3.私たち、何のために戦うんだろう
私のスキル。みんなのスキル。スキルはどこから来るんだろう。その人の中から? それとも何か外にあるものから? あ、それって、魔力波も同じことか。つまり、魔法少女の力はどこから来るんだろう。大体、何が(誰が?)私たちを魔法少女に選んだんだろう。そして、何のために。
という疑問は五分前の私に任せて、今の私は紫色の触手を撃つ。
「ちど、み!」
ますみ先輩がジャンプしながら叫ぶ。私は体をかがめてから、左に跳んだ。ますみ先輩の下あたりを通過して、地面に突っ込む。盗塁した野球選手の気分だ。
「確保おっ!」
はたこの声が聞こえる。私は跳ね起きて、手をかざす。
「ゴー!」
ますみ先輩の合図で魔力波を発射すれば、紫色の魔物は粉微塵だ。南公園が姿を現す。
「ち、ちどりさん、大丈夫ですか!?」
ねむちゃんが走ってくる。私は顔や腕に触れてみた。
「大丈夫みたい。あ、ひざがちょっと擦れてる」
「はい」
ねむちゃんが触れて治してくれる。ますみ先輩とはたこが何か言いたそうにしてるので、先に言った。
「無理してません」
実際、あそこしか回避できるところがなかったわけだし。
「まあ、ちどならあれくらい出来るか」
ますみ先輩がうなずく。
「て、ことで、本日も完勝、と。ああ」
はたこが一つ、あくびをした。ますみ先輩がきっ、とにらむ。
「はたこ。ちょっと緩みすぎじゃない?」
はたこは慌てて口を閉じた。
「す、すみません。このところ、スムーズなので」
「確かに、上手くいってるけど。油断は命取りでしょ?」
「はい。すみません」
はたこはますみ先輩に頭を下げた。これは、はたこが悪い。でも、ちょっと分かる。細かいところは違うけど、最近ほとんど同じような戦いで、同じような勝ち方をしてるから、つい余裕が出てしまう。そう、考える余裕も。
「……私たち、何のために戦ってるんでしょうね」
私がつぶやくと、ますみ先輩がこっちをぎろっと見た。
「ちょっと、ちどまでそんなことを」
「あ、ち、違うんです。やりたくないとかじゃなくて、本当、素朴な疑問なんです」
ちゃんと言い訳しないと、絞られる。私はさっき考えていたことを言った。
「で、何のために、って」
私以外の三人は、そろって首を傾げた。
「ちど、あんた、難しいこと考えてんね」
代表してはたこが言う。
「そ、そうかな」
私は何だか落ち着かなくなって、何となくねむちゃんを見た。ねむちゃんは首を元に戻して言う。
「それって、引っくり返すと、なんで魔物が来るのかってことになりますね」
ますみ先輩もゆっくり首を戻す。
「だとすると、魔物を送ってくるボスみたいなのがいて、私たちの側にも何かそれと戦っているのがいて。みたいな形なのか……」
「それだと、ずいぶん分かりやすいな」
はたこが笑う。私もうなずいた。
「でも、その何か、が分からないとちょっと気持ち悪くない?」
「うーん」
はたこはまた首を傾げかけて、はっと戻した。
「そうだ。陰謀っぽいのもありうるぞ」
「陰謀?」
何か怪しい感じだ。
「ああ。誰かが、わざとあたしたちと魔物を戦わせて……」
「……エネルギーを回収にきた宇宙生物とかが?」
ますみ先輩が珍しく、にやっと笑って言う。
「そんなアニメがあったね」
はたこはちょっとバツが悪そうに頭を掻いた。
「ない話じゃないでしょ」
ますみ先輩は首を横に振った。
「私たちの場合はどうかな。だって、それだと、つくばさんが怪しいってことにならない?」
「そんな、つくばさんは怪しくないです!」
ねむちゃんが力説する。ますみ先輩は穏やかに笑った。
「そ。陰謀やってるなら、あんな自分から戦いに突っ込んでいかないでしょ」
そう。つくばさんは、魔物を察知すると、近くのチームに連絡して倒させる。だけど、近くにいるのが自分なら一人でも行くし、戦力的に厳しそうなら、遠くても助けに行く。一番上なのに体を張ってるから、みんなに尊敬されてる。悪いことたくらんでるなら、そんな危ないことしないだろう。
「何にしても」
ますみ先輩はぱん、と手を打った。
「私たちにできることは、魔物が出現したら倒す。それだけ。そのうち分かってくるでしょう」
『はーい』
とは答えたものの、ちょっと腑に落ちなかった私は、帰ってからネットで色んなアニメとかマンガとか小説とかのストーリーを見てみた。でも、何か全部違う気がした。まあ、お話はお話、か。




