表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明宵  作者: 水嶋
残照

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/90

生意気な娘

今回は眞司視点の話となります


長くなりそうなので2話に分けます

「俺は医者でも料理人でも栄養士でもねえ」


「…」


姪の静風に呼び出されて兄貴夫婦の家に行っていた


「でも医学部出て医師免許も取ってるでしょ?大学院まで行ったんだし」


「それだけじゃ医師にはなれん。2年の初期臨床研修を終えた後に専門分野で後期臨床研修を3年…」


「あー!煩い!まあ要するにその研修ってのは受けてないと」


「そうだな」


「でも医師免許は有ると」


「そうだな」


「じゃあお医者さんの勉強をして知識はある医者っぽい人って事で!」


「なんか俺の長年の努力をザックリ説明しやがった…一応医者になる資格は有るんだがな」


「でも医者にならかったんでしょ?」


「俺は生きてる人間相手は無理だと悟ったんだよ!」


「生きてる人間?…」


静風に引き合わされた骸骨みたいな女が尋ねてきた


「シンジはね、死体を捌いて喜んでる変人なの」


「ひっ!…」


「誤解を招く説明はやめろ…俺は監察医補佐の解剖助手だ。まあ死体を解剖はしてるが…別に喜んで解剖してる訳じゃ…」


「ひいっ!…」


ちゃんと説明してやったのに更に怯えていた

サラだけに…

名前は川辺沙羅と言った


「サラはね、摂食障害で食事が上手く出来ないから…シンジが診てあげてよ」


「だから俺は医者でも無いしその道の専門家でもねえし…まずは精神科とかじゃねえか?この場合…」


「病院はやだ!」


何か急に元気に主張して来た


「らしいから。どうせシンジ独り身なんだし料理作っても余らしてるじゃん」


「アレは急に来れなくなったから処分するよりはって…」


「別に嫌ならいいし…」


サラが拗ねていた


「いや、そこまでは言っては無いが…」


「もうっ!いい歳したオッサンなんだから我儘言わないでよ!テルヒに頼まれたんだから!」


「はいはい…分かりましたよ…」


静風に諭されて仕方なく引き受けた

相変わらず生意気で可愛げのない奴だ


とりあえず家にサラを連れて帰った


「サラは何歳だっけ?」


「17」


「へえ…若っ…」


見た目がガリガリで若いのか年寄りか男か女か分からない感じだったが、一応若い女と言うジャンルだった様だ


「シンジは?」


「俺は36」


「ふうん。オッサンか」


「まあそうだな」


歳の差19なんでまあ娘と言える位の間柄だろうか

しかしまだ会って間もない面識のない相手にシンジ呼ばわりでその上オッサンとは…

まあ遠慮されるよりは気楽だが多少は遠慮と言うか配慮と言うか気遣い位は有っても良かろうに


やはり静風の友はもれなく可愛い気もなく生意気だ


これはとんだ奴を押し付けられたな…とため息をついた


「シズカにあんまり似てないね」


「まあな、アレは兄貴に似てるからな」


「ふうん。じゃあお兄さんと似てないんだ」


「似てないな。兄貴はもっと見た目オッサンだぞ?」


そんな会話をしながら家に着いた


「とりあえず…何か食うか?」


一応頼まれたミッションをこなす事にした


「別にお腹減って無い」


コイツは気を使うとかそう言う概念は持ち合わせて無いらしい


「じゃあ…おやつなら食えるか?」


「まあ…」


「嫌いなものとか有るか?」


「うーん…特に」


「そうか、甘いのは食えるか?」


「うん」


何故か俺が気を使っていた

昔からこう言う性格だから無駄に人の顔色を見て人付き合いに疲れてたので人と関わり合いたく無いのだが…


とりあえず今家にある材料で…


冷蔵庫を確認して早速取り掛かった


「何作ってんの?」


サラが覗き込んで見ていた


「とりあえず今ある材料で栄養価の高いもの…だな」


ボウルに卵を割り入れてほぐし計量した牛乳と生クリームとグラニュー糖を入れてホイッパーで混ぜた


「それ何?」


「バニラビーンズ」


「へえ」


バニラビーンズを包丁で切り開いて中身を包丁の背で扱き出してボウルに入れた


「凄い…こんなその辺に落ちてる枯れた草みたいなのに…甘い良い匂いがする…」


枯れた草…一応それなりに値段はするのだが

そう思いながら苦笑いをしていた


「まあバニラエッセンスよりコッチの方が上品で香りも良くていい匂いだな」


「へえ…」


ザルで濾して陶器のココットに入れて湯を張った天板に並べて予熱したオーブンに入れた


「これで終わり?」


「まあな。簡単だが多分美味いぞ」


「へえ…」


オーブンのメロディが鳴り取り出した


「わあ!プリンだ!」


「まあ…このままだと物足りないから…」


そう言って上に三温糖を振りかけてガスバーナーで炙って溶かして少し焦がした


「すっごい!甘いいい匂い!」


「まだ熱いから少し冷やしてから食うぞ?」


「うん!」


サラは目を輝かせて素直に頷いた

それから冷やしている間に話をしていた


「シンジって料理人だったんだ…」


「いや、調理師免許なんて持ってないぞ」


「でも短時間でプリン作っちゃうし…」


「まあアレはクレームブリュレだな。そんな難しく無いしプリンみたいに型から出さなくていいから失敗も無いしな。誰でも家で作れるぞ?」


「へえ!でも普通の家にはガスバーナーなんて無いしバニラなんとかも使わないと思うけど…」


「まあ…俺は少々凝り性かもな…」


「そっか。でもシンジなら料理の世界でも活躍しそうだね」


「無理だな。まずコミュ障の俺が同僚と連携が必要な仕事は無理だな。あと客商売も無理だな」


「でも今はちゃんと人と連携して働いてるんでしょ?」


「まあ…人数も少数で基本無駄口叩かず黙々と出来るし、職場も余り干渉してくる奴は一人を除いていないしな…」


「その一人と仲悪いの?」


「うーん…まあ何かにつけて構ってくるって言うか距離詰めて来るって言うか振り回して来るって言うか…」


「あはは、じゃあテルヒみたいな人なんだね!」


「確かに…アレは見た目だけじゃなくて中身もそっくりなのかも知れんな…」


「見た目?」


そんな話をしているとセットしていたアラームが鳴った


「よし、そろそろ冷えたかな」


「やっぱり几帳面だね…アラームまでセットして」


「まあ料理…特にお菓子はキッチリ計量して決められた手順と時間を守って正しく作れば失敗が無いからな。それを面倒がる人間も居るが俺はそう言う所が好きだな」


「そっか…人生もそんな風に生きていければ楽なんだろうけどね…」


「まあな…」


何だかさっきまで無邪気な子供みたいだったのに急に大人びた意見を述べていた


「はい、どうぞ」


皿に乗せてスプーンを渡してやった


「わあ!いただきまーす!」


上のカラメルをスプーンで崩して掬って口に運んだ


「美味しいー!!マジヤバいこれ!」


「そりゃ良かった」


その意見を聞いてから俺も口に運んだ


「コレもう店持てるレベルだよ!」


「これだけで店開いてたらそこらじゅう店だらけだぞ?」


「あはは!でもそれ位美味しいよ!何か久々にちゃんと食べてる」


「まあちゃんとと言うにはアレだかな…所詮おやつだしな」


「ちゃんと…人と…誰かと向き合って食べてるって事だよ」


「ふむ…成る程な」


そう言ってサラは小さい子供のような笑顔をみせて夢中で食べていた


ちゃんと残さず平らげたのでお気に召したのだろう




それから週末は俺の家で食事をする様になった


基本サラは好き嫌いが無い様だったので作ったものは食べていたがやはり食べる量が少なく完食は出来ずにいた


食べ切れなかったものは別にアレンジして俺の弁当にしたりしていたが、それを聞いたサラが自分にも欲しいと駄々をこねたので次第にそれもサラにも作ってやったりしていた


なんだかんだとほぼ毎日サラの為に食事を作ってやっていた


一応サラの母親がそれを知って迷惑料と食費にと多少金を渡されていたので金銭的な負担はそれ程無かった


俺もいかに少量でも栄養価が高い物が作れるか研究したりしていた


なんだかんだと俺は凝り性で頼まれたら断れないお人好しの様だ


「はい!美味しかったよ!」


そう言って俺が仕事から帰る時間に家に来て洗った弁当箱を渡されて何だか母親にでもなった気分になっていた


翌日の朝、仕事に行く途中にサラに会って弁当を渡す…

週末には俺の家で昼飯と夕飯を食べて帰る…

そんな生活をしていた


眞司はなんだかんだとお人好しの様ですね


サラは目標達成できるでしょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ