お察し
「一位おめでとう!」
「まあ、当然よね!転びさえしなければ!」
「あはは、そうだね」
今年の運動会でも静風はリレーの選手に選ばれてアンカーを務めていた
私も一応リレーに出ていたが今年もやはりアンカーでは無かった
今年は静風は見事念願の一位を獲得したのだが…
「でも…何かそれ程嬉しそうじゃないね?」
「そりゃ一位は嬉しいけど…やっぱりテルヒと一位を取りたかった!」
「まあクラスも違うし仕方ないよね。またいつか機会が有るんじゃない?中学も高校も一緒なんだし」
「そうだよね!ずっと一緒だもんね!」
「そうだよ、高校卒業まで一緒なんだから」
「ずっと友達だもんね!」
「そうだよ、ずっと友達だよ?」
何だか…念を押されてるような…
何に不安になってるんだろう?
私が静風と友達じゃなくなる心配をしてるのだろうか?
それとも…
私と大地が仲良くしてる事に不安になってるのだろうか?
他の子みたいに何か誤解してるのかも知れない
恐らく静風と大地は両思いなんだから何も心配する必要は無いのだが
いっそこの場で教えてあげようかとも思ったけど、確か静風には理想のシチュエーションがあったなと思い出していた
告白して、お互いの思いが通じたと確認してからのハグされて頭を撫でられながらファーストキスをする…
だったか。
まあそう遠くない未来だろうが、その前に私が教えてしまっては台無しになりそうだから黙っている事にした
ファーストキスに事前練習は無い
告白に事前情報は要らない
そう言う事だろうな
「テルヒは夏休みどうするの?」
「私は…夏休みはおばあちゃんの家に行くよ?」
「そうなんだ!いいなあ、楽しみだね!」
「うん、そうだね」
夏休み…
今年はいよいよ櫂と…か
最近は櫂についてや八神家の事について色々考えていると素直に楽しみとは思えなくなって来ていた
「何か…あんまり嬉しそうじゃないね?」
「えっ!?そうかな?そんな事無いよ?楽しみにしてるし…」
「そっか、何か元気無い様に見えたから…」
「あー、多分アレかな?今生理中でちょっとお腹痛くて」
「そうなんだ、大変だね」
「まあね」
一応嘘では無いがお腹は特にそれ程痛くは無かった
恐らく飲んでいるピルのおかげかも知れない
ちゃんと定期的に来るし重い生理痛も無く予定なども立てやすかった
そう言えば静風は生理は来たのだろうか?
特に報告が無いので恐らくまだなのだろう
本人も気にしていたし何故かその事で私と競ってるような、まだ来てない事に不安がっている様な気もしたので敢えて私からは聞かないでいた
「シズカは夏休みどっかに行くの?」
「うん!家族でキャンプに行くんだよ!」
「へえ!いいなあ楽しそう!」
「最初は海に行こうかって言ってたんだけどね、丁度その日に生理とか始まっちゃったらお流れになっちゃうじゃん?私まだ来てないからいつ始まるか分からないし」
「あー、成る程ね」
此方が聞く前に申告して来た
「お父さんとテント張るんだあ!」
「へえ!お父さん確か看護師だっけ?」
「そうだよ?普段から患者さんの手助けとかしてるから力持ちなんだよ?」
「そっか、優しくて頼りになるお父さんだね!」
「うん、そうだよ!多分私の運動能力はお父さん譲りかな。お父さんスポーツも出来るし」
「そっか、そうなんだね」
「テルヒも前に参観日で見たけどお父さん鍛えてる感じだし昔柔道とかしてたんでしょ?テルヒもお父さん譲りだね!」
「うん、そうだね、多分そうだね」
私は…
お父さんの血は受け継いで無いのに…
でもまた静風に変に心配されない様に顔に出さない様明るく答えた
去年は運動会が終わった後の連休に4人で家に集まって勉強会をしたが、今年はゴールデンウィークにしたので集まる話にはならなかった
○○○○○○○○○○
「中学生になったらレッスンはどうする?」
運動会が終わり、その間休んでいた定期的に習いに来ている麻由のピアノ教室を再開してレッスンを受けていた
「そうだなあ…多分勉強で忙しくなるだろうから…」
「そうね。一応卒業生だから知ってるけど宿題もえげつない量が出されるわよ?」
「そうなんだ…一応進学校だもんね」
「じゃあ中学生になったら終了ね」
「そうだね…でもたまに習いに来ても良い?」
「ええ、構わないわよ。カイもそんな感じだし」
「そっか、確かそんな事言ってたなあ」
麻由も櫂の事は知っていた
そして八神家の使命についても…
私と櫂が今年夏休みにあの秘密基地に行く事も知っているのだろうか?
秘密基地で何を習って何をしているか…
知ってるのだろうか?
麻由は八神の人間では無いが、大体の事は知っていてそれでも韻くんと結婚したらしいと星夜が言っていた
星夜は見下している感じがするが、私は凄い人だなあと尊敬していた
私が麻由の立場なら…
恐らく逃げ出していたかも知れない
生まれてくる子を篩にかけて弾かれた子は戸籍も与えられず地下施設に送られる
麻由にはその責務はないが八神の浄化された遺伝子を引き継いだ子が出来るまでそれは繰り返される
私はそれでも構わないと思っているが、普通の人にはキツい内容だろう
静風などと話してる内に世間一般の考え方を理解して来ていた
それ程韻くんの事が本当に好きだったんだろう
櫂は自由に好きな人と結婚した韻くんを羨ましがっていた
私は人の事をそこまで好きな気持ちになれる麻由が羨ましかった
そして私にはそう言う本当に好きという気持ちが分からなかった
「あ、おかえり」
「ただいま。来てたんだ」
星夜が帰って来て声をかけた
「今日はレッスン再開したからね。まあ長年習っても大して上達してないけど」
「無駄だと分かってて続ける強い意志には敬意を払ってるぞ?」
「相変わらず可愛げが無いわねえ…」
麻由は呆れていた
「それ散々色んな人に言われて来てるからもう敢えて言葉にして口に出さなくて良いから」
「本当相変わらずだわ…」
私も麻由に同情した
「あっ!そう言えばこれ何?」
ピアノの上に人の姿のぬいぐるみが2体並べて飾ってあった
「それは今をときめくAラッシュの推しヌイよ」
「Aラッシュ?」
「前にライブに行ってすっかりハマってこんなグッズまで手に入れて後生大事に飾ってるんだよ」
「へえ?ライブって事はミュージシャン?」
「まあそうだな。一応今流行りらしいぞ?」
「やっぱりテルヒも八神の人間ね。世間や流行りに疎くて興味無いのね」
「マユもライブ行くまで知らなかった癖に偉そうに…」
「私はもう八神の一員になってしまったんだから仕方ないでしょ。毒されてるのよ」
「はいはい、元々そう言う所はインに似てるからな」
「私はあんなモンスターじゃないわよ?ライブから帰って来た後そりゃ大変だったんだから。足腰が…」
「あ、そうだ、テルヒに話があるんだった」
「えっ?何?」
「ちょっと部屋まで来て」
「うん、分かった」
そう言って麻由さんの話を遮る様に星夜の部屋へ連れて行かれた
足腰…
ライブではしゃぎ過ぎたんだろうか?
ライブが終わった後やはり麻由は大変だったみたいですね




