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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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96話

 しかし、リュウの予想とは反対に、首護隊入りを聞いた九垓は良い顔をしなかった。


「受けるべきでない」

「……、なぜですか」

「お前は幼い」

「でも、俺は誰より強いです」

「確かに魔術は一人前。いや、それ以上だ。しかし、首護隊は子供が務められる程(やわ)なものじゃない。今は特に」


 慧燿が幼い子供を護衛に付けた理由。当時、胡の近隣の小国、タルカンで代替わりした王に、強力な導士が嫁いできたのだった。導士の妻を依代に、タルカンは幅を利かせ、打倒・胡といわんばかりに勢力を強めていた。


 慧燿は、警護を固め強化するのが喫緊の課題だった。それは、首護隊に入れば、すぐに危険な任務と隣り合わせということを意味する。


 九垓の心配を、リュウは取り合わなかった。


「普通の子供ならそうかもしれません。でも、俺はできます。体は特別強い。親も幼い頃に死に別れ、そこらの親離れできてない子供とは根っから違います」

「……リュウ」

「お願いです。やらせてください。俺は、あなたに恩を返したいんです」

「……まだ早い」

「……殿下、それだけじゃないんです。俺……自分の力を試したいんです」


 指名を受けて喜びが爆発したのには、もう一つ理由があった。魔術が上達するにつれ、実戦で試したいという欲がどんどん溢れていたのだ。それは、リュウが感じていた閉塞感を吹き飛ばした。


「……なるほど。確かにお前ほどの実力を持てば、そうなるか。ならば……無理に止めても、お前の心は静かに死んでいくのかもしれないな」


 九垓はゆっくりと瞬きして、リュウの首護隊入りを認めた。



 当時の首護隊はリュウの他に四人。二人は導士で、リュウが使えない幻導術を使う。リュウの才はそのハンデをものともせず、実戦で導士よりも優れた成果を挙げた。


 首護隊は、王の傍らで護衛するだけに留まらない。王に危険が及びそうな事態を、未然に防ぐことも含まれる。国内の反乱分子、他国の侵入者から王を、国を守る。


 初めて人を殺したのは十二歳だった。殺しに、リュウは抵抗を覚えなかった。任務であり、必要なことだった。幼くして両親が早々に死に、生死観念が通常の人とは少し違ったのかもしれない。


「……お前、ガキとは思えないな」

「そうかよ」

「あなたは、まだ十二の子供。殺しは別の人間が当たったほうがいい」

「よくそんなこと言えんな。全員俺より弱いのに」

「そういう問題じゃない。まだあなたは親の庇護下の年齢であって」

「庇護してくれる親がいねえのに?」

「リュウ……」


 リュウにとって、九垓は恩人だが、家族ではなかった。孤独が、リュウの残忍さに拍車をかけていった。


「リュウ! 久しぶり!」

「ん」

「最近、全然時間合わないの寂しいよ」

「あっそ」

「リュウー、もっとユランに愛想よくしてやれよ。可哀想だろ。泣いちまうぞ」

「んなしおらしいタマかよ」

「んもう! せっかく久しぶりに会えたのに」


 子供の頃から顔見知りの者たちとは、たまに宮の近くで出くわした。うるさいヤツ、と思いながらも、その明るさや、周りの人間の能天気さに救われていた。リュウが子供らしい顔を見せるのはその一瞬くらいだった。


 一方で、殺しに何の感傷も抱かなくなっていくことには、歯止めがかからなかった。ひたすら、黙々と任務をこなす。だが、殺された側は、そうもいかない。いつしか、リュウの周りには多くの怨恨が渦巻いていた。


 そして、転機は訪れた。

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