俺がアイツでアイツが俺で
前話の続きとなります
ある程度田所という男について分かった
杏や韻はマコトの事件をきっかけに繋がりを持ったのかも知れない
韻は田所を恨んで、杏は田所を利用した…と言った所だろうか?
杏との繋がりについても、恐らく違法な薬物関連ではないかと推測した
マコトとの子供を作る為に…
丁度タイミング良く杏が研修を終えて産婦人科医となった時に云足が事故を起こし、その後入れ替わる様に院長に収まった事もこれで大体察しがついた
今だに繋がりがある所をみるに何か他にもやらかそうとしているのだろうか?
やはり杏は恐ろしい女だ
話が一区切りして俺は少し冷めて緩くなったコーヒーに口をつけていた
田所もコーヒーにミルクを入れた物を飲んでいた
「星夜くんは…誰か、何かに支配されてるのかな?」
「支配?」
「マコト先生は御月に執着されて束縛され支配されていた。アンちゃんはマコト先生に執着して愛する人の子供を作る事や八神家の使命を全うするという考えに支配されていたね。僕は父親と母親に精神的に虐待されて支配されていたよ」
「そうなんですね…」
成る程、田所は両親から精神的虐待を受けていたのか
有る意味俺もイかれた両親から精神的虐待を…
いや、韻に至っては幼少期から弄り倒して来やがって性的虐待だな
本人に悪気も罪の意識も無く、勉強だの良い事をしてるだのと思ってる所が厄介だ
訴えたら100%勝てる自信は有るぞ
まあ面倒だから放置してるが
これも周りの八神の人間が昔から普通に受け入れて来ていた伝統…八神イズムに毒されているからだろうか?
そして俺も争い事や面倒事は極力避けたい我関せずの八神イズムをしっかり継承している自覚は有った
「星夜くんにはそうそう支配されている存在は居ないのかな?」
「俺は…どうなんだろうなあ。強いて言えば八神家の考え方…とかなんだろうかな?」
「へえ…星夜くんもそうなの?」
「他の八神家の人間達とは少し意味合いが違うのかも知れないですね。まあインも同じだろうけど、結局は生まれた時から存在が認められて無い者と言う最初からどうにもならない事への諦め…みたいな物なんだろうかな?」
「そうなんだね、諦め…ね。その八神家の考えや思想に対する無力感に支配されてるんだね」
「強いて言えばそうそう事位かなあと。特定の対人と言うよりも全体的な思想や事柄…なのかな」
「成る程ね。でもね、支配される者は支配もしないとね?」
「支配する?」
「そう、支配と従属。僕が学生の頃に出会った人に言われてね。この教えに僕は救われたんだよ?」
「ドミネーション&サブミッション…DS、支配と従属ですか」
「よく知ってるね?」
「まあ、無駄に色々読み漁って知識だけはついてますからね」
「そうなんだね。星夜くんはどう思う?」
「まあ…言っちゃえば当然と言うか、現にそれで社会は回ってるんじゃないですか?」
「へえ…」
「雇用主と従業員、生産者と消費者、国政者と市民…お互い支配し支配されている関係でしょう?一方通行では成り立たない」
「そうだね」
「意識的にも無意識的にも自然とDS関係になってるんですよ。今更それをドヤ顔で勧められても…」
「中々恐れ入ったね。星夜くんは賢くて冷静、八神家の純粋な人間よりも優れてるのかな?」
「それはどうなんでしょうね?一般的には人間の交配は血縁関係が遠いほど、同じ疾患の保因者である可能性は低くなり遺伝的多様性を高めると言われてますからね」
「そうだね。遺伝子が遠い存在に惹かれるとも言われているね」
「田所さんもそうなんですか?」
「僕は生きた人間には惹かれないから遺伝子が遠いも近いも関係無いけどね」
「そうですか…」
大体この言葉で田所の性癖をお察しした
「星夜くんはどんな人に惹かれるのかな?」
「まあ、俺は今の所は誰か特定の人とか好みとかそう言うのは無いですね」
「そうなんだね。知識も豊富だから色々理想が有るのかな?」
「俺は空っぽなんですよ」
「空っぽ?」
「そう。だから他人の知識を入れて埋めようとしてるんだと思いますよ」
「へえ。そうなんだね」
「田所さんと同じですよ」
「僕と?」
「そう。空っぽだから他人の物語を読み漁ってるあなたと同じ…ね」
「そうかも知れないね」
「だから、俺はあなたであなたは俺ですね」
「成る程ね。案外僕と星夜くんは似た者同士なのかな?」
「まあ俺は殺人なんてしませんがね」
「ははは」
明確に否定しなかった…
「歴代八神家の人間は医者が多いみたいだね?」
「そうですね。人の気持ちを察したり理解する能力が乏しい分、何か人の為になる真似事がしたくなるんでしょうかね?」
「中々手厳しい意見だね」
「まあ部外者の俺から見た客観的な意見ですね」
「成る程ね、でもまあ、医者になるにはそれなりに頭も良くないとじゃないかな?やっぱり八神の濾過された遺伝子は頭脳が優秀なんだろうかね?」
「それを言ったらインは濾過されなかった側ですが一応医師免許まで取りましたよ?まあ勉強以外は全てがポンコツですが」
「勉強と仕事の出来る能力は別だからね。良い大学を出ていても仕事が出来なくて対人関係が下手な人も多いし、逆もまた然りだね」
「多分勉強って大半が記憶能力が高ければ出来るんじゃないですか?応用力はそこまで必要じゃない気もしますね。テストや入試なんて過去問題をひたすら解いてパターン覚えておけば大概点数取れるんじゃないですか?」
「まあ、それが簡単に出来ないから皆苦労してるんだろうけどね。医者になるには膨大な知識を記憶する必要があるしね」
「確かに。結論は八神の遺伝子は記憶力に特化してるんでしょうね。感情捨てて記憶力に全振りした極ステって所ですかね」
「ふむ…」
「しかしこれは諸刃の剣でしょうね。結局ステータス特化型は致命的な弱点もあるでしょう?多分的確な攻撃を加えれば一撃で倒されそうですね」
「そうかも知れないね」
「所詮は浄化された遺伝子なんてその程度で頭打ちじゃないですか?後はせいぜい病気になりにくいとか、人より頭が良いとか、身体能力が人より優れているとか…所詮は人間ですから。超能力を使えるとか空を飛べるとか…そんな超人は生まれないでしょう?」
「そうだね」
「そう言った点はこの先の機械や科学技術の進歩や医療の発展等で補えると思いませんか?わざわざリスクを犯したり弾かれた犠牲者を出さなくてもその内、未来には誰にでも手に入れる事が出来る気がしますね」
「ははは!」
「何か可笑しかったですか?」
「いや、失礼…以前全く同じ事をマコト先生に言ったのを思い出してつい…ね」
「はあ…そうですか」
「やはり君の指摘した通りだね」
いきなり笑い出して驚いたが、持論を述べるのを続けた
「しかしまあ、所詮人間の能力値の最大数は限られてると思いますよ?其々に平等に天井値はあるでしょう。それを全てのステータスで天井を超えた数値は出せないでしょうね。何かを突き抜けて上げる為には何かを捨てる。恐らく八神の遺伝子は感情を無駄だと判断して捨ててるんじゃないですかね」
「成る程ね、面白い考察だね。記憶力に特化か…これも八神…神の選択なのかな?」
「神?」
「まるで宇宙の図書館だね」
「アカシックレコードですか?」
「全ての事象が蓄積されている情報の保管庫…この世に生まれてきた人間の感情や記憶、出来事、人間以外のあらゆる生命体の情報が全て蓄積すると言われている…そう言った役割を担おうとしてるのかな?」
「なんだか話が壮大ですね」
「記憶力の特化…そして星夜くんの知識欲…星夜くんは知識を呼び込み八神家へ導く…八神家の道先案内なのかも知れないね」
「俺はコンサルなんて胡散臭い商売をする気はないですよ」
「ははは、ビジネスの世界だとそうなるのかな。まあ名前に因んで星で言ったらカノープス…かな?」
「南極老人星ですか…確かに俺はオッサンだの人生2周目だの言われてますがね…」
「確かに、星夜くんと話してると小学生と話してるという事を忘れてしまうね」
「やっぱり田所さんもそう言う結論ですか…まあ俺は子供らしい可愛げも無い奴だと自覚してますよ」
「いやいや、褒めてるんだよ?星夜くんは子供らしくなりたいのかな?」
「それは無いですが、今更無理でしょ。事故にでもあって記憶喪失にでもならない限り」
「ははは、そりゃ大変だ。生死を彷徨う賭けに出ないとならなくなるね」
「やめて下さいよ。田所さんが言うと冗談に聞こえませんよ」
「でもね、案外簡単な事かも知れないよ?」
「簡単?」
「そう、後先は何も考えず…馬鹿になれってね」
「そうですか…」
以前キララに言われた同じ事を田所に言われた
皆そんなに俺に馬鹿になって欲しいのだろうか?
「それじゃあ、そろそろ…今日はお時間を作って頂き有難うございました」
「星夜くんと話せて楽しかったよ。またいつか…ね」
俺は油断しない様に気をつけていたからかなり疲れたが
「はあ…そうですか」
そう言って田所と別れた
結局田所について分かった様な分からない様な…
あんまり長く話していると何も告げずに家を出て来たので何か詮索されると面倒だとこの辺りで切り上げた
それも有るが…
このまま話し続けてるとあの男に…
あの男の思想に…
真っ暗な闇の中に引きずり込まれそうな危機感があった
やっぱり田所は妖怪なんだろう
田所とヒリつく会話を繰り広げていましたが…
あの田所も星夜に論破されていましたかね?
ドヤ顔…してたのね
そして星夜と田所は色々考え方も味の好みも似ている様ですね




