3 ◇本物のサイコパス
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「君なのか、だよね。
今から言うことはすごく深くて不快にさせるかもしれないけど、たぶん当たっていると思うんだ。
……で、不快にさせる代わりに僕は自分の秘密をさらけ出した。
君はいつも落ち着いていて穏やかな性格に見えるけど……」
「けど?」
「自分を攻撃してきた者に対して、完膚なきまでに報復するでしょ?」
「えっ? 意味がわからないんだけど」
「いや、わかってるはずだよ。
意図的なこともあるだろうし、時と場合によっては心の中で願うだけで
現実化させられるというか。
とにかくわかりやすいイメージでいうと、右回りの扇風機の羽を強い意志
でもって左回りにできる力を秘めていると言うか」
「それって、よけい難しい例えになってるわよ」
「いいよ、君が認めても認めなくても。
俺には君という人がそう見えてるってことを知っておいてもらえれば。
俺ね、自分の中にサイコパスな残忍性があることに気付いてからは恋愛を
しないと決めてるんだ。
そうだな、俺が恋愛するとしたら根本的に悪い女なら付き合えるかもしれないってことだけ言っとく」
「それって、報復しても胸を痛めずに済むからっていうこと?」
私がそう訊くと、渋谷くんはニヤリとニヒルに笑った。
「ちなみに、私は悪い女のカテゴリに入ってるの?」
「いーや。残念ながらどちらかというと毒のない、いい娘さんだよ。
俺は、プライドを持っている女子は嫌いじゃないよ」
「褒められているのか、そうじゃないのか、わかんないけど『いい娘さん』って
ところだけは意訳せず真っすぐに受け取れそうだから、ひとまずありがとう」
「卒業後、もう会うこともないだろうけど、万が一何か連絡したくなったら
連絡寄越して。自分で作った名刺だけど渡しとくからさ」
「え~と、私は渡せるものがないけど?」
「一度だけパソコンからでもいいし携帯にでもいいから空メールくれると
いいかも」
「わかった」
「話せてよかったよ。それじゃ、また。
……って、またはないと思うけど。じゃっ」
「うん、じゃね」
◇ ◇ ◇ ◇
この時、モテ男の渋谷くんがサイコパスだということを知ったわけだけど、別段お互いに好意を持っているわけでもなく、二度と会うことはないだろうなぁと思っていた。
結局ナンパでもなく、何で自分に話掛けてきたのかよくわからないまま彼のことは忘れてしまっていた。
もちろん、空メールも送らなかった。
だけど名刺は捨てずに持っていた。
この時、私はまさかこの名刺が思いがけず役立つ日がこようとは、夢にも思っていなかった。




