忘れた頃に
最近の出来事にすっかり忘れていたあの人が出てきます
「今日はこれからお出かけするわよ」
「何処に…」
「カフェに」
「何しに…」
「会談よ」
「怪談?季節間違えてない?」
「アンタ…わざと言ってるでしょ」
そろそろ秋も終わる寒くなって来た時期に学校から帰って来たばかりの俺を麻由が連れ出した
「何しに行くの…」
「会談よ」
麻由は同じ答えを2度言いやがった
「具体的に何の会談なのよ…」
「とりあえず現場で説明するわ」
何だろう
胡散臭い…
「どうもお待たせしました」
「いえいえ、私も先程来たばかりですので…」
「あっ…お久しぶりです…」
「やあ、セイヤくん」
待ち合わせのカフェに以前ライブで声をかけられた北野が居た
「また会える機会が有って嬉しいよ」
「はあ…」
それはお前がこの席を設けたからだろう…
と言うツッコミは入れなかった
「まあ、座って。何飲む?」
「あっ、私買ってきます」
「いやいや、私がお願いして来て貰ったんだから」
「じゃあ…すみません、私はカフェラテで…」
「セイヤくんは?」
「はあ…じゃあ俺はコーヒーで」
「了解、やっぱりセイヤくんは大人びてるね」
「そうですか…」
そう言って北野は飲み物を買いに行った
因みに北野の席にはホイップがこんもり乗った糖尿になりそうな飲み物が既に置いてあった
若作りはしているが恐らくいい歳をした初老のオッサンなんだから気をつけた方が良いと思うが…
やはりプロデューサーなんて胡散臭い仕事してると周りの芸能人等に囲まれて脳がバグってるんだろうか?
「マユ…どう言う事?」
肘で突きながら麻由に小声で聞いた
「セイヤに是非にってね」
「何それ…」
「そう言うとアンタ絶対来ないでしょ」
「まあそりゃそうだけど…何を是非になのよ…」
「まあ悪い話じゃないわ。とりあえず聞きなさい」
「はい、そうですか…」
コソコソとそう言い合ってると北野が飲み物を持って戻って来た
「有難うございます、頂きます」
俺はミルクをたっぷり入れて口に含んだ
「同じカフェラテで良いじゃん」
「カフェラテだと牛乳使ってるからコーヒーの味が薄いんだよ」
「エスプレッソ使ってるからしっかり味分かるわよ?」
「コーヒーの割合が多い方が良いんだよ。カフェラテだとミルク味が強い。ミルクの量も好みに調整出来ないし」
「変な所に拘りあるんだから…」
「ははは、やっぱりセイヤくん良いね」
「はあ…そうですか…」
家族からは面倒がられてるが…
何が良いのかさっぱり分からなかった
「セイヤくん、『星屑の舞台』ってドラマ知ってる?」
「何か…昔チェックーズが歌ってた曲なら何となく…」
「ははは、去年ドラマアワード受賞したりSNSでも毎回バズって結構話題になったんだけどなあ。最近の流行りは知らなくて昭和ヒットは知ってるなんてやっぱりセイヤくん良いね」
「はあ…マユは知ってんの?」
「私も恥ずかしながら存じ上げなかったらから今回この話を頂いてネトフレで猛勉強したわよ」
「頂いて?で、その話題のドラマがどうしたんですか?」
「そのドラマのプロデューサーを私がしててね。今度映画化する事になったんだ」
「へえ、それはおめでとうございます」
「映画では主人公の星川が何故暗殺者になったのか…過去のキッカケのエピソードゼロのストーリーになるんだ」
「何だか物騒な話のドラマですね…」
「でもね!恋愛有り、笑い有り、裏切り有り、タイムリープ有り、ミステリー有りでドキドキハラハラキュンキュンしてからの最後に1話目の伏線回収…とにかく凄いんだから!観ないと人生損するから!」
「はあ…そうですか…何か色々忙しい内容ですね…」
内容が色々とっ散らかってんなあ…と思いながらコーヒーを啜っていた
「でね、本題を言うとね、主人公の星川がピアノを弾くキッカケになった子の役を是非セイヤくんにお願いしたくてね!」
「えっ!?俺ですか!?」
しかもピアノ弾くんかい!と新たな追加情報よりも此方の案件の方が重要だった
「やっぱり実際弾ける子が欲しくてね」
「それなら俺みたいな素人使わなくても子役に居るでしょ多分…」
「あとセイヤくんの雰囲気…凄くイメージ通りなんだよなあ!」
「はあ…」
一体何を期待してるんだ…
演劇経験なんて無いぞ
「アンタきらきら星変奏曲弾けるでしょ」
「まあ…」
「物語の中でね、星川と弾くんだよ。それをキッカケに星川がピアノを勉強しだすんだ」
「へえ…」
そう言えば昔照陽と弾いたなあ…
と懐かしく思い出していた
「若いうちは色々経験してみなきゃ!ピアニストと医者にはならないって言うんだったら他の職業体験してみないとね!」
「そんなキッズニアのノリで言われても…先ず俺演技なんてできる気しないし…セリフとか…」
「それは大丈夫!この役は喋れない役だからセリフは無いんだよ。ピアノを通して交流するんだ」
「何か余計難しそうだけど…」
「大丈夫!素のセイヤくんをそのまま役にした様な感じだから」
「はあ…」
一体俺はこの人にどんな風に見えてるんだ…
と一抹の不安もよぎった
「セイヤくん、石田綺羅々って女優知ってる?」
「すみません…芸能人に疎くて…存じ上げません…」
「ははは、去年主演女優賞獲ったんだけどなあ。その人が主人公だから大丈夫!演技派女優さんだから演技は任せて自然体にピアノに集中してくれれば良いから!」
「そうですか…」
なんだかドラマのタイトルみたいなキラキラネームだな…と思った
さぞキラキラした人なんだろう
てか殺し屋は女なんかい
さらに追加情報が加わって頭がついて行かなくなっていた
「じゃあ…リハーサルは冬休み辺りに、撮影は春休み辺りに調整するからね!」
「はあ…」
おいおい、まだ出るとは言って無いが…
「宜しくお願いします!」
俺の代わりに麻由が元気よく返事をしていた
なんだか俺の知る由もなく勝手に話が進んで決まってしまった
やはり俺は押しに弱い人間だ…
星夜は流されるまま役者デビューする羽目になりました
キララ久々登場です
すっかり演技派となってカムバックしてるみたいですね
キララについては「タブレット・ジュン」を参照下さい




