俺の姉はヤンデレブラコンです
ブラザーコンプレックス。
兄または弟にその兄弟や姉妹がそれをこえた愛情を抱くこと。
シスコンもにたような意味。
『春さんは弟さんがいるんでしたよね?』
ラジオから聞こえてくる女性MCの声。
この番組は人気声優をゲストにして一時間話すという、まぁラジオらしい内容のものだ。
『はい、四つ下の男の子が一人。もぉすっごく可愛いんですよ!』
『そんなはるさにリスナーさんから質問が届いてます。ペンネーム、俺をはるるんの下僕にしてくれ!さんから。もし弟に彼女ができたらどうしますか?』
『そうですねぇ、その女の前で私と彼女のどっちが好きか聞いてみます。それでもし彼女だったら・・・・・・』
グシャ
プラスチックの何かが潰れる音。
『おぉ、怖いですねぇ』
ヤンデレブラコンの姉は迷惑だ。
■□■□■□■
「夏夜くん」
「ん、姉ちゃん。はぁ俺今日三限目からなんだけど」
「知ってるよ」
「まだあと四時間は寝れるんだけど」
「知ってるよ」
いつも言ってるじゃん。
三限目からの日は十二時まで寝かせてって。
「今日久し振りにオフなんだ」
「あー、いつもお仕事お疲れ様です」
人気声優を姉に持ったが、仕事内容が声を吹き込むくらいしかわからん。
詳しいことなんてわからん!
「だから夏夜くんはお姉ちゃんと付き合う必要があります」
「理論が飛躍的にぶっ飛んだな」
「一緒に遊ぼっ?」
「・・・・・・」
俺の姉、南春華はブラコンのヤンデレである。
声優では春と言う名前だが本名は春華だ。
そんな姉のお誘いを断るだなんて恐ろしくてできない。
「それともお姉ちゃんの事嫌いになった?」
「いや、そんな事━━━━━━」
「でも大丈夫。私は夏夜くんの事がこの世で一番好きなんだから嫌われてても好きになってもらうだけだよ」
「嫌いじゃないって」
面倒くせぇ!
「今面倒だとか思ったでしょ?」
「思ってないって」
「嘘吐くんだ、ふーん。夏夜くんはお姉ちゃんにぃ、嘘吐いちゃうんだね。そかそか」
「・・・・・・」
怖い。
この一言に尽きる。
何て言うのかな?
怖い。
これしかないな。
普通にしてたら可愛いのに勿体ない、あんたなら彼氏の十人や二十人作れるだろ?
頼むから俺に関わらないでくれ。
「お姉ちゃんに嘘ついちゃうのはこの口かな?それとも頭かな?それとも全部?」
「ごっごめんて」
「お姉ちゃんに嘘吐いていいのはお姉ちゃんだけだからね」
「肝に命じます」
「じゃあ遊ぼっか」
「その前に顔とか洗わせて」
「じゃあリビングで待ってるから」
姉ちゃんは怒ってても怒ってなくても笑顔だな。
はぁ。取り敢えず顔洗って歯磨くか。
部屋のとなりの洗面所には俺と姉ちゃんようで二種類歯ブラシがおいてある。
親は仕事の都合で海外飛び回るから置いてない。
まぁその二種類あるなか、俺の歯ブラシだけはすぐになくなる。
何故でしょう?
俺の頭と体と心がそれ以上考えるなと言ってる。
言う通りにしよう。
部屋に隠してある使い捨ての歯ブラシを使うから実質俺のものは洗面所にない。
そんな悲しき事を考えながら歯を磨き顔を洗い寝癖を直す。
早くいかないとあの人ぶちギレるからな。
「お待たせ」
「じゃあなにする?」
「取り敢えず朝飯食いたいんだけど」
「さっき私と遊ぶっていっよね?」
「ねっ姉ちゃんの料理が急に食べたくなって」
「それなら仕方ないか、夏夜くんはいつまでたって甘えん坊なんだからもぉ」
俺の毎日はストレスが溜まる出来事が多すぎる。
きっとはげるのも早いんだろうな。
やだなぁ。
ピーンポーン
「俺出てくる」
「うん、お願い」
ガチャ
「どちら様ですか?」
「私、マッスルカンパニーの相田と申します。本日は是非お兄様に紹介させていただきたい商品を持ってこさせてもらいました」
綺麗な人だなぁ。
「あっそういうのいらないんで」
「まぁここはお話だけ・・・しっ失礼しました!」
凄い勢いで、しかも逃げるようにして帰ったな。
まぁいいか。
「姉ちゃん何でここに?」
「誰かなって」
「料理、いいの?」
「あっいけない」
慌てて戻るくらいなら最初からくるなよ。
リビングに入る前から漂ってた美味しそうな臭いはホットケーキだった。
「いただきます」
「食べさせてあげようか?」
「姉ちゃんは朝ごはん食べないの?」
「もう夏夜くんを見てるだけでお腹いっぱい」
さいですか。
「ちゃんと食べろよ」
「じゃあ、あーんして」
「・・・・・・」
「うん、夏夜くんが食べさせてくれるから美味しい」
自分で自分の料理誉めてるの気づいてますよね?
「じゃあ今度は私が、はいあーん」
姉ちゃん楽しそうだな。
俺全然楽しくない。
むしろ苦痛。
しかしそんな事を悟られては何をされるかわかったもんじゃない。
いつも通りに振る舞え。
「やっぱり姉ちゃんの料理は美味いな」
「えへへ、愛がたっぷり入ってるもん」
引くな引くな引くな引くな引くな。
「そっそっか。どっどおりで美味いはずだよ」
「夏夜くんにこんな美味しいホットケーキ焼いてあげれるのも私だけだよ?だから私から離れていかないでね」
俺は一生童貞の独り身ですかわかりました。
意地でも彼女つくってやる。
『その女の前で私と彼女のどっちが好きか聞いてみます。それでもし彼女だったら・・・・・・』
「どうしたの?」
「姉ちゃん、ちょっと頼み事なんだけどいい?」
「夏夜くんのお願いなら何でも聞いてあげる!何がほしいの?私の初めて?」
「ラジオとか雑誌の取材で弟のネタ振られてもいつも通り対応して」
「してるよ」
「えっ?」
「悶え死にしそうなくらい夏夜くんが好きで好きで好きで大好き、だからいつも通りだよ」
「聞いてもいい?」
「うん」
何をかいってないのに許可くれるんだ。
「この間のラジオでもし俺に彼女ができたらって質問あっただろ。あれの回答途中で終わってるじゃん、最後は何て言おうとした?」
「もし夏夜くんが私より他の女の方が好きなら奪い返す、どんな手段を使ってでもね」
「・・・・・・」
「さっ、続き食べよ」
ヤンデレブラコン姉は大変迷惑です。