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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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93/98

93話

 玲奈から離れたリュウは、九垓のところへと戻っていた。入れ替わりで、リュウを睨みながら紅那が出ていく。


「そんな仲悪かったか?」

「さあ……あの男との記憶は殆どないです」

「それが気に入らないんじゃない? 自分は意識してるのにって」

「八つ当たりですか。子供じみてますね」

「お前だってまだまだ子供だろう」


 それに返すこともできず、リュウは黙った。


「本題に移ろうか」

「……アイツは何を抱えてるんです」

「本人から聞かなくていいの?」

「それはそれで、口を割らせます」

「おお、怖い」


 九垓は愉快そうに口の端をあげ、真実を囁いた。


「彼女はスラジで悪名名高い、『破滅の子』だ。知ってるだろう」

「……はい。例の……成程」

「驚かないのか?」

「驚いてます。ですが……そう思えば、腑に落ちる点はあります」

「というと?」


 九垓は前のめりになった。


「異常に常識がない。迷宮に挑むにしては実力もまるで足りない。なのに、一等魔石を持っている。手立てをした権力者がいるということです」

「十中八九、スラジの第三王子だな。境遇からして動機は十分。長兄との折り合いも悪い。彼女が国に捕らえられる前に、いち早く助けられるとしたら、彼くらいだ」

「手を組むのですか」

「それは時期尚早かな。暫くは様子見だ」

「アイツの処遇は」

「とりあえず、周りと同じく下働きにしていいよ。お前だけでなく、首護隊に交代で監視に当たらせよう」

「……しかし、首護隊の役目は陛下の護衛です」

「大丈夫、昨日言っただろ。お前の穴を埋めるどころか、前より充実してるよ」


 リュウは昨夜、今の首護隊の構成について聞いていた。以前よりも、手練れの実力者が任に当たっている。リュウがその情報を与えられた理由。胡王国を出ていく以前、リュウが首護隊の一員だったからに他ならない。


「ならば、俺が首護隊の任に戻る意味もありません。俺は今は、役立たずです」

「魔術が大して使えなくても、お前は十分戦える」

「アイツの監視に他の首護隊員を使うのは勿体ないです。俺一人で」

「いや、リュウには戻ってきてもらわないと困る。何だ、そんなにあの子と離れたくないのか」

「…………」


 リュウは渋い顔で唇を噛み締めた。九垓は目を丸くをして面白がった。



「これは驚いたな。まさか、お前が恋慕を覚えるとはね」

「……そんなんじゃないです。からかわないでください」

「じゃあ何か。俺への忠誠は捨てたか」


 九垓の口調は面白がる音を乗せているものの、眼光は鋭く、リュウの本意を見極めようとしていた。


「ありえません。ただ、アイツは何をしでかすか、分かりません。それこそ、始末しなければならない事態になる可能性も。俺が近くにいれば、そうなる前に対処ができる」

「随分大事にしてるじゃないか」


 九垓はくつくつ笑いながらからかった。


「お前にそんな余裕ができたのが嬉しいよ」

「……」

「だが、その淡い気持ちを応援してやれるほど、あの子の存在、それがもたらすものは軽々しく扱えない。『破滅の子』がもつ意味を、分かっているだろう」

「……」

「想いまで捨てろとは言わない。でも、あの子がお前と結ばれることはない。肝に銘じておけ」

「……アイツを好いてなどいません。何度も言わせないでください」


 九垓は眉を上げて応えた。




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