークルの部員じゃないだろ?

かといって先輩とも接点無さそうだし。


「連れてきたよー」

「ちわっす」

「こんにちは」


ドアを閉めていつもの席に座る。


「はい」

「ありがとございます」


淹れたての紅茶を受け取り、一口啜る。

相変わらず旨い。


「何で秋菜はいるんだ?」

「ここに入部するからです」

「なぜ?」

「先輩がいるからに決まってるじゃないですか」

「・・・・・・うわー」

「ちょっとなんですかその反応!私みたいに宇宙革命並みの美少女にあんなこと言われて、うわー、はないでしょ!」

「先輩、こいつ追い出していいですか?」

「私は秋菜ちゃん好きなんですよ?」

「えっへん」


そのどや顔やめろ。


「ちなみに聞きますが、どの辺が?」

「ほら、この愚かな先輩に林檎ちゃんの口から私の魅力をいい放ってやってください」

「お前はちょっと黙ってようか」

「わはりまひたわはりまひたから」

「はぁ」

「ほっぺた引っ張ることないじゃないですか」

「うふふ」

「せっ先輩?」

「すっ、すみません。兄妹みたいで面白いなって」


本物はこんなんじゃないですよ?


「秋奈ちゃんはやんちゃな妹みたいで可愛いから好きです」

「私、長女なのに」

「弟さんですか?妹さんですか?」

「弟。くそ生意気なのが双子でいるの」

「へぇ、小学生くらいか?」

「うん、今年で小四」

「随分と年が離れてるんですね」


こいつの弟か。

なんか鬱陶しそうだな。


「林檎ちゃんはいないの?」

「んー、お姉様が一人」


時々思うが、この人は趣味について語ってないときは本当におしとやかだ。

言葉使いも綺麗だし振舞いも育ちのよさを思わせる。

もしかしてお嬢様?

でもまぁ、聞きにくいわな。


「南くんどうしたんですか?」

「いや、初めて会ったときと金森先輩の印象が違うくて」

「どのようにですか?」

「語ってないときはなんかお嬢様っぽい」

「そう、かもしれませんね。自慢ではないのですけど私の家はとても裕福ですし。お父様が確か幾つか会社を経営なさってたはずです」

「マジですか?」

「はい、マジです」


ご令嬢ですね、はい。

驚きのあまり何て言えばいいのかわからん。

それは秋菜もおなじみたいで、まさに開いた口がふさがらないをしている。

ここからどうやって話繋げよう?


「そっそう言えばお姉さんってどんな人ですか?」

「そうですね、優秀過ぎる人ですよ。頭もいいですし運動も凄い、コミュニケーションも上手です」


たぶん俺その人苦手。

何でもできるとか黙れよ。

でもまぁ、何でも出来る奴には出来るやつなりの何があるんだろうけど。

俺からしたら羨ましい限りだよ。


「実のところ秋菜ちゃんみたいな妹が欲しかったんですけどね」

「こんなやつ妹にしたら苦労が絶えないこと請け負いですからやめといた方が身のためですよ」

「せんぱーい、それってどういう意味ですか?」

「さぁ?どういういみだろうな」

「ちゃんと答えろやこの野郎!」

「てめぇ言葉使いには気を付けた方が身のためだぜ」

「先輩こそ私を敵に回すと言うことの恐ろしさをそろそろ知っておいた方がいいですよ、死にますよ?」

「じゃあ今殺りあうか?」

「むしろかかってこいです」

「お二人とも喧嘩はダメですよ」

「「大丈夫、半殺しに押さえるから」」

「・・・・・・」


コンコンコン


おわっ。

今なんか背筋にいや感じが。


「私出ますね」

「先輩まっ━━━━━━」


ガチャ


「・・・・・・姉ちゃん何しに来たの?」

「あなたのサークルを見に来たの」


《続く》

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