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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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78/100

78話

 玲奈は叫んだ。


「みんな! 『ハリツケアツクナイ』、そう書いてある!」

「っ、そういうことか!」

 

 玲奈の言葉をリュウはすぐに理解して、すかさず指示を出した。


「あと二つ、床に張り付くとこがあるはずだ! その猫が場所分かんのか!」


 リュウはかみなりに向けて言った。玲奈は戸惑いながらも、自分がやるべきことだけは分かった。あと二つ分、全員の足を張り付けさせる。


「分かる! ここと!」

「うおっ」


 玲奈が一つ目のタイルを踏んだことで、トキの足が床に張り付いた。玲奈はそのまま駆け抜けて、最後のタイルを踏んだ。


「ここ!」


 火が迫る中、ポーンと間抜けな音が再び鳴る。玲奈の足も、踏んだそこへ張り付いた。勢いに降り落ちそうになっていたかみなりは慌てて引っ掴んで、胸元にしまった。


「どういうこと!?」


 ナシュカが叫ぶ。火は目の前だ。リュウが答えた。


「張り付けば熱くない! それが答えってことだ!」

「っ、このまま火に呑まれればいいのね!」

「そうだ!」

「っ、大丈夫なのっ!? 今熱いけど!?」

「信じるしかねえだろ!」


 火が来る。暗号通りタイルに足を取られても、熱風を感じる。


(本当に!? どうしよう、熱かったら、その瞬間巻き戻せば)


「来るぞ!」

「あああっ――」


 恐怖に情けない声が漏れ出た。三人も固唾をのんで火に対峙する。


(お願い!)


 火を直視できず、目を瞑る。熱風が近づき、焼かれる――と思った瞬間。


(あっ……つく、ない)


 体に、見えない膜が張っているかのようだった。火が確かに体の周りで燃え盛っているのに、全く熱さを感じない。先程まであった熱風も無くなった。


 隣を見て皆の様子を見たいと思ったが、上も横も後ろも、見える範囲は全て火の海だった。


(……ふしぎ)


「ンマァ」

「あっ、ごめん!」


 胸元で苦しそうな声が聞こえて、慌ててぎゅっと握っていた手を緩めると、かみなりがひょこんと顔を出し、ぶるぶると頭を振った。


「よかった、かみなりも熱くないね?」

「ンナ!」


 手をぺろぺろ舐められたので、頭を撫でる。


「そうだ、今なら二人きりだから」

「ンー?」

「かみなりは、時を戻す前の記憶があるんだよね」

「ンニ」


 逆廻した記憶は、玲奈以外に覚えてる者はいない。ただ、かみなりは前回を分かっているが故の行動をしていた。


「なんでだろ。分かる?」

「ナー、ナナナナ」

「駄目だ、わからん」


 かみなりの言ってることはジェスチャーと合わせれば分かることもあるが、はっきりとした言語では理解できない。手に懐く愛らしい姿を見ながら、考察する。


 かみなりは玲奈の魔石から飛び出してきた。しかし、それはサディから貰ったもの。母が授けてくれた時を戻す力とは、関係がないはずだ。


(いや、一級でも魔石から生き物が産まれるなんて聞いたことないって皆言ってた。なら、この子はやっぱりお母さんに関係があるはず)


「お母さんのこと知ってる?」

「ンン」

「あれ」


 かみなりはこてんと首を傾けた。謎はまだ解決の糸口を見せないようだ。


(それに、また暗号が日本語だった……これも迷宮の魔術なんだろうか)


 魔術で投影されたヤザンが向こうの世界を知っていたように、玲奈の心を読んで生み出された暗号なのだろうか。


(それとも――)

 

 考えている間に、火の勢いが収まってきて、段々と視界が開けてきた。




 火が収まると、三人の姿が見えて、玲奈は安心してどっと力が抜けた。


「みんな無事なようね」

「暗号通りだったな」

「かみなりも大丈夫か」

「うん! この通り」

「ミ」


 四人で顔を合わせ、無事を確かめ合う。火は燻ることなく、あっという間に消えて跡形もなくなった。火が消えると、タイルに張り付いていた足は、自然と外れた。四人とも自由に部屋を動き回った。


「やっぱ普通の火じゃないね」

「人が燃えない火だからな」

「あっ、鍵空いてる!」

「本当か!」


 いち早く扉を確認したナシュカが押すと、それはすんなりと開いた。


「ハァー、良かった。疲れた……」

「今回もレナに助けられたな」

「え?」

「本当よ。レナがいなきゃ、焼かれてたわね」

「……役に立ててよかった」

 

 もちろん、逆廻という強大な力があってこそのことだけど。玲奈は、パーティーに貢献できていることを実感できるようになっていた。頼りなげな背中は、消えていた。


 

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