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百年咲いた桜

作者: トキ

私は長生きである。

周りの仲間が亡くなっていく中

長い間私はここで生きている。


私には私だけの名前がない。

人は桜と言ったり

ソメイヨシノと言ったり

している。

つまり私を指す大きな括り

があっても人の名前みたいに

私個人を指すことはできない。

だが私はこれでいいと思っている。

名前を忘れられるより大きな括りでも

私を読んでほしいから。


私は一年中ほとんど暇である。

私の近くに来るのはランニングをしている人

だったり私を書きに来た人だったりする。

だが、私はすることがない。

ランニングをしている人は通り過ぎるし

絵描きの人は私が何もしなくても

勝手に書いていく。


私は春が好きだ。

私が花を咲かすと人が来てくれるから。

たまに五月蝿いと感じるほどの

花見をしているが

それでも私はそんな楽しそうにしている

人を見るのが好きだ。


私は夏が好きでもあるし嫌いでもある。

参ってしまいそうに暑いことがあって夏が嫌いだけれども

私が作った木陰で涼むために人が来てくれるから

太陽の力かどうか知らないが

気力がわいてくるから私は夏が好きだ。


私は秋が嫌いだ。

周りの木はきれいな黄色や赤になる。

しかし私はできない。

良くて黒っぽい赤だ。


私は冬は基本的に嫌いだ。

寒くて凍えそうになる。

仲間の中には藁で作った

腹巻みたいなものを

毎年つけてくれるそうだ。

でも私は冬の次は春だと知っている。

だから私は早く春が来ないかと

冬の間ずっとワクワクしている。


私はもっと長く生きたい。

『やっと初孫が産まれたよ』

そうある人が独り言のように

ぶつぶつとつぶやいていた。

私はその人を昔から知っている。

この人が子供であったころ

親に連れられて花見に来たのが

一番初めであっただろう。

それから毎年私の近くで花見を

してくれる。

結婚してからも

子供が生まれてからも

毎年来て花見をしていく。

だからこの人の孫の成長を

見届けたい。


私は頑張って生きよう。

だから頑張って生きてくれ。

私に君の成長を見せてくれ。

私と同じ

『桜』

の名前を持つ子供よ。



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