誕生祭からマールへ
話は少し戻って生誕祭の日の事
俺は早くマールの町に行きたい気持ちを押さえて、ニルスに支度を手伝ってもらい、父上の生誕祭に出席した。
いないとは分かっていても、ついレイがいないか探してしまう。
それにしても今日も令嬢からの視線が痛いな。反対にニルスは異様に生き生きとしてる。
するとニルスがこちらに目配せをしている。ニルスの目線の先には3人の女性がいた。年齢からすると母親と娘が2人だろうか。髪の毛の色は焦茶色で、顔もレイとは似ていない。
困惑しているのが分かったのか、ニルスが俺に近づいて来た。
「殿下、あの3人のアクセサリーを見てください」
そう言われてみると、3人ともパールのアクセサリーをつけている。その色はあのレイが落としていったパールと似ていた。
俺は3人に話しかけようとすると、ニルスがスッと止めた。
「殿下が話すと目立ちすぎます。私が令嬢の1人をダンスに誘いますので」
それもそうだなと思ったら、3人とも何処かへ行く様だ。ニルスが慌てて追いかけている。
大丈夫だろうかと思って振り向くと、真後ろに公爵家のエリザベスがいた。
レイと同じ髪の毛の色なので一瞬どきっとしてしまった。
エリザベスは小さい頃から知っているが、性格が最悪なんだよな。なんでも人は自分の言う事を聞くと思っている。
「エドワード殿下、私とダンスを踊っていただけませんか?」
俺は即座に断ろうとしたが、よく見るとエリザベスのアクセサリーもパールだ。どこで買ったのだろう?
よく見ようとしていたら、曲が始まり手を取られてしまった。
「エリザベス、そのパールは何処で手に入れたんだ?」
「オズワルド宝石店です。殿下もパールのアクセサリーを買われたと伺ったので」
結構同じ場所か、なら新しい情報はないな。ニルスは先程の女性達と話せただろうか?
曲が終わってニルスを探しに行こうとしたら、後ろで倒れる音がした。振り向くとエリザベスが倒れている。
イヤリングが落ちてしまっているので、拾い上げた。
パールを見るとレイを思い出す。早く会いたい。
まだ床に座り込んでいるエリザベスに。イヤリングを渡し、ダンス一曲で倒れるなら、貴重なパールを傷つけてしまうといけないのでもう今日は踊らない方がいいと言ったら、顔を真っ赤にして怒鳴り散らされた。
なんなんだ?
エリザベスから離れるとニルスが戻って来た。
「申し訳ございません。あの3人は収穫祭に参加する用事があるので急いでいると行ってしまいました」
「どの収穫祭だ?」
「アシュトン伯爵家の領地にあるマールの収穫祭だそうで、しかしエリザベス様は派手に転ばれましたね。ご令嬢達は笑いすぎて、その後話が出来なくなってしまいました。そうしたら母親が2人を連れていってしまい、申し訳ございません」
「俺達も最後の挨拶が終わったら、明日の朝早くに出発できる様に準備するぞ」
「では、私は先に戻り荷物のチェックをして来ます」と言ってニルスは去っていった。
あの3人はレイの家族なんだろうか?でも全く似ていない。親しい友人家族なのかもしれない。
アシュトン伯爵家の事も調べてみよう。
そろそろ終わりの時間だ、王太子としての仕事をするか。
そして次の日の朝早く俺はニルスと馬車に乗り、マールに向けて出発した。オズワルド宝石店のアレクとマシューも違う馬車だが、俺達と一緒に向かっている。
出発前にマシューにはこの前渡したお菓子で嫁の機嫌が治ったと大変感謝された。その代わりにとマシューがあの布巾のお店を調べてくれていた。
あの布巾が使われているのはマールで評判のアストリアというシーフードレストランだそうだ。
「シーフードチャウダーが有名なんだ。値段が高いから行った事なかったが、王太子殿下の奢りだよな?」
マシューは敬語を使う事は完全に諦めたらしい。後ろでアレクが泣きそうな顔をしている。
マシューは途中の宿泊先でもその町の名物料理のお店に連れていってくれた。
こういった経験はあまりないので、すごく楽しかったが、レイの事が気になってあまり味は覚えていない。そして、3日目の夕方にやっとマールの町に着いた。
明日は収穫祭なので町は賑わっていた。
俺は馬車の中からついレイを探してしまう。小さい町なので宿は数軒、貴族が泊まるとなると一軒しかなかったが、ここにはレイは泊まっていないそうだ。
偽名を使っているかもしれないと思ったが、貴族女性の宿泊者はいないそうだ。
少しがっかりしてしまったが、マシューに連れられてレストランに行くと、あの布巾がたくさんあって気分が盛り上がった。
ここで弁当を頼むとこの布巾に包んでくれるそうだ。
「おや?マシューか?来てくれたんだな」と言う声がして振り向くとニコニコと笑っている初老の男性がいた。
「ロブさん、良かった。飯が終わったら会いに行こうと思っていたんだ。ロブさんはここの町長です。こっちが俺のボスのオズワルド宝石店の店長アレクさん、でこっちが。。王。。。」その瞬間ニルスがマシューの口を塞いだ。
ロブさんは目を見開いてる。
ニルスはにこやかな笑顔で。
「王宮の宝飾管理をしていますニルスと申します。こちらは私の上司のエリック様です。あまり役職を知られたく無いので、ご内密にして頂けると助かります」
町長はすごく興奮した顔でコクコク頷いた。
「そんな方がこの町に来ていただけるとは光栄です。明日は領主様の家族がこちらでお食事をされるので、是非紹介させて頂きたいですが、如何でしょうか?」
「領主というとアシュトン伯爵でしょうか?」
「領主様は2年前に亡くなられたので、奥様が今は領主代行をして、伯爵の一人娘がそのお手伝いをされています。素晴らしい才能の持ち主で、明日の収穫祭で出す料理も色々考えられたのですよ。先程までいらしたのですが、先程帰られてしまいました」
1人娘か。。ではあの母娘はアシュトン伯爵家のものではなかったのか?それともレイが。。
食事の後、宿に帰り俺とニルスはもらって来た布巾とレイが落とした布巾を比べて見た。
「同じものだな、レイは絶対にここにいる。明日は収穫祭の式典の後にレストランに行く事になっている。その前に町を見て回るぞ」
「私も生誕祭で会った家族を探したいと思います。きっと何かしらの繋がりがあると思うので」
なんだかニルスも張り切っているな。あの令嬢達のどちらかを気に入ったのか?
やっと半分です。もう少しお付き合いください。




