守銭奴なシンデレラ
今回は童話を元にと、王道のシンデレラの話を元にしました。
シンデレラのお話は意地悪な継母や継姉達にこき使われる所から始まる。。。。。はず。
レイチェル・アシュトン伯爵令嬢の朝は早い。
昨日は遅くまで働いていたので、目の下に隈ができているが、煤で汚れた顔なので目立たない。
伯爵令嬢とは思えないぼろぼろのドレス、髪には煤で汚れた布巾をかぶり、屋敷の屋根裏部屋から出てきた。
そんな姿を見て2人の継姉エスターとミラは険しい顔をしている。
「伯爵令嬢がそんな格好で」
「なんでそんな煤だらけなの?」
そこに2人の母親、レイチェルの継母ミレーネがやってきた。
「レイチェル。。。あなたは何をしているのですか」顔を歪め、細かく体が揺れている。
レイチェルは振り返って3人にいう。
「煙突掃除ですよ。そろそろノエル祭が近いのに、こんなに汚いままでは妖精達がプレゼントを持ってきてくれないですからね」とニヤッと笑いながら、真っ黒になった箒を3人に向ける。
「「「レイチェル、やめてー」」」
「お嬢様、煙突掃除の費用ぐらいは伯爵家で捻出できます」と後ろに控えていた執事のウィルが静かにいう。
「そうよ、もっと言ってあげて、ウィル、レイチェルはもう17歳。結婚適齢期なのに、伯爵家の資産管理ばかりを気にして、経費を削るために外注するものは全て自分でしてしまうし」と半泣きのミレーネが言う。
「貴方の亡きお父様に、幸せな嫁ぎ先を探すように言われたのに、社交界デビューもドレス代が勿体無いとしないし、どうしたらいいのかしら」
「私より、お姉様達が先ですよ。従兄弟のアンドリューに将来この伯爵家を継いで貰うまで伯爵家を盛り立てて、お母様の老後の費用とお姉様達がいい家庭に嫁ぐための持参金を稼がないといけませんから。私はそのうちお金はあるけど歳上で子供もいらない貴族と政略結婚します」と言うとお母様の顔がますます歪んだ。
「私はレイチェルにも本当に好きな人と結婚して欲しいのよ。私が後妻としてここにきて、旦那様がすぐに亡くなってしまい。領地経営など何もわからない私を手伝ってくれたのは本当に感謝しているけど、まさか年頃の娘が恋愛よりお金儲けにハマるとは思わないじゃない」とシクシク泣いている。
お母様は20歳と18歳の娘がいるとは思えないほど。若々しくて可愛い。そりゃお父様も一目惚れしたわけだわ。
確かまだギリギリ30代なはず。
1番上の姉のエスターは私の顔をハンカチで拭いてくれる。
「とりあえず、お風呂に入ってきたら?このままだと床が汚れて、お掃除に時間がかかって、メイドのアンの残業代を出す事になるわよ」
は!残業代。
アンは私が無駄にお金を払う事を嫌うのを知っているから、休憩時間を潰して無償で働こうとしてしまうかもしれない。
「すぐに入ってきます!!!」と私は自分の部屋に急いで戻る。
後ろから、2番目の姉ミラの声が聞こえる。
「流石、エスターお姉様。レイチェルの扱いが上手いわ。レイチェルの可愛い顔がこれで見られるわね」
確かにエスターお姉様は、私が自主的に動くツボをよく知っている。あの洞察力はどこの家に嫁いでも重宝されるだろう。
ミラ義姉様はおっとり風だが、とても褒めるのが上手く、人をやる気にさせる。気がつくとなんでもミラ姉様の望む事をしている時がある。
2人には良い結婚先を見つけないとと私はお風呂に入りながら思った。
ここはあの有名な童話、シンデレラの話のだったのに、だいぶ話が変わったわね。まさか私があのメインキャラクターに転生するとはね。
私は前世で大手銀行に勤めていた。昔からお金を数えるのが好きで、お年玉を貰っても使うことより貯金箱に入っているお金を数える方が好きだった。
だから将来は銀行員になってお金を数える仕事をしたいとずっと思っていた。その夢を叶えてから20年、毎日1円のズレもないきっちり業務を行っていた。
しかしある日、銀行強盗に数えた現金をぐちゃぐちゃにされ、逆上した所うっかり刺されてしまい、私の人生は終わってしまった。
そして気がついた時は丁度、お父様がお母様と再婚する所だった。
お父様は後継の男の子が欲しいと再婚を決めたが、子供が出来る前にお父様は流行病に罹り亡くなってしまった。この国は男子でないと爵位が継げないので、今15歳の従兄弟が成人したら、この伯爵家を継いで貰う事になっている。
彼が成人するまで後2年。叔父は自分の領地の経営で忙しいので、それまではミレーネお母様が伯爵代理をする事になったのだが、お母様は壊滅的に計算が出来きず、半年で伯爵家は赤字になった。
初めはお母様とお姉様達が散財しているのかと思ったが、そんな事もなく、計算のできないお母様の知らないところで、お金を横領していた領地管理人のせいだった。
私は帳簿を抱えて半泣きなお母様を励まして、一緒に計算をして。領地管理人の杜撰な帳簿から横領の証拠を見つけた。
なのでお母様には感謝はされているが虐められる気配はない。お姉様達も物凄く堅実なタイプで、傲慢な態度とかもない。
この世界で1人になってしまった私の新しい家族に幸せに生きてもらう為に私は節約できるところはして、お金を稼ぐ方法を探した。
まず伯爵家に勤める人の数を減らし、昔から使えている人達だけにして、できる事は自分達でする。私も率先して掃除とかをした。
ドレスなど少しのリメイクで印象が変わるようにした。パーティーで1回着たからもう着れないとか勿体無い。
庭園は美しく保ちつつ、食用になる植物もたくさん植えた。屋敷の裏に土地はいっぱいあるので野菜は作りたい放題。
お金を稼ぐ手段として目をつけたのは貝の養殖だ。
領地は海の入江に面しているので貝の養殖をしていたが王都から遠く、冷蔵保存などの輸送手段がないのであまり売れていなかった。領地に視察に行った時に食べたが美味しかったのでかなり勿体無い。その時、貝の内側が真珠の様にピカピカしているのに気がつき、前世で真珠の養殖体験クラスで学んだ真珠層だとわかった。
2年前に試しに核を入れた貝をチェックした所青白い綺麗なパールができていた。
それを王都の宝石店のバイヤーに見せた所、是非もっと仕入れたいとの事で、そのお店と専属契約をする事になり。契約金で伯爵家の赤字は黒字になった。ただ真珠という名前はこの世界では言いにくいようなので、パールと呼んでいる。
その後、育てていた貝全てに核を入れたので、今年はかなりの収穫が見込める。
他の領地の収入もありお金も増えて来た、守銭奴根性とは簡単に抜けるものではない。
これなら自分がやった方が安いなと思うとつい体が動いてしまうのだ。
で。。つい、煙突の掃除も。去年は業者に任せたのに結局手抜きの掃除をされて、冬に煙突が詰まって掃除する羽目になった事を思い出して、自分で出来るかなと思ったら、ついノリノリになって全て終わらせてしまった。
お風呂から出たら、庭の畑で収穫できるものがないかチェックしてから朝ごはんにしよう。
それからお姉様達が参加する王太子主催の仮面舞踏会に来ていくドレスのリメイクを進めなきゃ。
勿論、私は守銭奴ではあるが。使うところには使う。ドレスのリメイクだってお金をケチっているわけではなく、亡きお母様のドレスは本当に質がいいので、デザインを今風に変えた方が絶対2人に似合う。リメイクだって宝石をつけるから、ドレスを新しく買うのよりほんの少し安いのお金がかかっている。
どんな小さい節約でもチリも積もれば山となる。
まあお姉様達が良い貴族の家に嫁げば、我が伯爵家へのバックアップが期待できるという打算もある。
お母様もまだ若いんだから、また再婚して幸せになってもらうのも良い。または何処かの田舎で悠々自適な暮らしをして貰うのも良い。
私が1番若いはずなのに、前世の記憶のおかげで何故か1番枯れている。
「さあ、今日もがっつり頑張って稼ぎますか!」とザバっとバスタブから立ち上がる。
「お嬢様。。。。少しは恥じらいを」
バスタオルを持ってきてくれたメイドのアンにふるふると首を振られてしまった。
初めは継母と継姉を義母とか書いていたのですが、途中から辛くなったので、お母様とお姉様で行きます。それだけ仲がいいという事にしておいてください。




