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舞踏会に履いていく靴は

さて、どれにしようかな。


私はクローゼットに入っている亡くなったお母様のドレス。質がよくデザインも多岐に渡っている。


私の目に合わせるなら、緑よね。


でもふと、昨日孤児院で会ったエディの目の色を思い出させるドレスが目の前にある。


いやいや、、一回会っただけの人だし、貴族っぽかったけど違うかもしれない。


何より私は家のために政略結婚がしたいの、かっこいいからとかそう言うので結婚はしない。


でも。。。ドレスを掴んでクローゼットから出ると。


「あら、レイチェル様。青のドレスですか、珍しいですね。あ、そうですね。あの方の目の色ですものね」とアンが言う。


「え?あ?あの方って、アンがどうして知っているの?」


「嫌ですねえ、お嬢様。私だってこの国の王太子殿下の目の色ぐらい知っていますよ」


「え!殿下の目の色ってこれなの?嫌だわ、それじゃ王太子殿下にアピールしているみたいじゃないの」


「そのおつもりじゃなかったんですか?」


「違うわよ。このドレスのデザインが今の流行に似ているから、リメイクしやすいかなと思っただけで。。。」


「そうですか、まあお嬢様がこの色を着たら、奥様がお嬢様を王太子殿下との結婚を応援している様に見られますから、良いかも知れませんね」


そ。。そうね。本当の悪女だったら、自分の娘達を差し置いて、義理の娘を王太子妃にするのは阻止しようとするだろう。


まあ、今回はお母様の為に、私がドレスアップした姿を見せるのが目的だから。


チラッとエディの顔が浮かんだが、違う、これは家族の為。


年齢的には可能性があるが、今回の舞踏会に招待されているかわからないし。何より仮面舞踏会だ、向こうも私の事がわからないだろう。


「アン、もうあまり時間もないし。ドレスのリメイクを手伝って貰っても良い?」


「勿論です、ですが先に靴やアクセサリーを用意した方がよろしいかと」


「あ、もうそれは大丈夫。靴はこれにするわ」とシルバーの靴を見せた。


「お嬢様、こちらは大分履き込まれているようですが、大丈夫ですか?新しい物を用意したほうが宜しいのでは?」とアンが心配そうに言う。


「これ履きやすくて、長時間履いていられるのよね、まあ今回は大丈夫でしょ」と私が言うが、アンはあまり納得していない。


私はアンに手伝ってもらって、ドレスの丈を詰めたり、レースを足したり。お母様にも意見を聞いてなんとかドレスが仕上がったのは舞踏会当日だった。


朝からみんなでお化粧をして、ドレスを着て、アクセサリーを決めて、そんな私達を見て、お母様は嬉しそうに笑っていた。


「奥様、馬車の用意が出来ました」と執事のウィルが私達に告げる。


「では参りましょう」とみんなで立ち上がった時。ボキッと音がして、私が床に倒れた瞬間、下の方からビリっと言う音がした。


私が履いていた靴のヒールが折れて、転んだ時にドレスのスカートも引っ掛けて破れてしまった。


「レイチェル!靴とドレスが!」


「レイチェル!怪我はしてない??」


私よりお姉様達の方が大騒ぎだ。お母様の顔は真っ青で震えている。


「大丈夫です。私はドレスを直してから行きますので、先に行っていてください。これならすぐ直せますから」と私が言っても、みんなは動かない。


「そんな、待つから一緒に行きましょう」

とお母様がいうが、私は顔を横に振った。


「もうすでに遅い時間ですし、1人なら馬で行く方が早いですから」


「レイチェル。。。ドレスで馬に乗るつもりなの?」


実は元々、顔を見せたら先に帰るつもりでスカートの下に乗馬用のズボンを履いている。どうせ長いスカートで見えないし。アンには色気がゼロと呆れられたが。


「途中で追いついたら、馬車に乗りますから。心配しないで早く出発してください」


心配そうな3人を馬車に詰め込み。私とアンは破れた所をレースで隠し、なんとかドレスを隠す。


靴は。。。。


「お嬢様、こちらを」とアンが出してきたのは。


ガラスの靴。。じゃなくて、パール色の靴だった。


「あ、ガラスじゃないんだ」


「ガラスですか?そんな物で作った靴を履いたら、割れませんか?」


「。。。それもそうよね。でもこれはどうしたの?」


「パール貝の貝殻を砕いて、箱に貼り付けてデコレーションする工芸品をもとに靴を作ることにしましたよね。今朝試作品が届いたのですが、準備でお忙しかったのでお見せする事が出来ませんでした」


そうだ、前世の知識で螺鈿細工を施したアクセサリーボックスを売り始めたので、靴やバックにも使えないかと試作品を頼んでいたんだった。


靴は光が当たると青白くひかり、ガラスのように見える。中央には少し変形したパールを花のように配置してつけた。パールは自然のもの、変形してしまうものもあるけど、こうすれば十分美しい。


私のサイズに合わせて作ったので、もちろんピッタリだ。


「お嬢様、行きましょう。馬は用意してあります」アンは髪の毛に布巾を被せてくれる。そして外套をドレスの上に着て。靴は袋に入れて持たせてくれた。


「風で髪の毛が崩れると困りますからね。靴は向こうで履き替えてください」


「わかったわ、アンありがとう。アンは私の幸運の妖精みたいね」


「亡くなられた奥様にお嬢様の事を頼まれてましたからね。さあ早く」


私は馬に乗り王宮に向かって走る。


なんだか本当の物語みたいになってきたわね。まあカボチャの馬車じゃないけど。


結局、私が皆んなに追いついたのは馬車が王宮の馬車止めについた時だった。


馬車止めにいる従者達は私が馬に乗ってきたのを見てびっくりした顔をしている。


私の顔を見た3人は半泣きだった。


「良かった。。間に合って。早く馬車に荷物を入れて」とお母様が焦っている。


私は靴を履き替え、外套を外し馬車に入れた。


「あら、それがこの前言っていた試作品の靴?良い仕上がりね」とお母様が感心したように言う。


「今日の舞踏会で耐久テストをして、大丈夫そうだったら、みんなの分も作るわね。パールのアクセサリーと合うし」と私が言うと。


お姉様達が私をぎゅっと抱きしめて、


「レイチェルは頑張りすぎだと思うの。仕事も大事だけど、私達も手伝えるから。もう少し自分の為に時間を使ってもいいと思うの」

「レイチェル、これだけ可愛いんだもの。本当に王太子殿下が見そめるかもしれないわよ」


私はちょっと顔が赤くなってしまった。


王太子殿下はどうでも良いけど、エディにドレス姿も見てもらいたいな。


「さあ、行きましょう。パーティーの始まりよ」とお母様が私の手を取る。



私は目の前にある階段とその後ろにそびえる王宮を見つめた。


結構な長さの階段ね。そりゃこれを駆け降りたら、転びそうになるわけだわ。


いざとなったら、靴は脱いで走らないとね。


まあ、そんな状況にはならないか。


「レイチェル、貴方まだ布巾をかぶっているわよ」とエスターが笑いながら言う。


私は慌てて布巾を取り、ポケットに突っ込んだ。


私はドレスの裾を持ち、階段を登り、入り口で仮面を貰う。


さあ、仮面舞踏会の始まりだ。


いつもガラスで靴を作るのは耐久性に問題がある気がしたんですよね。


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