仮面舞踏会になんて行きたくない
お風呂に入って綺麗さっぱり。
作業着(お古のドレス)からシンプルなドレスに着替えた私は、裏庭にやってきた。
見た目には中央にバラ園があり、周りには色とりどりの花が咲き誇っている。
見た目には貴族の家にある普通の庭園だが、バラ園の花はジャムにしたり、ローズヒップはお茶になったり、観賞用ではなく食用にもなっている。
庭園に植えられている植物は多くが食用だ。ハーブも多いが、野菜だって綺麗な花を咲かせるものがある。
今は外壁のつたの代わりにぶどうを這わせているので、秋には収穫してワインを作る予定だ。
私は食べ頃だった茄子とトマトを収穫してキッチンへ向かった。
「お嬢様、今日はナスとトマトで何を召し上がりますか?」と我が家のシェフが私が抱えているものを見て言う。
「これはお昼にナスラザニアにしようかと思って。朝は昨日収穫したフルーツでジュースでいいわ。生で食べるには微妙でもジュースにすれば大丈夫でしょう」と私が言うと。
「私も同じ事を考えていました。お嬢様の考えに染まってきたんですかね?」とすでにすりおろしたフルーツを絞ってジュースにしてくれる。
「ただ。。ジュースは健康にいいと言っても、もう少し食べないとダメです」と言って、トーストと目玉焼きをトレーに乗せられた。
私がトレーを自分で運ぼうとしたら。
メイドのアンがすごい勢いでトレーの前に立ちはだかった。
「お嬢様、それは私が!執務室で宜しいですか?お嬢様はすぐ自分でされてしまうので、ミレーネ様達がレイチェル様に家事をさせて、虐げていると言う噂が出てしまうんですよ」
「え??何それ」
私は急いで執務室に向かい、朝食を持ってきたアンに話を聞く。
「さっきの私が虐げられているて話を詳しく教えてちょうだい」
「そのままの意味ですよ。伯爵様が亡くなられてから、お嬢様が17歳になったのにデビュタントもしない、ぼろぼろの服を着て庭仕事をしている、それなのに他の継姉達は綺麗なドレスを着てパーティーに参加している、そこから皆さん、お嬢様が虐げられているって思って噂を広げているんでしょうね」
「えーーー全て私がやっている事だし、ドレスだってリメイクをお姉様達に無理矢理着せてパールのアクセサリーの宣伝をして貰っているのに!!」
「お嬢様、世間はそう見てくれないんですよ。最近ミレーネ様の顔色がすぐれないのもそのせいです、パーティーで継子いじめだの、冷血継母だの言われているみたいですよ。ミレーネ様はレイチェル様の為に黙っているみたいですが」と悲痛な顔で言う。
「お嬢様、なので仮面舞踏会に出ましょう。そこでお嬢様の美しいドレス姿を見せたら、噂は消えてなくなります」とアンの真剣な顔を見たら嫌だとは言えない。
私もそろそろ金持ちの政略結婚相手を探さなきゃいけないから、顔を売っておかないといけないし。
「わかったわ、私はお母様に参加するって言ってくるわ」
「お嬢様、ミレーネ様が周りから言われている事は本人に言ってはいけませんよ。必死でレイチェル様から隠しているのですから。自分から舞踏会に行く事にしたと言えば、ミレーネ様はさぞお喜びになると思います」とアンが静かに言う。
「わかったわ、ありがとうアン!」
私はお母様の部屋に向かった。
「本当にレイチェル様は違う事をしようとするんだから」とアンが足早に去る私の後ろ姿を見ながら呟いた」
「お母様、レイチェルです。ただいま宜しいでしょうか?」とドアをノックしながら聞くと、どうぞと中から聞こえた。
「レイチェル、どうしたの?今月の領地の税収については終わっているわよね?」
「お母様、私。。。次の王宮での仮面舞踏会に参加して、結婚相手を探すことにしました。準備の手伝いをお願いしても宜しいでしょうか?」
一気に言った。そうでもしないと決心が揺らぎそうだったから。
お母様は固まったまま動かない。
「お母様。。。?」
お母様は大泣きしながら私に抱きついてきた。
「任せてちょうだい。ああ、やっと来たわこの日が。これで旦那様へのご恩も返せる」
やっぱり悪口と言われているのが辛かったのね。気乗りしないけど、これも親孝行だわ。
「ではレイチェル、早速ドレスの買い物に。。。」
「あ、お母様、ドレスはあるんです。亡くなったお母様のドレスをリメイクしようかと」と私がいうと。
お母様はまたかって顔をしている。
「レイチェル、これはあなたのデビュタントでもあるのよ。折角だから、最新のドレスを作った方が。。。」
「ほら、もう舞踏会までそこまで時間がないので、ドレスメーカーも恐らく新規注文は受け付けないと思いますよ。代わりにアクセサリーはこの前収穫したパールで新しいものを作りますから」
と私がいうと、お母様の顔が明るくなった。
「良いわね、パールはどんなドレスでも似合うし」
まあ、本当はパールの宣伝をしたいだけなんだが。
「早くリメイクするドレスを見せてちょうだい。靴も合わせないといけないし、ヘアスタイルも考えないと、あーー忙しい」と言いながらニコニコしてる。
アンに教えて貰ってよかった。こんな生き生きとしたお母様は久しぶりだ。
すると部屋のドアがバーンと開いて、エスターとミラが飛び込んできた。
「レイチェル!あなた舞踏会に参加するですって!!」エスターお姉様の鼻息があらい。
「レイチェル、舞踏会までダンスのレッスンしましょうね」とミラお姉様がニコニコしてる。
この2人も私を虐めていたと思われていて、誹謗中傷を受けていたのかしら?
私は自分の我儘で家族が辛い目に遭っていることに気が付かなかった。。。本当に申し訳ない。
少し鼻がつんとしてきた。ここで泣いたらもっと心配させる。
「仮面舞踏会で素敵な人と出会えますように頑張りましょう。できればうんと歳上がいいです」私がいうと。
皆んな困惑した顔をしている。
「レイチェル、あなたこの仮面舞踏会の趣旨を忘れていない?」とエスターお姉様が言う。
「これは独身の王太子殿下の結婚相手を見つける為に開催されるから」ミラお姉様が続けて言う。
そしてフィニッシュはお母様だ。
「王太子殿下以外の男性は王太子殿下の友人、側近と騎士以外にいないと思うわよ。だからうんと歳上の男性はいないわね。あなた、王太子殿下と結婚したいのかと思ったんだけど」
「え??えーーーーーーーー!!!私の政略結婚はお金はあるけど、もう嫁を構うのが面倒なすごく歳上が良かったのに!」と私が言うと。
3人ともなんだか、ガックリしてる。
もしかして、これっシンデレラがガラスの靴を置いてきちゃうイベントだった?
やばいやばい。。そんな事になったら、王子様と結婚しなきゃいけなくなる。
「あ、じゃあ。。今回はパスして、次の。。。」と言おうとしたが、お母様の顔が曇る。
そうよ、今回は仮面舞踏会だから顔はわからないお試しみたいなもんだし、家族の汚名を晴らすの為なんだから。
「行きます。。。私が王太子殿下とどうこうなるわけでもないし、どこかのご子息にも独り身の父親がいるかもしれないし」
この時、私が盛大なフラグを立っててしまった事には誰も気が付かなかった。
恐らくレイチェルはややファザコンも入っていると思います。




