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明宵  作者: 水嶋
残照

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75/90

暗く厳しい現実

「なーんか魂胆有りそうねえ」


椎那を見送った後、ニリにそう言われた


「シイナの夢を叶えてあげたくて…すみません」


私は素直に謝罪した


「夢…ねえ…」


「シイナもサラも…大切な友達だから…」


「へえ、サラと友達なんだあ。あの子友達居たんだねえ?意外〜」


「はい、最近仲良くなりました。サラがニリさんと出会って夢だったモデルになれたって聞いたんで…シイナの夢を叶えてあげる為にニリさんに頼ってしまいました…すみません」


「ふうん…じゃあサラがどうやって仕事手に入れてたかも聞いてるんじゃないの〜?」


「はい、チャンスは自分で引き寄せて掴まないと…ですよね?」


「あはは!アンタ面白い子だね!」


「そうですか」


「まああの子も思う様に先に進めなくて焦って暴走して結局自滅したみたいだけどねえ」


「まあ…そうですね」


「折角頑張って掴んだチャンスもサラにはご不満だったんでしょ?多分ね」


「ご不満?」


「TGSね。ユヅキを目立たせる為のまあ言っちゃえば引き立て役だったからね?」


「そうなんだ…」


「その為に選ばれたのにねえ。じゃなきゃあの子レベルじゃ出られ無いでしょ?自分の事を冷静に客観的に見られないとこうなっちゃうのよね」


「そうですか…」


「そこから売り込んで行かなきゃ行けなかったのにねえ。ユヅキを売名に使う事にすら頭が回らない馬鹿な子よ。やっぱりこの世界は向いて無かったんじゃない?」


「でも…一応売名に使おうとしたんじゃないですか?」


「あはは、その結果がクビだもの。話題にすらならず使えてないじゃ無い」


「成る程…確かに」


「でもまあ、これで良かったのかもね。早い段階で自分の才能の無さを知って離脱出来たんだから」


「離脱…」


「いい歳をして夢を諦められず縋りついて人生棒に振ってる奴なんてゴロゴロ居るよ?この世界には」


「そうなんですね…」


「この世界はね、努力が報われる世界じゃ無いからね。才能が有って見た目が整っていても成功するとは限らないしね」


「大変ですね…」


大して努力もしないで南野に撮影までされてる星夜は凄いんだなと思ったし、あっさり辞めようとしてるのは勿体無いなあとも思った


「あの子がね、どうやってTGSに出られたか知ってる?」


「いえ…その事はまだ聞いてないですが…モデルの仕事をもらう為に偉い人のお相手をしていたのは知ってます」


まあそのやり方であの仕事を手に入れたんだろうとは思うが


「壁穴したらしいよ?」


「壁穴?」


「まあ…界隈で少し流行ってるのかな?壁に穴あけてそっから突っ込ませるの」


「へえ…」


「あの子見た目アレでしょ?あれじゃ相手も勃たないからね。見えない様にして壁で隠すの」


「ふむ…」


「でね、一晩に10人相手にさせて代わる代わる中出しさせてね、それで妊娠しなければ推薦してあげるってゲームをしたんだってさ。芸能人として運を持ってるかの運試しのね」


「そうなんだ…」


「まあ多分生理なんて止まってるだろうし勝算はあったんだろうけどね、楽な仕事じゃないよね。そこまでしてやっとして手に入れた晴れ舞台、いざ映像みたら自分は殆ど映ってないってなるとねえ…」


「成る程…」


それで何の努力もせず注目を浴びてる星夜が許せなかったのかも知れない


「正に…努力が報われない世界…ですね」


麻由がそう口を開いた


「そうだよね、あれだけしんどい思いしてダイエットしてもね」


「サラが飲んでるダイエットサプリ…ニリさんからの伝手で買ってるって聞きましたが…」


私はその事も踏み込んで聞いてみた


「そうだよ?まあちょっとヤバい奴だけど…一応本当にダイエットサプリなんだよ?日本では認可されてないけど海外じゃモデルや芸能人が使ってる奴なんだよね」


「へえ…」


「国内ではまだ流通も販売してないし買える所も無くてね。この世界でもまだ話題になって無いから知ってる人は殆ど居ないかなあ」


「そうなんですね…流石海外で仕事してるだけあって流行に敏感ですね」


麻由が感心していた


「だから個人輸入出来るルートを教えてあげたの。多分その手の薬物ほど依存性は無いとは思うけど…長期に渡って常用するのは良く無いかもね」


「ふむ…」


「まあ…予想だけど…日本では認可は降りずにその内薬機法の規制対象にされるだろうね」


「ニリさんは…危険かもと知っててサラに勧めたんですか?」


麻由が何の感情も読み取れない顔と声でそう尋ねた


「だってあのサプリの副作用って辛い事や苦しい事を忘れて明るく楽しい気持ちになるってね。正に芸能界そのものでしょ?裏舞台を隠して明るく楽しい世界を見せてる」


「そうですね…」


「まあどの道いつか手に入れられなくだろうから嫌でも止められるよ」


「確かに…」


「ニリさんは…サラをどう思ってましたか?」


私は尋ねてみた


「そうだね…まあよく居る芸能界に夢を見て憧れてる女の子の1人…だね。大した見た目も才能も無く努力と言いつつ人に頼って他力本願。結局仕事もダイエットも人頼み」


「確かにそうですね…でも…サラは小さい頃から酷い虐めを受けてました」


「まあ大体本人から聞いたけど。言っちゃ悪いけど僕の方がその頃はもっと酷い扱いされてたからね?正直同情は出来ないかな」


「そうだったんですか…」


「オマケに海外だとアジア人ってだけで差別されて否定されるからね?」


「そうなんですね…」


「まあ僕の場合は相手に何も言わせない位の技術と知識と会話スキルと図太さの鋼のメンタル育てたけどね」


「やっぱり成功してる人は凄いですね…」


確かにニリの言う事は正しいなと思えた

果たしてサラはそこまでの努力をしたのだろうか…


そして椎那はこの先そこまで努力する覚悟は有るのだろうか…



「僕の事に失望した?」


ニリは笑顔で麻由にそう言った


「いいえ…やっぱりニリ様は強くて美しい…」


「ふふ、有難う」


そう言ってニリは麻由にウィンクをした


「後ね…枕営業する子ってね、所詮その程度の仕事しか貰えないんだよ?」


「そうですか…」


「結局自分の事をその程度に扱ってる人間にはその程度の仕事しか回って来ないんだよ」


「成る程…」


「自分の価値を自分で決めちゃってるんだよね」


「深いです…ニリ様…」


麻由はすっかりニリに心酔している様だった




その後ニリは星夜の撮影途中のメイク直しに呼ばれて退出した


「私ね、サラ程じゃ無いんだけどね」


麻由が口を開いた


「?」


「中1の頃にね…ピアノの個人レッスンを受けていた先生からね、性被害に遭ったの」


「そうだったんだ…」


「胸を掴まれて揉まれてね、大きい胸だねって嫌らしい声で言われてね、下着に手を入れられて下を弄るともっと気持ちよくなるって言われてね」


「…」


「私は怖くて気持ち悪くて…振り払って逃げたの。それからショックで暫くピアノも弾けなくなってね…男の人も怖くて気持ち悪くなってね」


「そんな事があったんだね…」


「だから…セイヤのあの日の事を知った時…私も冷静な判断が出来なくなってたんだと思うわ」


「成る程…」


それで星夜に事情を聞く前に事務所に乗り込んだんだな…


「でもね…サラやニリや…もっと酷い目に遭ってる人も…こう言う世界には沢山いるんだろうね」


「そうだね…」


「まあ…ピアノの世界もちょっと芸能界に似た所も有るから…全く聞かない話でも無いんだけどね」


「そうなんだね…」


「まあセイヤには芸能界でやる気は無いみたいだしあの子の場合は被害に遭ってもそれ程気にもしなさそうだけど…」


「確かに…」


サラの時も自分が勃起出来なくなった事位しか落ち込んで無かったからなあ

あの図太さは案外向いてそうな気もするけど


「だからセイヤには自分でやりたい事を見つけてやりたい事をして行けば良いと思ってるわ」


「そっか…やっぱりマユさんは良いお母さんだね」


「ふふ、有難う。そう言ってくれるのはテルヒ位だよ。あの子は生まれた時から反抗期だからね」


「でも…マユさんはどうやって克服してピアノをまた弾けるようになったの?」


「あー…まあ…それは…インに出会って振り回されてる内に?何か色々悩んだり過去に囚われてるのが馬鹿らしくなって?」


「ふふ、やっぱりインくんは凄いしマユさんはインくんが大好きなんだなあ」


「もうその話は終わりっ!」


「あはは、照れてるマユさんは可愛いね!メガネ曇ってる!」


今日はほぼノーメイクの麻由は興奮してるからか顔が真っ赤になっていてメガネが曇っていた


「うっさい!あー!このメガネ邪魔!さっさと外そ!」


「学校の時のセイヤにソックリだよ!流石親子だね!」


「私はあんな可愛げ無くないから!」




「何か…ギャーギャーうるせえなあ…」






そんな会話をしてる内に星夜が撮影を終えて帰って来て3人で一緒に帰った


ニリも色々苦労してたみたいですが…

サラもあんな事をしてまで手に入れた仕事であの扱いに思う所が有った様ですね


しかしまあニリの言う事はあながち間違っては無さそうですが


あのサプリもギリギリグレーだった様です

まあやっぱり悪い奴には変わりないかな?


麻由の過去については「晏陰」を参照下さい


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