表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第四話 ソ連軍ノ侵攻ヲ阻止セヨ 中編

日付が変わってまもなく、

腹に響く音が僅かばかり聞こえ、

窓の外を見ようといざ体を起こした、


刹那、


轟音がはっきりと耳に飛び込んできた、

振動もベッドから伝わる、

私はハッとなって外に飛び出した、


「そんな馬鹿な」


真っ先に頭にこの言葉が浮かんだ、

竹田浜が、燃えている、

それも何度も閃光をあげて膨らむように燃えている、


「間違いない砲弾だ!」


まさか砲兵の奴等が誤射したとは到底思えない、

数が違うからだ、

あんなにぶち込んではあっという間に弾切れになる、

おそらくこの先の岬のソ連の砲台だろう、


基地は今頃大騒ぎだろうな、

深呼吸して気持ちを整える、


「整備兵!戦車から下ろした戦車砲全てをつけ直せ、戦車も準備万端に整備し直せ、本部からの命令に供えろ!全員起床!!!」


連隊本部は案の定大騒ぎになった、

竹田浜方面の報告では何発か撃ち返したところ、

それっきりうんともすんとも言わなくなったという、

おそらくまぐれ当たりで弾薬集積所でも直撃したのだろう、

あちらさんにはお気の毒だが、

こちらは睡眠と平和を邪魔されたのでな、

ただでは済まさんぞ、


「まさかこんな機会が巡ってこようとは………」


私は自分の感情の高ぶりを感じた、

おそらく顔色は生まれてこの上ない良さであろう、


それを見た兵士が私に言った、


「連隊長殿、おめでとうございます、やりましょう!」

「あぁ、竹田浜方面からの報告はまだか、霧がかかって全く状況がつかめない」

「ダメです、電波の状態は最悪です、先程から雑音しか来ておりません」

「うーむ、ダメかぁ………」


と、諦めていたその時だった、

おそらく竹田浜方面の奴らも必死だったのだろう、

敵味方関係なく電波を発し始めた、

出力は最大と勝手に予想した、


『敵輸送船団らしき物を発見』

『敵上陸用舟艇を発見』


「お、敵さんはかなりやる気だ、お前達!気合を入れろ!」

「「了解!」」

「連隊長殿!!!」

「どうした!」

「こ、これを………」

「………なんだと、本当なのか!」


私はその電文を読んだ時、

かなりの高揚感を感じた、


『コチラ海軍ノ伊吹、ソチラノ状況ハ極メテ不味イト判断シコレヨリ支援ニ入ル』


「奴等樺太に居たんじゃなかったか?」

「さぁ?航空機じゃないですか?」

「おいおい、航空機っていってもこの島だと九七艦攻とか少数だけだぞ」

「やっぱり海軍さんの考えることはわからんな」

「報告します、戦車の整備は完了ました!いつでも行けます!」

「よぉし!いくぞ!戦車第十一連隊!士魂部隊!」


これが、占守島の戦いの始まりだった、





「急げ!回せ回せ!」

「皇国の土地を踏ませるな!」

「言っておくがあちらは霧が深い、皆気をつけるように、」

「おい!銃弾持って来い!」

「六番が通るぞ!邪魔だ!」(六番=60キロ爆弾)

「久々の獲物だ!全員心してかかるように!」


飛行甲板は人でごった返しになっていた、

なれてる筈なのに、何か違うものを感じる、

あぁ、そうなんだ、これが彼らの国への忠実心なんだ、


「みんな無事に帰ってきてね………」


一人ぼっちになるのがどうしても嫌いだった、

妹の鞍馬を亡くし、さらに今まで育ててきたこの荒鷹達をも亡くせと言うなら、

神様、あなたはあまりにも残酷です、


「みんな………」


浮かぶはあの日々である、

本当に楽しかったあの日々にまた戻りたかった、


しかし、

私はただの兵器だ、

そんな我が儘は受け入れてもらえる程世の中は甘くない、


「第一次攻撃隊、発艦!!!」


白い手旗がふりあげられ、

マストにZ旗が揚げられる、


「後にはもう引けないのね、」


九六艦攻や、

九六艦爆が鉛色のどんよりとした空の彼方へ吸い込まれていく、


ちゃんと綺麗な編隊が組めていた、

流石にみんななれたようだ、

後は全速力で占守島へ向かい、

出来るだけ距離を縮めておくのだ、

攻撃隊の負担も減らせて一石二鳥である、






電波状況は最悪だった、

しかし、伊吹とか言う海軍の軍艦から一方的な電文が入電する、


よするに、

島を爆撃するからその時は敵と味方を離すようにと言う事だ、

同士討ちも流石に海軍さんは避けたいらしい、


しかし、

この霧の中だ、

乱戦で同士討ちも起こりかねない、


九七式中戦車(新砲塔)19輌

九七式中戦車(ハチマキ)20輌

九五式軽戦車25輌


幸い敵に今のところ戦車は居らず、

竹田浜の歩兵隊が対処に当たっている、


『敵上陸』


ついにやったか

と頭の中を雷がかけめぐる、


皇国の土を踏んでただで済むと思うてか、

敵さんにやる土地はこれっぽっちも存在しねぇよ、


「連隊長殿!敵さんは露助です!」

「よしゃ、満州で暴れ多分をここで返さしてもらうぞ!」

「「了解!」」


海軍さんには申し訳ないが、

乱戦になりそうだ、

四嶺山山麓の高射砲台なども観測員の信号弾などで援護射撃をしている、

間違いない、


「総力戦だ」


途端に、

目眩がした、

まだ、前線に立ってないのに司令官が目眩など、

と考えていたが、


この目眩は、

私の人生で一番不思議な目眩になろうとは、

この時は思ってもいなかった、







「急げ!皇国の土を踏ませてはならん!」

「先輩無茶です!私達は駆逐艦じゃありません!」

「ええぃ!じゃあどうしろというのだ!このまま占守島を見捨てるのか!」

「だからこうして陣形は単縦陣でフルスロットルじゃないですか!先輩!」

「分かっておる!分かっておるが、どうしてもそうしてないと自分が保てないのだ!」

「きっと大丈夫ですよ!こちらには海軍陸戦隊の増援部隊と海軍陸戦隊の機甲部隊がいますから!」

「機甲部隊って言ってもお前に載せられるのはほんのわずかだろ!そんな機甲部隊や増援部隊に何が出来るんだ!」


次の瞬間、

乾いた音が露天艦橋に響きわたった、


「私に載せられた部隊を馬鹿にしないでください!樺太の時だって自分の命より民間人を率先して誘導してたんですから!それと、先輩いい加減落ち着いて下さい!」


涙目に語りかけてくる彼女の肩は震えていた、

この娘たちからは北方において勤務の長い私を先輩としたってくれる、

だから、悔しかったのかもしれない、


皇国の土を汚されるのを、


「………あぁ、済まなかった、」


まもなく、目の前に霧がかかってきた、

ここらあたりの海域では珍しくない、


しかし、どうも変な感じがした、

いつもの霧ではないと頭の中で警報が鳴り響く


「何かおかしい、」


そうやって、

確証がつかめないまま、

私は目眩を自覚した、

ここでくたばってたまるか、


そう思いつつも体は思いどうりに動かなかった、

鉛色の空にまるで吸い込まれていくように、

私は意識を手放した、


「艦長!全艦のエンジンが停止しました!本艦もです!」

「何をやっているんだ!ただでさえ急いでるのに!」

「しかし、全艦一斉にエンジンが停止するとは、何かよからぬ事でも起きるんでしょうか、」

「………艦内の神社は何も起こってないよな?」

「はい、船室にまだ居ます、」

「………なんの前兆だ、長年艦長をやってきたが、こんな事は初めてだ」


艦橋の中は沈黙に沈んだ、


「まもなく、日の出です」


乗員が時計を見て報告する、

壁掛け時計が振り子をふり、

その分針を一目盛進めた、


『後方より光源!近づいてきます!』


くそったれ!

このクソ忙しい時に!

愚痴りながら露天艦橋へ出た、


「あれです!」


見張りから双眼鏡を譲られる、

私はすかさずそれをのぞき込んだ、

確かに光源だ、それも飛んでいる、


「敵機か、味方機か、」

「わかりません、」

「………対空戦闘用意!」

「たーいくーせんとーよーい!」


命令が復唱され高射砲が光源へ向けられる、

全員が戸惑いながら弾薬を運ぶ、

それもそうだ、全く招待がつかめない物に対して攻撃を行うのだから、

その心は尋常じゃないくらい緊張しているはずである、


「来るなら来い、皇国の土は踏ませんぞ」


全員が、

強ばった面持ちで、

海面付近の光源を見つめた、







続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ