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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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74/97

74話

 二、三日歩いた先に、四人の前には地下へ続く洞窟の入口が現れた。下へ続く、石造りの階段は(こけ)むして古めかしい。


「迷宮の到着点、胡王国へのゲートは地下の奥深くにある。これが最後の試練の可能性が高い」

「ここが最後……」

「だとしたら相当難関でしょうね。覚悟してかかろう」

「かみなりも入れるのかな?」

「行けるだろう」


 特に確証はないだろうが、トキが即答した。かみなりも大丈夫だというように、「マ!」と応えた。


「魔石から出てきたことを思えば、その子自体に魔力が宿ってるかもしれないわ。役に立つかもよ」

「途中で邪魔になったらそこで置いてけばいい」

「そんな、今更無理だよー……うう、頑張ろうね、かみなり」

「マァッ?」

「さあ、行きましょ!」


 ナシュカが、魔石を砕く。何が起きてもすぐ対応できるよう、魔力を貯めておくのだ。他の皆も続いた。先頭のナシュカが階段を下っていく後に玲奈がつき、その後ろにリュウ、トキと続く。


「ひんやりしてるわね」

「う、最初の嫌な思い出が」


 迷宮に入ってすぐの冷たい空気を思い出した。階段を下るにつれ、薄暗くなっていって、足元が見えにくい。ナシュカは全く意図せずにスタスタ進むので、置いてかれそうになる。


「ひー、待って待って」

「レナ、視力の強化魔術できるか?」

「目の?」

「瞳を魔術で操って光を取り込むのよ」

「なるほど」


 つまり、躯術で虹彩や瞳孔を調節するということだ。目に魔力を移行させ、ぐるぐる動かすと、それは容易くできた。


「わ、見える見える」

「よし、進むぞ」


 石の階段を降りきると、重たそうな扉が現れた。ナシュカが扉を引くと、ギギギ……と錆びついた音が響いた。続けてくぐると、天井の所々に松明が焚かれていて、中は明るかった。


「えっ、これ誰が付けてるの」

「迷宮の魔術でしょうね」


 先程覚えたての、暗闇に対応できる魔術は早くも必要なくなったらしい。明るい洞窟内というのはミスマッチな感があると思いながらも、ひたひたと進んでいく。


「止まって!」

「ぎゃっ」

「どうした」


 鼻を背中にぶつけてしかめっ面になりながら、叫んだナシュカの視線の先を見る。


「何もないじゃん」


 ナシュカは洞窟の端っこに転がっていた小石を取って、数メートル先に投げた。ことん、と小さな音がした後、跳ねるはずだった小石は、そのまま真っ逆さまに落ちて消えていった。だいぶ下の方で、ようやくカツン! と鋭い音がした。


「えっ」

「地面が抜ける罠か」


 恐る恐る近づくと、すっぽりと空洞になった先には、剣山が敷き詰められていた。肩に乗っていたかみなりもそれを見て、目を丸くし、びくっと跳ねた。


「ヒィッ、針山じゃん!」

「よく気づいたな」

「微かに質感が違ってたからね」

「ナシュカ〜、ありがとう。頼りになるー」

「ンナー」

「ふふ、先頭は任せなさい!」

「しかしまあ、ここにきてやけに古典な罠だな」


 確かに、時間や空間を捻じ曲げるようなトラップから、一転している。


「こういう罠の方が案外厄介なのよね」

「ああ。常に注意を張っていこう」


 さらに進み続ける一行。洞窟内は、松明が焚かれているのに温かみはまるでない。


「これ、本物の炎?」

「さあな」

「……熱くない」

「あんま近づくな。何が起こるか分かんねえぞ」

「うん」


 手をかざしたものの、注意されて大人しく離れた。かみなりはその手をふんふん嗅いで、ペッとつばを吐くように舌を出した。


(私の手が臭いみたいな反応する……)


 軽くショックを受けつつ、自分も匂いを嗅いでみると、確かに独特な匂いがした。


(火の匂いとは違う感じ)


「扉よ」


 今度現れたのは、古びた小さな扉だ。進まない選択肢はないが、注意は必要不可欠だ。


「開けた瞬間、何かしら襲いかかってくる可能性もある」

「そうね。皆、気を付けて……開けるわよ」


 扉は軋むこと無く、スッと開いた。中は小部屋だった。


「わ……何ここ」


 そこは、今までのさっぱりした無機質な洞窟とは真逆。薄暗い部屋の中には、年季の入った雑貨が所狭しと並んでいた。


 壁には、新聞や地図が敷き詰められ、机の上には虫眼鏡が三つ。大・中・小と並べられている。壁際の棚には、巨大な砂時計がこれまた三つ。砂の色が全部違う。赤、金、青だ。床にはツルッとした正方形の茶色いタイルが敷き詰められている。


「……気のせいかな、私、この部屋見覚えがある気が」

「……俺も」

「え?」

  

 ナシュカとトキが唸って記憶を遡っている。


「リュウも?」

「いや、ねえな。こんな気味悪い部屋」


 ナシュカはきょろきょろと部屋を見まわし、奥を指さした。

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