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明宵  作者: 水嶋
黄昏時

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共存と受容

引き続き田所との会話となります

話が一区切りして私は少し冷めて緩くなったココアに口をつけていた


お父さんが私の事を心配してくれる時に出してくれる…

無意識に注文していたが、やはり単独で田所に会う事に気を張っていて不安だったのだろう


ココアを飲むと近くにお父さんが居て守ってくれてる様な…気持ちが落ち着いて来る


田所はコーヒーにミルクを入れた物を飲んでいた

何だか星夜みたいだな…

そう思うと不気味だと思ってた人に少し親近を覚えて来ていた



「テルヒちゃんは櫂くんと恋人みたいな関係になりたいのかな?」


「うーん…それは…無いかな」


「そっか、じゃあ星夜くんの事が好きなの?」


「うーん…それも違うと思う…」


「そうなんだ」


「私は…分からないんです。誰かを本当に好きって気持ちが…」


「成る程ね、無邪気で純粋で自分に正直でそして…そう言う所もやっぱり似てるね…」


「誰にですか?」


やっぱりお母さんにだろうか?

お母さんには見た目はそっくりだと皆に言われているが、私はお母さんみたいに…

本当に誰かを好きになる気持ちは分からなかった


「マコト先生に」


「えっ?」


「マコト先生もね、おんなじ事言ってたんだよ?」


「そうなんですか?」


「自分には分からないから…子供達にはそう言う人を見つけて欲しいって言ってたんだよ?」


「そうなんだ…それでお母さんやインくんに…八神家の使命に囚われずにって…」


「そうだね…八神家の使命に…テルヒちゃんはそれに支配されてるのかな?」


「支配?」


「星夜くんは…その考え方に支配されて…どうにもならない自分の置かれた状況は諦めていると言っていたよ?」


「そうなんだ…」


星夜は自分は八神家には我関せずの人…と思っていたが…

自分は部外者だと言っていたその裏にはそう言う思いがあったのだろうか


「テルヒちゃんも同じ様に八神家の考え方に支配されていると思っているのかな?」


「私は…八神家の使命や考え方についてはそれ程囚われてはないと思います」


「そうなんだね。やっぱり濾過された側の…浄化された遺伝子を持つ人間だからかな?」


「どうなんでしょう…私自身は自分が優れた人間とは思って無いですが…ピアノにしろ星夜の方が格段に上手いし知識量も口でも星夜に敵わないですが…」


「マコト先生は姉の御月に執着されて束縛され支配されていた。アンちゃんはマコト先生に執着して愛する人の子供を作る事や八神家の使命を全うするという考えに支配されていたね。僕は父親と母親に精神的に虐待されて支配されていたよ」


「そうなんですね…」


成る程、田所は両親から精神的虐待を受けていたのか


「テルヒちゃんは…誰か、何かに支配されてるのかな?」


「強いて言えば…上手くやらなければと緊張するカイや…いつも遅れを取らない様に必死に後ろを追いかけてるセイヤや…期待に応えなきゃと思うお母さんや…お母さんの事が好きなのに本当の事を知らない可哀想なお父さんの事や…私の事を慕ってくれている友達、シズカの事やシズカの事が好きなダイチの取り巻く状況の事や…色々…」


「ははは、沢山支配されているね」


「そうですね…色々考える事が多いです」


「でもね、支配される者は支配もしないとね?」


「支配する?」


「そう、支配と従属。僕が学生の頃に出会った人に言われてね。この教えに僕は救われたんだよ?」


「支配と従属…」


「一方通行じゃダメなんだよ。支配する側も支配されるし、逆もまた然り。お互い信頼関係が無いと成り立たないんだよ」


「支配する側も支配される…」


「テルヒちゃんは…その人達と信頼関係を築くため…支配したいのかな?」


「私は…そう言うのとは違って…相手を支配したいんじゃ無くて…」


「へえ?」


「丸ごと包み込みたいって言うのかな…親…皆のお母さんみたいに…」


そう、私の夢…

そんなお母さんになりたい


「ほう…」


「皆の思い…願いを聞いて…寄り添って見守って…出来るなら願いを叶えてあげて皆が優しい気持ちになれる世界にしてあげたい」


「成る程ね…共存と受容…それはまた今までの登場人物とは違う新しい答えだね」


「登場人物?」


「やっぱり八神家の物語は面白いね。僕みたいな凡人には予想がつかない展開を見せてくれるね」


「はあ…」


「テルヒちゃんはやっぱり八神の…神の子は神…なのかな?」


「神?」


「特定の開祖や明確な教義体系を持つ様な特定の唯一神では無くて…太陽、月、風、山、海といった自然現象や自然物の様な…多神教的で自然との共生を重んじる日本における神の概念に近い存在なのかも知れないね」


「うーん…よく分かりません…」


話が壮大すぎてついていけなかった

星夜となら会話が成立したのかも知れないなとぼんやり思っていた


「そのテルヒちゃんの理想の世界を叶える為に力が必要な時には微力ながら力を貸すよ」


「そうですか…」


理想の世界…

そんな大それた事を言ったつもりは無いのだが




「それじゃあ、そろそろ…今日はお時間を作って頂き有難うございました」


「テルヒちゃんと話せて楽しかったよ。またいつか…ね」


そう言って田所と別れた


余り遅くなると心配されるだろうからこの辺りで切り上げた



結局田所とお母さんの関係について分かった様な分からない様な…


今日田所と会った事は櫂や星夜、お母さんにはいらぬ心配をかけない為に言わないでおこうと思った


まあ、危ない目にも遭わなかったし新たな事実の発覚や大した内容は無かったかなと言うのもある


大地に櫂の事を言ってしまった時の様に今回もつい田所に話してしまった事を後になって少し後悔もしていた


櫂との今の関係もお母さんが知ると落胆されるか心配されるだろう

田所はお母さんには伝えないと言った言葉を信じるしか無いが…



しかし、櫂については田所が指摘した内容は少し腑に落ちた


甘えている…


そう考えると今まで年上で緊張して最近は怖い相手だと思っていたのが何だか気持ちが軽くなった様な気がしていた


甘えているから大好きなお母さんには見せられない姿を私に見せているんだ…



櫂の望みは何だろう…




そんな事を考えながら家に帰った


照陽もやはり田所についてはよく分からないと結論に至ったようです


田所は星夜に引き続きまた満を持して持ち出した話が予想の斜め上に行ってしまった様ですね


この先平和主義の照陽は田所を頼る事はあるのかな?


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