表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/98

88話

「……え?」


 その先は、少し前に見た景色だった。暗闇と、金色に輝く煌めき。その正体。


「っ、かみなり!!」

「ハァ!?」


 玲奈の視線の先にいる者を、リュウも見た。かみなりは金色に煌めく檻の中に閉じ込められていた。まだ底は見えない。二人は奈落へ落ち、かみなりは二人の頭上に取り残されていく。


「どうしよう!」

「どうもできねえだろ!」

「っ……そもそも、このまま落ちていって大丈夫なの!?」

「知るか!」

「ああ、もう……っ」


 諦められずに上を見上げれば、トキとナシュカが飛び込んで来るのが見えた。


「その檻を掴んで!」

「っ、分かった!」


 玲奈の咄嗟の叫びに、トキは反射的に応えた。檻へ手を伸ばし、その手に取る。空中に浮いていた檻は、トキの手に落ちた。


 四人は暗闇の中を落ちていく。下を見ると、真っ白い光の穴が段々と大きくなっていた。上からナシュカの弾む声がした。


「あれが出口よ! 間違いない!」

「ほんと!?」

「ああ! 真っすぐ行け!」


 四人は光の穴へ、吸い込まれるように落ちていった。


  不思議な感覚だった。体が光にまるっと包まれ、視界は白一色だ。どちらが上か下か、まるで感覚が掴めない。光の海を泳ぐように進んだ先に、暗い出口が見えた。



()っっ……! たた……」


 ドサ、と尻を打ち付けた。薄暗い洞窟の中にいるようだ。薄っすらと、三人のシルエットが見える。


「みんないる!?」

「ああ、お前が最後だ」

「よかった……着いたんだ」

「ええ、もうここは胡王国よ」


 玲奈の胸には、安堵と達成感が膨らんだ。しかし、すぐにそれは萎んでいく。トキの申し訳なさそうな顔で、察した。


「かみなりはいない、か……」


 手の中の檻は、空っぽだった。


 心配ではあるが、檻を持ち出せたことで、玲奈はいくらか気が楽だった。檻に閉じ込められ続けている状態は脱せたのだ。


(姿は見えないけど、一緒に外に出られてる。きっと)


 よし、と口の中で呟いて、気持ちを切り替えた。 


「ここからどうするの?」

「まずは下働きだ。年に二度ある登用試験に受かれば官吏になれる」

 

 そうなれば、豊かな生活が待っている。それを目指して、スラジの貧しい若者は迷宮へ挑むのだ。玲奈の目的は違うが、まずは皆についていき、正体を隠しながら、無事に生活できる安寧の場所と時間が欲しい。


「とりあえず、王都に向かう必要があるわよね」

「ああ。進もう」


 体は満身創痍だが、進む足取りは軽やかだった。しかし、それも洞窟を出るや否や、ピタリと止まった。前方に、人影を見つけたのだ。


「迷宮の達成者とお見受けする」


 低くしゃがれた声が、その男が歳を重ねていることを思わせた。武具を着込んだ男たちが、十人程連なっている。緊張が走る玲奈たちを見て、男は幾らか柔らかな声を発した。


「いや、驚かせてしまってすまない。私は胡王国、楠暢(だんのん)地方の長、河肖(こしょう)だ。貴殿らを傷つける意思はない。我らは王都への案内役として参った」

「案内役……」

「その割には重装備ね」

「どのような者たちがやって来るかは分からない以上、身を護る術だ。ご理解頂きたい」

「こっちはこの国のこと全く分からないし、王都へ連れてってくれるなら助かるわ。すぐ出発するの?」

「いや、まずは私の城へ来てもらい、魔石や衣服を検めさせてもらう」

「魔石を取り上げる気?」

「王都で手続きを終えるまでの間だ。武器を持った外国人をいきなり中枢へ迎え入れることはできない」


 トキとナシュカは渋い顔で、小声でやり取りをした。


「信頼できるの」

「そのくらいの警戒はあって不思議じゃない。そもそもこの人数に対するには、魔石は尽きかけだ。従うほかない」

「……そうね」


 玲奈はそこで初めて、最後の試練で獲得した魔石は消えていたことに気づいた。一方リュウは何も言わず、玲奈の後ろで俯いている。


「分かった。あなたに従うわ」

「話が分かるようで何よりだ。ここからそう遠くない……んんん?」


 武人たちに付いていこうと歩みだした時、河肖が声を上げて、リュウにつかつかと歩み寄った。


「いやはや……驚いた。貴殿は」

「人違いだ」

「間違いない! ヒリュウ!」

「…………」

「ヒリュウ?」

「あれが?」

「行方知れずのヒリュウ?」

「迷宮から出てくるとは……死んだと聞いていたが」


 兵士たちのざわめきの元は、リュウのようだ。気づかれたリュウは、居心地悪そうに体を縮こませた。


「知り合い、みたいだね?」

「……まあな」

「役人と面識があんのか? なら、なんでまた迷宮なんかに」

「……色々あんだよ」


 話す気はないようだが、リュウには事情が色々あるようだ。それは玲奈も同じなので、深くは突っ込むまい。


「これは、陛下がお喜びになるに違いない。すぐに(とり)を飛ばさねば」

「……ハァ」


(陛下?)


 玲奈だけでなく、みんなギョッとした。 

 

「え!? 国王と顔見知り!? もしかしてリュウって偉い人?」

「んなわけねえ。ただの部下の一人だわ」

「顔を知ってるくらい近しいんでしょ?」

「そういう配置にいただけだ。おい、行くなら早くしてくれ。全員クタクタだ」

「おお、それは申し訳ない。なに、ヒリュウ殿と旅路を共にしてきたとあらば、(はかり)も問題ないだろう」


 そして兵士たちが慌ただしく動き始め、玲奈たちは近くの城まで連れていかれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ