星夜の心配事
「うっ…うぅっ…」
「仕方ないよ…元気出しな…」
今日は梅雨時にも関わらず晴天だった
そして運動会だった
そんな晴れの日に物置の影でまるでお通夜の様な空気を醸し出していた
とりあえず面倒なのでそのまま見なかった事にして立ち去ろうとしたのだが…
「あれっ!?シズカ、どうしたの!?」
隣を歩いていた大地が独り言のレベルでない声量で声を掛けた
2人がこちらを向いたので仕方なく俺も2人の方を向いた
「リレーでね…」
静風の隣で声を掛けていた照陽が答えた
静風の膝には大きめのガーゼが貼り付けて有った
この状況から大体察しろよ…
ここはそっと見て見ぬ振りをして立ち去る場面だ
とも思ったが、空気ぶった斬りの辻斬り大地侍は大仰に驚いていた
「大丈夫か!?シズカ」
「うん…」
「まあ、膝の怪我は数日経てば治るだろうけどね…」
照陽も出ていた女子のリレーで、アンカーだった静風はカーブで滑って転んでしまった
それまで一位だったがそこで最下位となってしまっていた
俺はたまたま見ていたが大地は丁度トイレに行っていて知らなかったみたいだ
グラウンドは先日の雨で滑りやすくなっていた様で、まあ仕方ない事だろう
大した怪我にならなかった事を逆に喜ぶべきだと思ったが…
「一位に…なりたかった…」
やっと喋ったと思ったら恨み言だった
「痛いか?」
大地はこの年頃の男子にしては出来た男でジェントルマンに優しく聞いていた
「ううん…大丈夫…」
静風は多分痛いだろうが謎の強がり発言をしていた
反抗期なんだろうか?
「シズカはね…一緒に一位になろうねって放課後一生懸命練習してたんだよ」
何故か照陽が俺を睨みながら答えた
そんな下らない事で泣いて…と思った事が顔に出てただろうか…
少々気まずい雰囲気だったので奥の手を使う事にした
「ほら、これやるから元気だせ」
そう言ってポケットから包みを静風に渡した
「今日は…ブルーベリーだな。ちょっとレアだ。目に良いぞ」
「有難う…」
「シュガーレスで虫歯にも気を遣わなくっていいぞ」
「セイヤ普段そんな物持ち歩いてんの?」
照陽が少し呆れた顔をしていた
「飴ちゃんは便利だぞ。何か有った時に使えるからな」
「何かって何よ」
「まあ例えば何か失敗した時とかお礼や謝罪の時に添えたり、インが無駄口ほざき出した時に口に入れると暫く黙るし…」
「セイヤんとこは既に親子逆転してるよね…」
「あはは、有難うセイヤ…前に貰った時は梅味だった」
「渋いね」
「甘酸っぱくて美味いだろ?塩味もあるし癖になる胸キュン味だろ?多分」
「私も欲しい、頂戴!」
「俺も欲しい!」
「お前らは何か失敗して落ち込んだり俺に借りが有るのか?」
「無い」
「無い」
「じゃあやれんな。俺の飴ちゃんは安く無いからな。一昨日きやがれ」
「むう!」
「ぬう!」
「テルヒ、それインが乗り移ってて何か怖いからやめてくれ…ダイチも飴ちゃん位で騒ぐな…同レベルに落ちてるぞ…」
「あはは、2人とも何でセイヤに怒ってるの」
まあ飴位あげても良かったがあと1つしか持ち合わせて無かったから気まずくならない様に与えなかったが…
俺が少々気まずい立場に追いやられた
何とかその場を立ち去って大地と話しながら歩いていた
「シズカは負けず嫌いだからなあ…」
「へえ、よく知ってるの?」
「まあ、昔保育園が一緒だったからその頃はな」
「そうなんだ」
「母さんも仕事してるし…夕方まで預かってくれる保育園に行ってた」
「へえ」
大地は父親が有名人だし私立の幼稚園にでも行ってたのかと思ったが母親が一般人だからきっと普通の感覚を身につけさせる為とかの理由で保育園に通ってたんだな…
「まあ小学校に入ってからはあんまり喋ったり遊んだりしなくなったけどな」
「そうなんだ。まあ性別も違うし交友関係も変わってくるからそんなもんじゃない?」
「まあな…セイヤはテルヒといとこなんだよな?」
「そうだよ。うちの父親とテルヒの母親がきょうだいだからね」
「でも…あんまり似てないよな?見た目もだけど性格とかも…」
「まあ親同士も見た目は似てるけど性格は水と油ってのかな…とにかくうちの父親、インは色々ヤバい。テルヒの母親も一見常識人に見えるけどヤバい…」
「あはは、何か面白い家系だな」
「どうだろ?当事者からしたら親ガチャ失敗してると思ってるけど…」
「でもお前みたいな子に育ってやっぱり面白いな」
「俺面白いかな?」
「うん、俺の親の事知っても普通に接してくれるし。ありがたいって思ってる」
「そっか」
まあ俺が芸能人全般に然程興味も無いのが理由だが…
何か勘違いして感謝されてるからいちいち反論せずにそのままにしておこう
照陽に言われた『はい、そうですか』精神で
「テルヒって…やっぱりセイヤに似てないよな…」
「まあなあ…俺はあんな運動会で一生懸命練習したり熱くなったりしないしお節介でも無いしな」
「あはは、まあセイヤはそうだけど…テルヒはあの負けず嫌いのシズカが心を許してる、大きくて頼り甲斐が有って優しいんだな」
「まあ俺は優しくは無いですよ。飴ちゃん出し惜しみする様な小さい男だし」
「ゴメンゴメン、そんなつもりで言ったんじゃないんだけど…一時期シズカ孤立してたから…テルヒみたいな子が側にいてくれて良かったなって。幼馴染として心配してたから…」
「へえ…そうなんだ」
「テルヒは…真面目だし素直だし一生懸命だし…俺と一緒に飴を欲しがったりして可愛いよな」
「うーん、昔から近くに居て良く知ってるから逆に良さがイマイチ分からない…」
「あはは、そっか、きょうだいみたいな感じかな?」
「まあ、そうかもね」
「今度…俺とお前とテルヒとシズカでどっか遊びに行かない?」
「えー」
「運動会も終わったしさ!もっと仲良くなりたいし、今度の連休とか…お前テルヒに声かけてよ」
「何か面倒…3人で行けば?」
「俺テルヒとそんな面識無いしさ、3人は何かバランス悪いし俺まだそんなに話した事無いし…お前いとこなんだから声かけてよ」
「まあ…一応声掛けるくらいなら…」
「じゃあ宜しくな!」
「はいはい…」
なんだか貰い事故の様な…
何故あの時あの場面に遭遇してしまったのか悔やまれる
とてつもなく面倒な事になってしまった
照陽と遊ぶと杏が怖いんだよなあ…
しかし大地は照陽の事を気にしていたがもしかして好きなんだろうか?
しかし照陽と2人きりで会わせるのも先々危険かも知れない…
俺は大地の命の心配をしていた
こちらもほんのり恋心か?
大地は少し奥手の様ですね
貰い事故の星夜は大地を心配しています
星夜の中で杏はどんな人物像なんだろう?




