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おもちゃ箱 ~あき伽耶 童話と児童文学作品集~

ママにおてがみとどくかな

作者: あき伽耶
掲載日:2026/03/20

ひだまり童話館参加作品

第41回企画「またねの話」

挿絵(By みてみん)

「ママ、いってらっしゃい!」

 子だぬきポンタはパパと家の前の道にならんで、力いっぱい手をふりました。

 大きなおなかのポンタのママは、赤ちゃんをうむために、タクシーで町の大きな病院へ行くところです。お医者さんに、とてもおなかが大きいから早めに入いんしましょう、と言われたのです。

「いってきます。ポンちゃん、ばけばけしゅぎょう、がんばってね」

「うん、ぼく、がんばるね!」

「あらポンちゃん、はりきってるのねえ」

 ポンタはむねをそらせて答えました。

「だってもうじきお兄ちゃんになるんだもん!」

 ママをのせたタクシーは、あっというまに角をまがっていってしまいました。

「さあポンタ、ばけばけしゅぎょう、やるぞ!」

 パパとポンタは家のにわへ行きました。

 ばけばけしゅぎょうというのは、四才になったらはじめる、へんしんのれんしゅうです。ポンタはまだはじめたばかり。だからまだへたっぴです。

 今日も、いすにばけたら、いすからしっぽがとび出ちゃったり。ボールにばけたら、ヒゲのはえたボールになっちゃったり。

「パパやママみたいに、じょうずにばけたいなあ」

 あくる日も、ポンタはしゅぎょうしようとしました。けれどもなんだか元気が出ません。

 いつもならポンタがばけるたび、ママがえがおで「ポンちゃん、がんばって!」とおうえんしくれます。

 でもそのママが、いないのです。

 ポンタはなんだかなきそうになりました。

「ママ、ママにあいたいよお……」

 パパはポンタのせなかをやさしくなでて、いいことを教えてくれました。

「じゃあママに手紙を書こう。きっとママもへんじをくれるよ」

 パパに手つだってもらって、ポンタは手紙を書きました。

『ママへ あかちゃんうまれた? ぼくしゅぎょうしてます あいたいな ポンタより』

 手紙は、パパがゆうびんやさんに出してくれました。

 つぎの日。ポンタは「おへんじ、まだかなあ」と何回も家のポストをのぞきました。

 そのつぎの日も、そのまたつぎの日もまちました。

 でもへんじはきません。

 ポンタはしんぱいになってパパにききました。

「ママのおへんじ、いつくるの?」。

「うーん、あと二回ぐらいねたら来るかなあ」

 そう答えてパパは、せんたくものをほしににわへ行きました。

 ポンタはびっくりしました。こんなにずうっとへんじをまっているのに、もっとまたなくてはならないのです。

「ぼく、そんなのいやだよお」

 かなしくなったポンタはママの顔やにおいを思い出しました。ママがポンタの手紙を読んでいるところを思いうかべました。

 すると、今すぐママに会いたくなってしまいました。

「あっ!」とポンタはいいことを思いつきました。

「おてがみにばけたら、ママに会える!」

 ポンタは手紙にばけてみました。

 はじめはうまくいきませんでした。でもママに会いたくて、何回も何回もやりなおしました。

 そしてついに、本ものそっくりの手紙にばけたのです!

 せんたくをほしおわったパパが、つくえの上の手紙に気がつきました。

「おや、ポンタがママに手紙を書いたんだな。よし、すぐにゆうびんやに出してやろう」

 パパが手紙をつかみました。ポンタの体はムズムズとかゆくなってわらいたくなりました。

 パパが手紙をかばんにいれて、よいしょとせおいました。ポンタはカバンの中でにもつにこすれて、コショコショとくすぐられました。あまりにもくすぐったくて、ポンタはがまんできずに「わっはっはっ」とわらいだしました。

 そのとたん、元のすがたにもどってしまいました。

「うわ! 手紙はポンタだったのか!」

 びっくりするパパのとなりで、ポンタは大声でなきだしました。

「うわーん、ママ、ママにあいたかったよお……!」

 そのとき電話がなりました。病院からでした。

 パパがうれしそうに言いました。

「ポンタ、ママに会えるぞ。赤ちゃんが生まれたって。すぐ病院へ行こう!」

 ポンタとパパが病院につくと、ママはベッドでよこになっていました。

「ポンちゃん、お手紙ありがとう。ママ、すごくうれしかったわ。おかげで元気に赤ちゃんをうめたのよ」

 ママのえがおを見ていたら、ポンタはうれしくなりました。

 それからママはとなりの小さなベッドでねている、かわいい赤ちゃんたぬきを見せてくれました。

 それがなんと、三びきも! 

 赤ちゃんは三つ子だったのです。

「ポンちゃん、おへんじ書くからね」

「うん、ぼく、まってるね。おうちで、ママがかえってくるのもまってるね。ママ、またね!」

 ポンタはママとバイバイしたけれど、もうかなしくなりませんでした。

 帰り道、ポンタはパパに言いました。

「ママと赤ちゃんがおうちにかえってきたらね、ぼく、じょうずにへんしんしてみせるんだ」

 ポンタはわくわくしていました。

「パパ、はやくかえってしゅぎょうしよう!」

 ポンタはパパの手をひっぱりながら、ずんずんとあるいて、家へ帰っていきました。



                                 おしまい


お読みくださり、どうもありがとうございました。


ひだまり童話館は、童話を書く機会をくださったとても大切な場です。

この場を作ってくださった霜月透子さま、鈴木りんさまに心より御礼申し上げます。

しばらく休館とのことですが、いつの日かの開館を楽しみお待ちしております。



下の子猫のバナーから、作者の他作品へのリンクがあります。

童話をはじめ多ジャンル書いていますので、

もしよかったらのぞいてみてくださいね(^^)

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― 新着の感想 ―
頑張ってお兄ちゃんになろうとしているポンタが可愛いですっ。 でもやっぱりママがいないと寂しいですよね。 小さい子は”待つ”時間が長いですからね。ながーくながーく感じたことでしょう。 それでお手紙にばけ…
ポンタのママにあいたい気持ちに胸がきゅっとしたり、手紙に化けたところでは喜んだり、戻っちゃった所では「あら~」と笑ってしまったり、すごく感情が揺さぶられました。 三つ子の赤ちゃん、そろうとかわいいだろ…
ポンタの一生懸命さが可愛くて、手紙だったら……と手紙に化けるところ、そのまま連れて行かれるのかな、ポストとか、郵便屋さんの冒険?と思っていたら、元に戻って、そっか修行はじめてすぐだったもんね、と優しい…
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