エドワード王太子殿下
エドワードはこの国の唯一の王子だ。
エドワードの母である王妃はエドワードが産まれてすぐに病気で亡くなった。王は王妃以外を娶るつもりはないと宣言し、エドワードには兄弟はいない。
王宮で開かれた舞踏会で王と王妃は出会い結婚した、出会った瞬間にこの人だとわかったそうだ。
その時の事を父上から耳にタコができるほど聞かされて育った。
周りの側近からはあなたはこの国の唯一の王子。その為結婚して世継ぎを残す事はとても重要な事だとずっと言われてきた。
「全く、立派な王になる為にって散々勉強させられて、結局は1番重要なのは子作りって。。あの鬼の勉強量はなんだったんだ。種馬には必要なかったろう」とバルコニーから城下町を見ながらいうと、側近兼護衛のニルスがため息をついた。
「殿下、またそんな事を。行政も王としての重要な仕事ですから、今までの勉強は無駄なわけはございません」
「じゃあなんでこんな時期に舞踏会を開くんだ。今年は例年にない冷夏で作物の収穫量が減っているというのに、結婚相手なんて誰だって同じなんだから、力のある貴族の娘を連れてきて、俺に結婚しろっていうだけで済むだろう。その方が時間も金も節約できる」
「殿下、陛下はご自分の時のように殿下に心から愛している人と結婚して欲しいと思ってらっしゃいます」
「そんな、簡単に一目惚れなんかするわけないだろう」
「だからこその舞踏会です。国中の令嬢が集まるですから」
「だがな、ニルス。そんなにたくさんいたら、踊るのはせいぜい2-3分だ。それで未来の王妃を決めろというのが無理な話だ。俺が求めているのは、ダンスが上手い妃でも見てくれが良い妃でもはない、一緒にこの国を支えてくれる妃だ」
「だから仮面舞踏会にしろと言ったのですか?」
「俺だって綺麗な女性は好きだからな。先入観に囚われたくなくて。まあ今更グダグダ言っても、中止に出来るわけでもないだろうし。ああ、面倒くさい」
「殿下、運命の相手というのはいつも予想もしない所から現れるんですよ」とニルスが言う。こいつは思いの外ロマンチストなんだな。
「予想もしない場所ね。。。ではその確率を上げる為に、俺は街に行ってくる」と俺は着替えはじめる。
「え?またですか?もう舞踏会まで時間がないのに、何かあったらどうするんですか?」
「市場をぶらぶらするだけだ。いつも問題ないだろう。数時間で戻る」
俺の金髪と青い目は目立ちすぎるので、髪茶色の髪のカツラを被り、眼鏡をかけた。
勿論、こっそり護衛はついてくるんだろうが。
俺は時々こうしてお忍びで街に出ている。ニルスも文句は言うが、見逃してくれている。王位を継いだらこう言うことも出来なくなるだろうし。
街では夏祭りが開かれていた。
広場には屋台が並び、今日のメインイベントの乗馬レースが始まるみたいだった。
参加者はほぼ男性だけだったが、その中に簡素なドレスをきた町娘がいた。髪は布巾で隠しているが、チラッと金髪が見えた。そして目は深い緑色。そしてあの立ち振る舞いは絶対に貴族の娘だ。
しかし彼女が挑戦しているのは、大きな塊肉が賞金の乗馬のレースだった。
祭のメインイベントで、街の中心近くにある騎士の鍛錬場を一周し広場に戻ってくる。
貴族の令嬢が馬に乗れるのか?
「挑戦者はいないかー、後1枠残ってるぞ」という声がすると。
「どうせ私が勝つんだから、無駄に人数増やしても意味はないわよ」と彼女は高らかに宣言した。
あの女は勝つ気でいるのか、面白い。
「俺も参加しよう」気がついたら、馬を連れて前に出ていた。
後ろで護衛が慌てているが、俺がチラッと見ると大人しくなった。
その女は俺の声を聞いて、ちょっと眉を寄せる。俺の馬を見てスピードが出そうな馬だとを判断したのか?そして俺を見てニヤリと笑った。
別に肉が欲しい訳じゃないが、なんだかどうしても彼女に勝ちたくなった。
「では位置について、はじめ!」
馬は一気に広場を抜け鍛錬場に向かう。
確かにあの彼女以外は誰も勝負にならない。
俺は彼女のちょっと後ろを走っていく。鍛錬場を抜けたら、後から一気に追い抜いてやる。それにしても速い。
鍛錬場の外周を一周走った後また広場に向かう。道の周りには人がたくさんいる。
この先は細い道しかないので、抜かすならここだ。
しかし俺の動きは読まれていて、うまく抜かせないまま広場に戻る道を走る。
人が多く詰めかけていて道が細くなっているがいけそうだ。右脇から抜こうと思った瞬間、目の前に子供が飛び出てきた。
「危ない!!」と叫んだ瞬間、彼女は減速し子供を馬に引っ張り上げた。
俺は勢いを止めることができず、そのままゴールする。
その彼女は子供を膝に乗せながら、泣きじゃくる子供をあやしていたが、群衆から焦った母親が子供を迎えに来たので、彼女は子供を馬から降ろして母親に渡した。
そして俺の方に来て、
「残念負けちゃったわ。良い走りだったわ。お肉を堪能してね」とそのまま馬に乗って広場から離れようとする。
「ま。。待ってくれ。本当の勝者は君だ。俺は肉はいらない。貰ってくれないか?」
もらった肉を差し出しながら、つい話しかけてしまった。
彼女は不思議そうな顔をして俺を見た。
「このお肉はいいお肉よ、大人5-6人で食べても余るぐらいよ」
「い。。いや。俺はレースに勝ちたかっただけだし、家族は1人しかいないので大きすぎる」
いくら良い肉でも父上がこの肉を食べるところは想像できなかった。
「そう。。あなた、普通の市民には見えないわね。お忍びの貴族かしらね」と彼女は目を細めながらいう。
す。。鋭い。
「君だってそうだろう」と俺が言うと。
彼女の目が大きくなったが、ニヤッと笑った。
「では貴族の勤めとして、ノブレスオブリージュをしましょうか」
貴族の勤めとして社会活動をするだと?
「そのお肉を持ってついてきて」
彼女は俺を先導する様に馬を歩かせる。
俺は肉を抱えながら、彼女について行く。
ついた先は孤児院だった。
「わーーー、レン姉ちゃん。今年もお肉もらえた??」と子供達が寄ってくる。
「今年勝ったのはこのお兄ちゃんだけど、お肉をくれるって。みんなでBBQしましょう」
レンと呼ばれた彼女は肉を俺から受け取り、手慣れ様子で肉をミンチにして、調味料を入れ。丸い円盤の様な形にする。
「あなたのお肉だし、一緒にお昼はいかが?」
彼女はそれ以外の食材も持ち込んでいたらしく、テーブルに並べろだと、パンを配れだの人使いがあらい。
自慢じゃないが配膳なんか初めてで、適当に置いていたら
「パンが先で、次に肉、野菜にしないとハンバーガーにできないでしょ」とレンに言われる。
「ハンバーガーってなんだ?食べた気とないな」と呟くとレンは目を剥いた。
「どこのおぼっちゃま??」と笑っている。その笑顔に少しドキッとした。
この国の王太子だけどだな。
見かねた子供たちが手伝ってくれて、ランチは始まった。いつもは毒味だので、1人で冷えた食事をとるだけ。こんなに大人数の子供たちと先を争うように食べるのは初めてで、すごく楽しかった。
「このポテトのサラダうまいな」と俺が言うと。
レンは嬉しそうに笑って
「久しぶりに作ったのお口にあってよかったわ」
「レン。。あの。。」と言おうとした時、焦った顔の俺の護衛が走っているのが目の端に映った。
あ、レースの後、勝手にこっちに来ちゃったからな。
「レン、ご馳走様。もう行かないと」と俺が立ち上がる。
「お肉、ご馳走様。あ。。名前知らないわ、あなたの」
「俺はエディだ」
「エディね。ほらみんなもお礼を言って」
子供たちが合唱するようにエディお兄ちゃんありがとうと言ってくれた。
俺はものすごく良い気分で城に帰る事ができた。
エドワードは公式の時以外は口も態度も悪いです。でもいざという時はきっちりできる男です。




