表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/97

77話

 仮病を続けるのもそろそろタイムアップのようだ。立ち上がり、扉をくぐった。玲奈が口を開く前に、かみなりが鳴いた。


「ンミャー! ミャ! ミャー!」

「え、なに?」

「何だって?」

「危ない匂いがするから、そっちのタイルは通るなって」

「かみなり、そんなことが分かるの?」

「いつの間にそいつの言ってること分かるようになったんだよ」

「あー、いつの間にか……」


 適当に誤魔化しながら、三人を安全な方へ誘導する。


「こっちの右端通ればいいのね」

「あっ、待ってそこは!」

「え」


 咄嗟の静止虚しく、ポーンと音が鳴り、光った。


「はっ!? 足が動かねえ」


 玲奈の前にいたリュウの足ががくんと止まった。


「どうなってんだ?」


(あっ――)


 トキがリュウに近づこうと足を一歩踏出した瞬間、更にポーンと音がした。


「あああ……」

「なんだ? また光った」

「え!? 動かないんだけど!」


 今度はナシュカの足が張り付いてしまった。玲奈は項垂れた。先程までで、全てのタイルを確認できたわけではない。安全かどうか、不明な所をみんなが踏み抜いてしまった。玲奈の誘導ミスだ。


「どういうことだ?」

「かみなり、ここ駄目だった?」

「ンナ〜」

「あら、ごめん」


 かみなりも耳をペタンと下ろして項垂れている。同じく責任を感じているようだ。一つ収穫があるとすれば、これで全部のタイルを確認できた。音が鳴るのは四カ所だ。


(四カ所……全部踏んだら、最後の人は自分がそこで張り付いちゃうのかな……いや違う、暗号を解かないと)


 きっと、そう遠くないうちにあのベルが鳴ってしまう。そして火が来る――。三人が話し込む中、玲奈はとっくに見慣れた暗号洋紙を見つけたふりをして、輪の中へ持っていく。


「レナは読めるのね」

「うん、でも暗号になってるみたいなの」

「暗号か……」

「まず、情報を整理しなきゃ。何の数字が書かれてるの?」

「えっと、13・22・35・53・61・35・47・37・11」

「それで全部?」

「うん」

「使われているのは1~7。8、9、0はなしか」

「恐らく、上の文字が暗号を解くカギになるはず。これを意味のある言葉に置き換えたらいいんじゃない?」

「置換式暗号か……でも、ほかにヒントがない」

「だな。解かせるための暗号なら、一つは意味のある鍵を提示するはず」

「他に洋紙があるとか?」

「隅々まで探したけど、これだけだよ」


 玲奈は数回経験してくまなく探したのだ。この部屋に暗号として置かれていたものはこれだけだ。棚という棚を開けたが、砂時計やら虫眼鏡やら、舞台の小道具のような小物しかなかった。


「この部屋自体、ミステリー小説とかに出てきそうで変な感じ」


 玲奈のぼそっと落とした言葉に、トキとナシュカは息をのんだ。


「「あっ!!」」

「え?」

「レナ、それよ!」


 ナシュカがくわっと目を開いた。


「な、なに」

「この部屋、『幻影探偵くらぶ』の主人公の部屋そのまんま!」

「げんえい……? なにそれ」


 玲奈だけでなく、リュウもぽかんと呆気に取られている。


「児童向けのミステリーシリーズ! 絵本になってるのよ! スラジの人間ならみんな読んでる!」

「主人公がバディと使う、置換式暗号がある。それを上に書かれてる文字に当てはめれば……」

「意味が分かんのか!」

「ああ……『い・ろ・は・う・た』って書いてある」

「……何のこと?」


 三人は首をひねったが、玲奈は手を上げた。

 

「いろは歌……私、分かる」

「っ、やっぱり! 玲奈の国の言葉なのね! これで数字の意味が分かる!?」

「多分、えーっと」


(いろは歌に、この数字を当てはめろってことだよね。つまりこれは、上杉式暗号)


 歴史が好きな玲奈は、すぐにピンときた。上杉謙信の軍師が生み出したとされる暗号。いろは歌を七×七のマスに当てはめて、文字と数字を対応させるのだ。


(13は『は』、22は……) 


 その時、ベルが鳴った。



「っ!」


(来た……! 早く解かなきゃ!)


「何の音?」

「……何か臭うぞ」

「何かって……」

「ックソ! 火だ! 火が迫ってる!」

「火!? そんな……動けないのよ!」

「この暗号を解くしかねえってことだろ!」

「……分かった! 私が環術で時間稼ぎしておく!」

「俺もやる!」


 玲奈は、焦りながらも暗号を解き続ける。


「もう火が見えてる!」

「もう少し耐えろ!」

 

 ナシュカとトキの奮闘を他所に、火はゴォォォと唸りを上げて迫ってきた。今にも、扉を越えようとしている。そして、暗号に向き合い続けた玲奈の脳内は、ようやく答えとなりそうなものに辿り着いた。


(っ、合ってる……!? 分かんない! でもっ!)


 玲奈は暗号の答えを叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ