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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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82/99

82話

「ッ、リュウ!」

「あ!?」

「良かった……本物のリュウだった〜……」

「おま、言葉通じてんな!? ようやくかよ!」

「うう、リュウー……」

「泣きべそかいてんな、後にしろ」

「うんっ……」

  

 まだトキとナシュカは闘っている。鎧の槍を、人型は難なく受け止めていなしている。リュウがあっという間に片付いたのとは対照的だ。


 リュウはナシュカの方へ滑るように近づき、人型のナシュカの横っ面を殴打した。


(うわっ……画やば)


 偽物とはいえ、女性の姿をしたそれに躊躇いなく手を挙げる光景に、玲奈は身震いした。リュウの拳を受けたナシュカの形をしたものは、呆気なく倒れて、煙に包まれた。先に煙を上げていたリュウだったものを見ると、シルエットはそのままに肌が崩れ落ち、下から粘土質の土が覗いていた。


(やっぱり、あれは魔術で作られたもの……)


「トキ! こいつら魔術は効かないんだ!」

「ヲ窶ヲ��!」


 ナシュカの声も聞こえるようになった。そして最後まで戦っていたトキの鎧は槍を投げ捨て、拳を振りげた。人型のトキは、ぐらっと大きく身体が傾く。


(魔術が槍に見えてたんだ)


 ナシュカの分析通り、魔術を使わない攻撃の方が効果的なようだ。しかし、トキの力では、敵は直ぐにはダウンせず、再び襲いかかってくる。


「チンタラやってんじゃねえわ!」


 リュウは一足飛びにトキたちに近づくと、踵を振り上げ脳天を強襲した。


「ぐあっ……」

「ハッ、雑魚じゃねえか」

「……助かった」


 リュウの一撃でトキの形をした物も倒れ、本物のトキが姿を現す。自分が苦戦した敵を呆気なく倒したリュウに、トキは複雑そうな顔をしている。 


(かみなりは……)


 辺りを見回すと、偽の猫は姿を消していた。



「レナ! ちゃんと言葉伝わってるわね!?」

「伝わってる……ぅ〜、良かった」

「とりあえず、一見落着か」 

「うん……でも、かみなり、どこ行っちゃったんだろう」

「偽物のかみなりは何もせず消えちゃったのね」

「魔石に戻ってるんじゃねえの」

「うん……、そうだね」

「で、何が起こったんだよ」


 リュウが玲奈に問いかけた。


「トンネル潜ると、いきなり三人がいなくなって、鎧姿の三人が現れたんだよ」

「鎧ィ?」

「うん。槍も持ってたよ。皆は自分たちに何も変化がないように見えてたの?」

「見えてたも何も、全く変わってない。お前の方が幻覚を見てたんだよ」

「私たちからすると、玲奈がいきなり外国語で捲し立て出したのよ。それで、逃げ出すから追いかけて」

「気がおかしくなったかと思ったぞ」

「ごめん。そっか、皆は変わってなかったんだ」

「仲間の姿が分からず、言葉が通じなくなる魔術がレナにかかったってことか」

「そして、私たちの写しが出現した」


 視線を下ろすと、三体の土人形は既にボロボロに崩れ、人のシルエットも消えていた。


「見た目だけじゃなく、声も口調もそっくりだった」

「迷宮に入ってからの言動を元に作られたんだろうな」

「どうしてあっちが偽物だって分かったの?」

「……あっちのリュウが、私の名前呼んでたから」

「あー、なるほどね~」


 やはりナシュカたちも、リュウが人の名前を呼ばないことに気づいてたようだ。リュウは涼しい顔をしている。

   

「俺が名前呼んでなくて命拾いしたな」

「それは、そうなんだけど……」

「なんだよ?」


 じとりとリュウを見つめると、怪訝な顔が返ってきた。


「……何で名前呼んでくれないのかなって」

「……別にいいだろ。通じるんだから」

「駄目じゃないけど……寂しいじゃん」

「あっそ」

 

(何か理由があるなら、知りたいけど)


 それきり、リュウは黙ってしまい、玲奈は大人しく諦めるほかなかった。



 居なくなったかみなり。気にかけながらも、先へ進むしか選択肢はない。相変わらず南国じみた青空をバックに、大きな鳥が優雅に翼を広げていた。


 


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