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俺の旅に乱入してきた輩がいる

「せ・・・い」


ん?


「せん・・・い」


繊維?


「あぁ、確かに食物繊維は便秘解消などに役に立つ優れたものだ。

うん」


ペシン!


「痛い!頬がとても痛い!」

「何寝ぼけてんですか?」

「秋菜・・・・・・これは悪夢か?」

「悪夢ってどういう意味ですか?」

「お前サークルは?」

「活動の一貫できました。林檎ちゃんも蜜柑ちゃんも一緒に来ました」


俺明日にでも帰るか?

いや、こいつらのために俺の伝統行事をねじ曲げてやる必要もないか。

てかむしろお前らが帰れ。


「でも偶然ですね」

「お前知ってただろ?」

「実は知ってました」


姉ちゃんに見つからずに俺の部屋に潜入とか普通にスパイ出来るんじゃないですか?

はぁ。

最悪だ。


「南さんこの人は?」

「大学の後輩。残念な事に後輩なんだよなぁ、こいつ」

「えいっ」

「ぎゃぁぁ!」


しみる!

こいつが隠し持っていた水鉄砲の弾丸が目に入ったかと思えば急激に痛みを産み出し始めた。

海水だなこの野郎!

右目を押さえながら、海水を洗い流そうと出てきた涙を拭わずに秋菜大馬鹿野郎を睨み付ける。


「いってぇなこの野郎!」

「あー先輩ったら、こんな可憐な乙女にこの野郎は可笑しいですよ?」

「お前のどこに可憐な乙女要素があるんだ?」

「全部です」

「いい加減にしないと髪むしるぞ」

「服を剥ぐだなんて、先輩のエッぢぇ!」

「次は拳骨じゃすまないから心して言うように」

「すみません」

「先輩達は?」

「そこの民宿で休憩してます」

「泣くくらいならすんなよ」

「はい、ごめんなさい」

「・・・・・・」


罪悪感がすごい。

なんで?

確かに拳骨したのは悪かったとおもってるけど、そもそもお前が調子乗ってるからだし。

くっそ、こいつ本気で泣くといつもより小さくなりやがんだよな。

可愛いんだよ!


「あーごめんごめん」

「せんっ輩は、悪くなひでしゅ」


嗚咽混じりに喋られるとよけい罪悪感が増すだろ。

あとそこの二人と反対側の二人。

そんな目で俺をみないで。


「皆のとこ戻ろうな?」


なんか妹みたい。

でも実際の妹はたぶん、面倒なだけなんだろうな。

実姉を持つものだから何となく予想できることだ。


「・・・・・・うん」


手を取り、涙を拭い続ける彼女を民宿に連れていく。

拳骨なんて何時もやってるだろうに、なんで今回に限って泣くんだよ。


「まだ痛むか?」

「ふふふ」


あっこいつ・・・・・・。


「騙されましたね先輩」

「俺の罪悪感を返せ」

「どうですか私の嘘泣き?完成度すごいでしょ」

「無駄にな、どうやったらあんなに泣けるんだよ」

「まぁ弟どもから身を守るためには仕方なかったんです」

「は?」

「あいつら私が泣けばなにもしなくなりますから」


弟に嘘泣きってどうよ?

相手は小四だし。

でもまぁあの体格差じゃな、泣かれるとなんかいじめてるみたいで気分よくないし。

こいつらの関係なんて深く知る必要も興味もないけどな。


「先輩連れてきましたよ!」


こいつら俺のとなりの部屋に泊まるのか。


「お久し振りですね」

「お久しぶりです」

「はっはっ初めましてです!」


なんだこの生物。

何て言うかむしょうに守ってやりたくなる。

いやまて、初対面の女の子に反んな感想はいろいろとまずいんじゃないか?


「梨木蜜柑です」

「南夏夜、よろしく」


恐る恐る右手を差し出してくる。

俺、恐がられてる?

なんかしたっけ?

ちなみにこの握手も差し出すてによって意味合いが変わってくるらしい。

左手は敵対だっけかな?

まぁネット情報だからあんまり信じてないけど。


「俺、怖い?」


握手を交わしながら聞いてみる。


「・・・・・・すみません」

「えっ、なんで」

「その、秋菜ちゃんから南先輩を怒らせると関節を外して歯を折って臓器をひとつ残らず売り飛ばされ━━━━━━」

「ギブギブギブ先輩ごめんなさい!」

「訳わからん嘘つくな馬鹿!」

「グリグリしないでくだしゃいー」

「南くん、そろそろ許してあげたらどうですか?」

「はぁ、金森先輩がそう言うなら」

「いっ!」


こめかみをいじめるのをやめて俺は部屋を出る。


ガシッ


この馬鹿反撃する気か?

足首なんて掴みやがって。

でもさすがに蹴るのはダメだよな。


「まだ、まだ終わってません!」

「離せあほ」

「嫌です」

「なんで?」

「これを離したら、私が私じゃ無くなる気がするんですよ!」

「・・・・・・・秋菜ちゃん」


何だよこの空気。

何でそこの二人は固唾を飲んでるんですか?

何でこの馬鹿はプライドをかけてるんですか?

そもそも何にプライドかけてるんですか?

頭いたくなってきた。


「林檎ちゃんも蜜柑ちゃんも見ててくださいね」

「秋菜ちゃん、なにするつもりですか?」

「私が私でいるために、この男を倒しっ!」

「拳骨はやる方も痛いんだからな。てか離せ」

「・ま・・だ・・・」

「秋菜もうやめて!」


梨木さんも叫ぶんだ。


「もう、いいから」


消え入りそうな声ってこのタイミングで出すもんじゃないですよ?

何で両手で顔を押さえてうずくまんだよ。

この一室がカオスすぎて辛い。


「あのさ━━━━━━」


そっか、もう六時か。


「綺麗な音ですね、南くん」

「毎日六時に演奏始めるらしいですよ」

「そうなんですか」

「先輩、なんの楽器ですか?」

「お前は取り敢えず寝転がるのをやめて座ったらどうだ?あと足離せ」

「そうだよ、南先輩もきっと迷惑してるよ」

「さっきまで訳のわからん茶番劇に参加してたくせに」

「ごめんなさい」

「取り敢えず俺、晩飯食べに行きたいんだけど」


あのカフェにだけど。


「私達はもう少ししてから行きます。お先にどうぞ」

「ではお言葉に甘えて」


そして今日もまたトランペットの音色を脳裏に焼き付けながら自転車を走らせた。

その後秋菜がとてもうるさかったのは言うまでもないだろう。

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