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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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87話

(……今のって)


 逆廻で戻った先は、扉を開ける前だ。風を起こす算段をしていた。


「レナ、聞いてる?」

「……うん。あの、風があんま効かなかったらどうするかも考えておきたい」

「それはそうだけど、今ほかに手立てがないって話でしょ」

「う、そうだった」

「いや、もう少し戦略を練ってからいこう。上手く行かなかったとして、そう何度もここに戻ってこれると思わない方がいい」


 正にその油断に、先程当たったばかりだ。神妙に頷く。


「あれってそもそも、何なのかな」

「……あの姿は、貴類に近いものに思える」


 ナシュカが恐る恐る言った。


「貴類?」


 玲奈は久しぶりに耳にした響きに目を丸くする。トキが続けた。


「貴類そのものがここに留まっているとは思えない。が、それを模した……もしくは貴類の魔力そのものが使われている可能性はあるな」

「皆、貴類を見たことあるの?」

「ううん。そう簡単に人前に現れる物じゃない。でも確かに実在する。色んな形で伝承が残ってるけど、さっきの火を吹く姿は正に貴類のそれ」

「真似てるだけならまだしも、魔力が入っていれば相当厄介だな」

「どういうこと?」

「貴類は魔石による魔力を無効にできるの」

「攻撃しても無駄ってこと? でも、さっき水は当たってたよね」

「だな、気にしすぎだ。効果がある前提で考えよう」


 手に握る魔石に視線を落とした。


「ん……?」


 赤黒い魔石の奥から、金色の光が発せられていた。


「ねえ、これさっきと色が違う」

「……確かに」

「こっちもだ」

「私のも、赤くなってる」

「俺も変わってる」


 玲奈が魔石を示すと、全員色が変化していた。玲奈とリュウは金色、ナシュカは赤、トキは青だ。


「そもそも、魔石って色によって何か違うの?」

「元の鉱石の色の違いは性質に関係ない。ただ、途中で色が変わるとなると……」

「……何かありそうね」


 四人は魔石と向き合い、新たな作戦を立てて挑んだ。



 * * *



 化け物が放った炎に強風で対抗するところまでは、先ほどと同じようになぞり、同じように、限界が来た。  


「もっとコイツを動かさなきゃ……」

「風はこれが最大だ。やるか」

「分かった!」


 玲奈はリュウと目配せをする。金色に輝く魔力で電気質の塊をリュウと作り、竜巻に乗せて放った。風に乗る内に鋭く切っ先が尖り、矢となっていく。化け物の喉に矢が当たると、化け物からは雄叫びが上がった。


「効いてる!」

「腹側が皮膚が薄い! 狙うぞ!」

「もう一発!」

「うん!」


 作られた電気の塊はヂヂッ、と音を立てる。リュウが作り出す熱量に押されるのを、跳ね返すように体内から魔力を放出した。先ほどと同じところへ当たった矢は化け物へ大きな損傷を与えていた。


「よし!」


 玲奈は本来、この強さの環術を使えない。それを可能にしたのは、紛れもなくここに埋め込まれていた魔石の力だった。


 部屋に入る前、魔石を検分していた時のことだ。


「一度試すのが早い」

「そうね」


 リュウが魔石を砕く。


「魔力の色もさっきと違ぇ」


 リュウの周りには黄金の魔力が広がっていた。先程までは、赤黒かったはずだ。そしてリュウがその魔力を取り込んだ時、最大の変化が現れた。


「アァ!?」

「うわっ、何よびっくりした」

「なんだ……? 体に痺れが」

「痺れ!?」

「微弱なもんだ。危険は感じねえが……」

「一度魔力を戻した方が」

「いや、これは」


 リュウは両手を翳した。その手のひらから、バチッ、バチッ、と音が鳴る。


「……どういうことだ」


 手のひらからの光によって、リュウの顔に暗い影が落ちた。両手の間には、目に見えるほどの激しい電流が渦巻いていた。


「帯電、してる……」

「あなた、やっぱりしっかり環術を使えるんじゃない」


 ナシュカがしたり顔で言うも、リュウは少し間を置いた後、首を振った。


「……俺はろくに環術を扱えない。これは吸い込んだ魔力を、手から放出しただけだ。形質は変えていない」

「つまり、その魔石の力ってこと」

「ああ。だから、お前にもできるはずだ」

「……私に」


 玲奈に視線が向けられた。同じく金色に輝く魔石を砕き、その魔力を体内へ入れる。


「っ……本当だ。血が、ビリビリする……」

「そのまま手に流せ」


 頷いて、両手を突き出す。皮膚を突き出た途端、微弱だった電流は大きく激しく、雷のようにバチバチと衝撃波を出した。


「凄い……」

「かなり特殊な魔石のようね」

「ここは迷宮だからな。何があっても不思議じゃない」






 何度矢を放っても、魔石からの電流は弱まる気配を見せない。続け様に化け物へ放っていくと、猫のような頭部がグラグラと揺れる。


「痺れてる!」

「ナシュカ、今だ!」

「分かった!」


 化け物の動きが止まってるのを見て、ナシュカは風を止めた。ナシュカが赤い魔力を手から出すと、火縄が形取られていく。炎で焼かれても燃え落ちることのない鎖だ。風に乗せて、化け物の口を閉じて塞ぎ、足と胴体を一括りに縛り付ける。痺れたままの化け物は苦しそうに呻くだけで、ほとんど抵抗できていない。


「ゲートは!」


 足元から微かに外れた所に、発光する円があった。


「行ける! 飛び込め!」


 玲奈とリュウは、ゲートに一緒に飛び込んだ。


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