79話
出口の扉を抜けると、細い通路になっている。先には明るい光が見える。通路を暫く歩き、光の射すほうへ出ると、地下だというのに、太陽があるかのような、明るい空間だった。地面には草が生え、所々、ヤシに似たような木も生えている。
「何が来てもあんま驚かなくなってきたな」
「確かにね」
「わ、鳥までいる」
鳴き声がして、見れば木の上に大きな鳥がいた。猛禽類のようだ。かみなりは鳥に向かってシャーッ! と威嚇した。あっちの方が大きいのに勇ましいことだ。鳥はバサッと翼を広げて飛び立っていった。
「とりあえず、進むしかないか」
「そうね」
今のところ危険は近くには見えない。しかし先程、いきなり火が上がったように、油断はできない。鳥が鳴くのを横目に、道を進む。
「トンネルだ」
「何があるか分からない。気を付けて」
「うん」
トンネルに入った途端、ひんやりとした冷気が体を覆った。寒さに肌を擦りながら、変わらずナシュカが先頭になって、その後ろを玲奈が歩いた。一時暗くなる視界。十分程歩くと、出口が見えてきた。
出口を潜った瞬間、玲奈の体は、ビビっと弱い電流が走った感覚に襲われた。
「わっ、なに」
皆も同じだったろうかと、前のナシュカに話しかけようとした。しかし、そこにいたのはナシュカではなかった。
「っ!? 誰!? ナシュカは!?」
「縺ゅ>縺�」
「なんて!?」
ナシュカの代わりに現れたそれは、人の形をしていた。しかし、のっぺらぼうで、顔にあるものがない。金属の鎧に槍を持っていて、玲奈に向けている。敵意があるとしか思えない。
二人に助けをと振り返ると、そこにもトキとリュウの姿はなく、代わりに全く同じ、のっぺらぼうの鎧が二体、玲奈を取り囲んでいた。
「ヒッ……!」
慌てて逃げ腰になり、距離を取る。三体の鎧は槍を玲奈に向け、ジリジリと距離を詰めてくる。
(皆いないんだ、一人で乗り切るしか無い!)
玲奈は魔石を砕いた。向こうは三人。ひとまず逃げの一手だ。前方へ駆け出す。後ろを向くと、彼らは玲奈を追ってきた。
「ぎゃー! 来ないでよ!」
「∴縺翫°縺ソ縺ェ繧!」
「分かるように喋ってよもう!」
「翫↓蝠上>縺九¢縺!!」
距離は開かない。鎧たちは槍を振り上げて走り迫ってくる。再び前を向いた瞬間、足元スレスレに、ズサッと槍が刺さった。
「ひぃっ!」
(次は背中に刺さるかも……もう後ろを見せられない)
ごくりと息をのむが、玲奈にこの鎧たちを倒す実力はない。
(怪我してからじゃ遅い……もう巻き戻した方がいいの)
顔面蒼白のまま引け腰で、鎧たちと対峙すると、一体が両手を高く上げた。
「え……」
残り二体も続く。ただし、槍は手に持ったままだ。
(敵意がないって言いたいの? ならさっきの槍は何)
「溘◆縺輔〓繧縺ェ」
「縺ゅ°繧�◆縺ゅ�」
「繧�i縺ェ縺溘∪繧」
どうやら、彼らは玲奈と話をしようとしているように見える。
「私に何か伝えたいの? あなたたちの言葉が分からない」
「∪縺溘≠縺九レナ」
「え? 今、私の名前……」
「レナ」
聞き返すと、はっきりと名前を繰り返した。
「……何で知ってるの?」
「レナi縺ェ縺溘」
「かみなりゅ↑縺九≠繧」
「え! かみなりって言った?」
「繧弱√↓縺溘o」
「……ジェスチャーはできないの? 頷くとか、首を振るとか」
「医∩縺医f縺」
「さっき両手を上げてたじゃん」
「d縺ャ縺代⊇繧翫」
「……言葉が伝わってないのかな」
それならと、玲奈からジェスチャーを示すことにする。自分を指差し、次に鎧。そして、自分の両手を繋ぎ、友好を示す。
「私たち、味方、オッケー?」
鎧の一体が、手で大きく丸印を作った。
「ああ、ほんと……良かった」
どうやら、敵ではないらしい。言語が通じないが、ジェスチャーは通じた。
「あー……私、仲間、三人いるけど、逸れて」
「ュ�医〓縺ョ縺」
上手く伝わらなかったらしい。一度目は首を傾けられた。もう一度チャレンジすると、伝わったらしい。鎧たちは、自身を指差した。
「……ん?」
「昴f縺ュ縺!」
「溘≠縺輔i縲」
「ん?」
三体の鎧は、理解の悪い玲奈に向かい、何度も自分を指差している。
「≠縲√fトキ」
「≠縲√fリュウ」
「代√fナシュカ」
「……もしかして、あなたたち自身が、トキとリュウとナシュカだって言いたい?」
「繧翫�縺ュ�医」
「ええ!?」
(そんな)
信じるべきか、否か。玲奈はごくりと息を呑んだ。




