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明宵  作者: 水嶋
黄昏時

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53/99

誤解と理解

長くなりそうなので2話に分けます

「マコトさんは知ってる?」


「うーん…僕は知らないなあ…」



8月の終わり、最後の週の金曜日に約束通りマコトの元へ訪れていた


八神家の使命の始まるキッカケや理由を何か知っているかと思い尋ねていた


「今まで気にした事も無かったから…誰かに聞いたり調べたりしようと思った事も無かったなあ…」


「私も…カイに言われるまで気にした事無かった。生まれた時からそれが当たり前で、食べたり眠ったりするのと同じ感じで何とも思って無かった」


「確かに普段から何でお腹が空くんだろうとか眠くなるんだろうって考えながら生活してる人は居ないだろうね。僕も含めて」


「そうだよね…」


やはりマコトも私と同じ様に特に気になったり疑問に思った事は無い様で、知らないみたいだった


「カイは…この夏休みで何か分かるのかなあ?」


「どうだろうね…あの家は大きいからね。夏休みギリギリまで滞在するって連絡来たけど…」


「そうなんだ」


「そもそも八神家は古くからの地主で…確か山とかも持ってた筈だよ?」


「へえ!凄い」


「まあ…だから…昔は弾かれた子は…直ぐに殺処分されてその山に埋葬したりしてたみたい。男の子は土に還って…女の子は海に還って…再び八神に還ってくる様にってね」


「そうなんだ…」


「確か今みたいにドナーに回す事にしたのは宮乃からだったと聞いたかな。外の世界で困ってる誰かの身体に入ってその人の中で幸せに生きていける様にってね」


「そっか…確かに直ぐに殺されたり一生地下施設に隠されて居るよりは幸せなのかも知れないね…」


私はその話を聞いても特に何の感慨も思わなかった


櫂や星夜にひどい事を言われても…


私はやはり何か大切なものが欠けた人間なのかも知れない


「八神家の人は医者が多いけど…昔からそうなのかな?」


「どうだろうね?僕の曾祖父の皇輝は医者だったって聞いたけど…その前は詳しく分からないなあ…」


確か家系図にもその前は記されていなかった


「でも…何か事業とかもしてる人だったのかも知れないね。八神家は土地やらも貸付もしてるみたいだから家賃収入だけでも相当なんじゃ無いかな?」


「へえ!」


「お父さんの病院も…この家も僕やインの学費や…困ってる様子は無かったからね。お父さんは一応跡継ぎだから八神のお金は自由に使えたんじゃ無いかな?まあ僕と同じで物欲は無いから散財したり贅沢したりは無かったけどね」


「そっか…確かにこのお家や病院も立地場所は凄く良い所だよね…」


「そうだね、まあ高級住宅地だね。産婦人科病院だから騒がしい街中は避けて一戸建てやタワーマンションが多いこの場所にしたみたいだよ」


都心にも近く便利で緑も多い閑静な場所だった

主に周りにはお金持ちそうなセレブが居住している様で詳しくは知らないが有名人の出産などもお忍びで来てしたりもあるらしい


私が通ってる学校も近く、やはりお金持ちや権力者などに向けて設立されているのだろう


この土地だけでも相当な資産価値は有りそうだが…更に八神家の資産ともなると…


「まあお父さんからは僕に跡継ぎの指名はされてるけど…僕はそのままカイに家督は譲るつもりなんだよ」


「そっか…やっぱりマコトさんもそう言う欲は無いんだね」


「まあね…後は…僕にはやりたい仕事も理想の世界も有るからね。自由に…八神家の使命に囚われていたくは無いって言うのが本音かな」


「理想の世界…」


田所が以前私に聞いて来た…

私にはまだハッキリと自分の理想は見えていないが…

マコトはどんな理想が有るんだろう


「カイなら八神家の使命の事を大切に思ってるだろうから任せられるかな」


「そうだね…」


「でも…テルヒもやっぱり八神家の使命については大切に思ってるのかな?僕に八神家の事を聞いてくるって事は」


「うーん…八神家の使命自体についてと言うより…その事に囚われてる人に…かな?」


「囚われてる?」


「カイも…セイヤも…」


「セイヤも?」


「多分だけど…セイヤは八神の名前ではあるけど…八神家からは認められて無いって言うか…昔おばあちゃんの家にも入れて貰えなかったって聞いたし…」


「ああ…あったね…小さい頃…僕も一緒に行ったからね」


「あっ!そうか!確かそう言ってた」


「あれはね…ちょっとセイヤが思ってるのと違うかも知れないなあ」


「違う?」


「おばあちゃんはね、他の…八神以外の人間と殆ど関わって来なかったんだ。あの家からも殆ど出た事ないし…買い物とかも配達して貰ってるし役場なんかにも代理人に行って貰ったりね。専属の雇用弁護士もいるし…」


「そうなんだ…やっぱりお金持ちなんだなあ…」


「だからね、必要最低の他人しか知らないんだよ。後はほら…八神家の人間って皆同じ顔でしょ?」


「そうだね…私もお母さんもインくんもカイも…」


「僕は整形しちゃったし…セイヤはインよりマユさんに似てるから…」


「そっか…」


「だから…いきなり知らない人が来て…しかも唯一八神の顔をしたインが似てない子連れて来たからびっくりした…と言うより怖がったに近いかな?」


「成る程…」


「まあ僕は説明して…声が同じだったのと、お父さんにスマホでテレビ電話で説明もしてくれたから何とか分かって貰えたんだけどね。インとセイヤを待たせてる間に秘密基地に居てもらったんだけど、セイヤよりインがはしゃいで喜んでたよ」


「あはは、ベッドで飛び跳ねてたってやつだ!」


「そうそう、迎えに行って呆れたよ…小さいセイヤの方がちゃんと静かに待ってて…」


「やっぱりインくん面白いなあ。その光景目に浮かぶ」


「でも…おばあちゃんに見せて喜ばせて可愛がって貰おうと連れて行ったんだけど結局はセイヤを傷つける事になって悪い事したなあ…」


「まあ…仕方ないよね。マコトさんもおばあちゃんも悪気が有った訳じゃないし…でも…」


「?」


「やっぱりセイヤは…八神家からは認められてない、弾かれた人間だって思ってるんだろうなあ」


「そっか…」


「八神家の使命を託されてる…カイの事も好きじゃないし…私の事も…」


「テルヒの事も?」


「うん。根底には嫌悪感って言うか…そう言うのは感じるかな…」


「そうなの?でも毎月会って練習…セックスしてるんだよね?」


「うん…まあ私がお願いしてるから…セイヤは頼まれたら断れない人だしね。今やってる仕事とか」


「あ、モデルさんとか…映画にも出てたみたいだね。マユさんが言ってた」


「そう。本人は嫌々みたいだけど結局は断れないんだよね…」


「そっか…じゃあ優しくしてはくれない?」


「まあ…そうかも。カイに近いかなあ?」


「そうなんだ…」


「だから…カイが言ってたみたいな…セックスすると気持ちよくて幸せな気持ちになるって…確かに気持ちいいけど幸せな気持ちにはなった事は無いかなあって…」


「そっか…それは僕がカイに教えてあげた事なんだ…僕自身がそう思ったからね。カイはアンと初めてセックスした時に本当にそうだったって嬉しそうに報告してくれたんだけどなあ…」


「そうなんだ…私にはこの先にもそう言う風に思える事は無いのかもなあ…」


「そう思いたい?」


「まあ…そうだね…」


「じゃあ…教えてあげよっか?」


「ホント?」


「テルヒが知りたいなら」


マコトは真っ直ぐ私の目を見つめて尋ねて来た



「うん…知りたい…」





私はそう答えていた


次回は遂に…


と言う訳で後半に続く

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