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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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94/98

94話

 玲奈は夢を見ていた。

 

 目の前に、小さな丸い頭が見えた。あれは……かみなりだ。おいでと呼ぶと、軽やかに駆け寄ってくる。ふわふわの毛を撫でると、嬉しそうに喉を鳴らした。かみなりが通ってきた道には、金色の光が舞っていた。



 場面が変わった。


 腕の中にはかみなりを抱いたまま。サディの屋敷から逃げてきた玲奈は、ボロボロの吊り橋から落ちそうになった。ふわりと吹いた風が、玲奈の体を持ち上げてくれた。玲奈が再び駆け出した後の夜空には、金色の光が瞬く。それは一塊になって、猫の姿を象った。


「あの時の……あれは、かみなりが助けてくれたの?」

「ンナー」


 かみなりは得意げに鳴く。


「そうだったんだ……ありがとう。助てくれて」

「マ!」

「ねえ、今どこにいるの? やっぱり、魔石の中?」


 ンニュニュ、と発しながら、かみなりは首を振った。


「え! 違うの? じゃあ、どこに……まさか迷宮にまだ」

「ンナナナ!」

「あ、それも違うの」


 再び首を振ったかみなりは、前足で下の方を指した。


「ん?」

「ンマー!」

「下……地面? 地中? ……分かんないけど、近くにはいない?」

「ンー」


 かみなりはこてんと横に首を傾げた。どっちなのだろう。


「ねえ……あなたは、何者なの」



 かみなりが首を後ろに反らし、目を細めて「ンナー」とのんびり鳴いた所で、玲奈は目を覚ました。


 

 

(今のは……)


 玲奈は魔石を見つめて、一度、机の引き出しに閉まっておくことにした。 


「起きたか」

「……もう! 女子の部屋に入るなら声かけてよー」

「そんなこと言ってられる立場か、お前」


 ぼーっと机に向かっていると、いつの間にかリュウが近くに座っていた。


「つうか今更だろ。散々近くで寝泊まりしてきて」

「それはそれ!」

「勝手に入られたくないんなら、戸を叩いたらすぐ起きろ。五秒返答がなければ開ける」

「五秒……」


 起きてる時はまだしも、朝は難しい。玲奈は寝起きはいい方だが、五秒は無理だ。ここは諦めるしかないようだった。


「その魔石を閉まっておくのは賢明だな。懐に入れていても、共同生活していたら、どこから目をつけられるか分からない。それは目立つ」

「うん……ずっと持ってたから、心許ないけど」

「俺が側についてるから、心配しないでいい」

「……ありがと」

  

「で、お前が何から逃げてきたか聞かせてもらおうか」


(どうせ、王様から聞けるんだし……完全に味方になってくれるとは思えないけど……)


 逡巡するも、玲奈は自分の隠し事を伝えた。時を戻せることは勿論、隠して。リュウは驚きを見せない。


「……もう知ってるんでしょ」

「ん」

「なら、聞く必要なかったじゃん」

「お前から聞くことも必要だ。あいつも知ってたのか」

「トキ? うん、成り行きだけど、迷宮に入る前、スラジの国内で逃げてる時に事情を話して、助けを求めたの」


 リュウは相変わらず、人の名前を呼ばないポリシーがあるみたいだ。玲奈の名は、一度だけ呼ばれた。逆廻を使ったため、それを今のリュウは知らない。


「スラジでお前を手助けしたのは第三王子か」

「…………」

「当たりだな」


 ポーカーフェイスというのは頭から飛び、素直に驚いた玲奈に、リュウは薄く笑った。


(しまった、隠すべきだった……?)


 どっちの方がいいかは咄嗟に分からないが、ちゃんと考えてから答えを出したかった。


「離れた理由は? 第一王子の追手が迫ってきたか」

「……」

「お前を守るためには、向こうの情報はあったに越したことはねえ」

「……頼って、いつまでも助けてくれる保証なんてないでしょ」

「向こうで色々あったんだな。根は甘っちょろい癖に、警戒心だけ一丁前」

「……そうかも」

「お前が言わなくても調べるだけだ。うちの情報網ならそう時間はかからねえ」

「……」

「分かってないだろうけど、これは国のためじゃねえ。お前を守るために言ってんだぞ」

「…………」 


 玲奈は、見極める様にリュウを見つめた。二人に、緊張が走る。


「リュウのこと、教えてよ」

「あ?」

「私が言ったらリュウも教えてくれる約束でしょ」

「……」

「リュウのことを知らないから、リュウを信じていいかも分からない」

「……分かった」


 リュウは一度、目をきつく閉じた。


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