表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/99

73話

「その子、名前は付けないの?」

「名前かあ……付けたほうがいいのかな」

「ずっと猫って呼ぶのも微妙じゃない?」

「そいつ、猫じゃないしな」

「付けてほしい?」

「ンマー」

「ほら、うんだって!」


 実際の猫の気持ちは勿論分からないが、流れに乗って名前を考えることにする。


「猫か……ミケ、タマ……、ポチ、は犬か。えーと」


 ペットを飼ったことがないので、メジャーなところをブツブツと唱えていく。猫はきょとんと玲奈を見つめると、お気に召さなかったのか、肩から飛び降りてととと、と先を歩き出す。


「あ」


 その後ろ姿を見て思いついた。


「かみなり」

「マ!」


 猫はくるんと後ろを向いて玲奈に向かって鳴く。


「カミナリ?」

「あの稲妻模様か?」

「単純」

「いいじゃん、分かりやすいでしょ! ねえ? かみなり」

「ンナァ〜」

「ほら、気に入ったって!」

「まあ、レナがいいんならいいんじゃない?」


 イマイチ評判は良くなかったが、無事に名前は決まった。

 

「かみなりー」

「ンマァッ?」

「かっ……かわいい」


 名前をつけると、途端に愛着が湧いてきた。透き通った金色の目は丸っこく、ちょこんと付いた鼻と口もキュートの体現だ。


「そんな得体の知れんもんによく可愛いとか思えんな」

「また、そんな捻くれちゃって。可愛いものは素直に愛でなきゃ損だよ」

「魔石から出てきた猫もどきをか?」

「もう、折角名前つけたんだからちゃんと呼んであげてよ」


 リュウと軽い言い合いをしていると、トキがじっとかみなりを見ていた。


「どうしたの?」

「……いや」

「ふふふ」

「え、なになに」


 どもるトキと反対に、ナシュカが含み笑いをする。何か掴んでいそうなナシュカに問うと、彼女は悪戯めいた魅惑的な表情でトキにずいっと距離を詰めた。


「トキ、猫が好きなんでしょ」

「っ……」

「図星ね」

「えー! そうなの? もっと早く言ってよー」

「そいつ猫じゃねえだろ」

「リュウは黙ってて! なんで分かったの?」


 トキは顔を赤く染め視線を逸らしている。表情を変えないクールな男だが、猫に弱いとは意外な事実だ。


「ずーっと視線が追ってるもの。すぐ分かるわよ」

「へえ〜、トキってば可愛いとこあるじゃん!」

「……そういう反応をされるから言いたくなかったんだ」

「女ってのは隠すと余計に五月蝿くなんだよ」

「あら、経験者のような口ぶりね」


 リュウはうげ、と舌を出した。

 

「でもリュウの言うことは一理あるかも。普通に猫好きなんだ、って言ってくれればそうなんだ、で終わる話じゃない?」

「……誰にも話したことなかったから、言おうと思わなかった」


(あんまからかうとかわいそうだし、この辺にしておこ)


 ナシュカはまだニヤニヤとトキを見つめていたが、玲奈は先に船から降りた。


「飼ってたことがあるの?」

「いや、街の野良を見つけて、たまに可愛がってたくらいだ。懐っこいのを撫でるくらいしかしたことない」 

「へえー、じゃあかみなり抱っこする?」

「えっ」


 トキが爛々とした目で玲奈を見返す。


「……いいのか」

「うん。普通の猫と違って重くないけど。かみなり、トキに抱っこしてもらう?」

「マー」

「いいって。おいで」

「ンマー」

「お……おお……」


 トトっと駆け寄ってきたかみなりをトキに渡すと、恐る恐るその体毛を撫で、抱き上げた。ふわふわの背中を通り、額に手を近づける。かみなりはその手に頬ずりした。


「うっ……」

「……泣くんじゃない?」


 ナシュカが言ってるのはかみなりではなくトキのことだ。そのくらい、トキは感極まっているように見える。一通り堪能したらしいトキは、そっとかみなりを地面に下ろした。


「レナ……ありがとう」

「いや、そんなお礼を言われることでは」

「一生の思い出だ」

「大げさな……」

「ンナ!」

「逆に、リュウは猫嫌いなの?」


 ナシュカは、微妙にかみなりと距離を取るリュウに聞く。


「そういう訳じゃねえけど……、その猫もどきは近づきたいとは思わない」

「えっ、何で?」


 こんなに可愛いのに、と思いつつ、かみなりを見ると、心なしショックを受けているように見えた。


「かみなりはリュウが好き?」

「ナー!」

「うんだって。嫌ってたらかわいそうだよー」

「近づけんなって」


 本当に嫌がっていそうなので、大人しく引き下がる。嫌がらせをしたい訳ではない。


「なんか……ソイツ……」

「ん?」

「いや……、何でもない」


 リュウとかみなりは、距離を取りながらもじっと見つめ合っていた。


「まあそのくらいにして、早く行きましょ」 

 

 ナシュカの一声に、ようやく四人は止まっていた足を進め出した。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ