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明宵  作者: 水嶋
黄昏時

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50/90

決意表明

「何か…色々凄いね…」


「じっくり見るな。ハイ終了!」


「ああん…もっと…お願い!」


「マユ、キモい声出すな」


俺はそう言って雑誌を閉じて取り上げた


あの忌々しい雑誌が遂に発売されてしまい今日は何故か照陽も麻由に呼ばれて本人の前で公開処刑…鑑賞会を繰り広げられていた


「全く別人だね…」


照陽は俺をまじまじと見ながらそう言った

昔から近くで見ていた照陽がそう思うなら多分他人…学校の奴らには気付かれないな


ある意味テスターとして役立っていた


「帰りに買って来よう!」


「買うな見るな手元に置くな。こんな猥褻図書に金を払うな。買うなら参考書でも買って行け」


次号予告が「彼氏彼女のSEXホンネ事情特集!」と来たもんだ

年齢制限の無い女性誌でこれはある意味エロ本よりエグい


「何か先生かおじいちゃんみたいな事言ってる」


「先生とおじいちゃんの間におじさんは居ないんだな」


「まあ確かにこれはちょっとエロいよね!あはは!私新たなカップリング妄想しちゃったもん!我が子ながら良い仕事した!」


「こらマユ、仮にも親なら怒れ。喜ぶな」


「でも…いやらしいってより綺麗だよセイヤ!」


「それは男が言われて嬉しい言葉じゃない…」


「そうなんだ…じゃあ普通は何て言われたら喜ぶのかな?」


「まあ…そうだな…きゃー!イケメン♡とか抱いてー♡とか子宮がキュンキュンしちゃうー♡とか目が合うと妊娠しちゃうー♡とかじゃないか?」


「そうなんだ…」


「テルヒ…コイツ揶揄ってるだけだから真に受けちゃダメよ…」


「そうなの!?」


「そうだぞ」


「こら、セイヤ!」


「むう!」


「だからそれやめてくれ…」


「あはは、テルヒそれインの口癖じゃん!似てる!」


「良かったな、1番近くで聞いてる人間からお墨付きが貰えたぞ」


「やったあ!」


「喜ぶな…一応言っておくがこれは嫌味だ…」


「相変わらず可愛くない子だね…」


「綺麗らしいからいいんじゃないか?」


「メイクの力でしょうが。所詮は偽物よ」


「そっか、メイク…凄いね!」


「私もプロの仕事を間近で見て感服したわ。今度教えてあげるから」


「わあ!嬉しい!」


「テルヒにはまだ早いんじゃ無いか?」


「お前はテルヒの父親か…」


「多分おじいちゃん?まあお父さんも言いそうだけど…」


「らしいぞ。父親枠には入れないらしい」


「まあ杉田はこんな捻くれてはないからな。アンタはいじわる頑固ジジイだな」


「はいはい、もうそれで良いよ」


「そうそう!これ見る!?」


「えっ!?何何!?」


そう言って麻由はタブレットを持って来て撮影されたAラッシュのMVを再生した


「わあ!凄い!セイヤメイクしてない!」


「まあ一応ドーランは塗ってるが…あんなイカれた顔にはされてないな」


「これ、本当に弾いてるの?」


追加で撮影されたピアノ演奏のシーンが流れた


「ああ、音源は録音されたの流してるが撮影では実際弾いてたぞ?」


「へえ!やっぱり凄い!」


「元々はピアノ使ってない曲だったんだけどね、セイヤの演奏聴いて八性が編曲し直してこのバージョンでシングル曲にしたんだよ!」


「へえ!凄い!確かに映画の時と違うね!」


そう、あの時…


皆の前で演奏した時、八性はてっきり所詮アマチュア演奏だと思っていたのかと思ったのだが…


何だかお気に召した様で後日連絡が来て急遽呼ばれて音楽スタジオで俺が改めてピアノを弾いた演奏を収録して編曲し直した様だった


「でも、この曲はやっぱりピアノの方が合ってるね!前より良くなったと思う!」


「そうね、まあ本心を言えば私が演奏したかったけど息子に譲ったわ」


「マユじゃ話題性に欠けるでしょ。出演した俺が弾くから付加価値が上がるんだから。この場合は上手さどうこうよりも誰が弾いてるかでしょうが」


そう、この為にまた俺は変装する羽目になったのだ

証拠として演奏してる所も撮影してたので多分宣伝に使ったのだろう

私服に見せかけた衣装まで用意されていてこれはもう演奏と言うより役者の仕事だろう


まあ大人の事情と言うか売るための話題作りに駆り出された形だが、俺はただ面倒この上無いだけだった





○○○○○○○○○○





あの雑誌が発売されてから…


「重版決定だよ!凄い話題になってるよ!」


勝手に所属された会社に呼ばれて会社の人に報告されていた


「そうですか、やはりあの映画とエルの人気は凄いですね」


「まあそれもあるんだけどね!やっぱりユヅが話題になっててさ!ウチでも本腰入れて売り出そうってなっててね!」


「勘弁して下さいよ…俺前にも言いましたけどテレビや映画には出ませんよ?学校にも話してないし…一応大学まで行くつもりなんで学業最優先でこっちの仕事は二の次ですよ?」


一応この仕事はこの先やる気は無い所を改めてアピールしておいた


「残念だなあ…話題になってる今が売り出すチャンスなのになあ…」


「まあ仕方ないですよね。そう言うのは真剣に目指して頑張ってる人に譲って下さい」


「この世界はね、努力が報われる世界じゃ無いんだよ?」


「へえ…それは悲しいですね…」


「あと、幾ら才能が有って見た目が整っていても成功するとは限らない」


「そりゃ厳しいですね…」


まあそんなものだろう。役者やらアイドルやら芸人やら…目指してる人はどれだけいる事か

そして頑張っても報われず陽の目を見ない人も同じくどれだけいる事か…


「そうなんだよ。運…チャンスを引き寄せて掴める…そう言う選ばれた人間…全てを兼ね備えたほんの一握りの人が成功する世界なんだよ?」


選ばれた人間…


まるで篩にかけている八神家みたいだな…

照陽や櫂が生まれるまでどれだけの人間が踏み台として…俺みたいな失格者として消えて行ったんだろう…


まあ俺は名前も戸籍も有って外の世界で生活してる分まだマシな方なのかも知れないが


あの地下施設から一生外に出られず中には臓器のドナーとして出荷された者もいると韻から聞いていた

韻の子供も昔1人そうやって外の世界へ行ったらしい


まあ芸能界も似た様なものだろう


選ばれなかった人間の末路は…

ロクなものじゃ無いだろう


そう思うと全てが下らないと思えた


俺はそんな道には進まない


八神家とも芸能界とも関係無い平凡で平穏な生活を送る


改めて強く揺るがない決意表明を発表していた。頭の中で


記者会見の会場でパシャパシャとフラッシュが光っている光景が見えている様だった。頭の中で



「じゃあさ、取り敢えず写真撮影の仕事なら良いよね?喋らないし!」


「えっ?まあ…」






「じゃあユヅ!こっちに目線頂戴!」


パシャ…


「次はちょっと挑発する感じに見て!」


パシャ…


「じゃあ舌出してバカにする感じで笑って!」


パシャ…


「最後に可愛い顔頂戴!」


パシャ…



「ハイ、お疲れ様でしたー!」



俺はカメラマンに言われるままに撮影されていた


うん、光ってるな、フラッシュが



なんだかまたまたいつもの様に俺の知る由もなく勝手に話が進んで決まってしまった





やはり俺は押しに弱い人間だ…


遂に雑誌や撮影したMVも公開されましたが…


どんどん星夜の望む方の逆に行ってしまう様ですね

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