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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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72/98

72話

 細い道はますます細く険しくなっていき、上には草木に蜘蛛の巣、下はぬかるんだ土とかなり悪条件だ。


「……間違えたか」

「待って、判断するには早い! この先に凄く快適なオアシスが待ってるかもしれない!」

「本気で言ってるか」

「うっ……」


 恨めしげに猫を見るも、すました表情で顔を洗っている。可愛いけれど、今の状況では憎らしさも感じる。


 蜘蛛の巣地獄に顔を顰め悪態をつきつつ進むと、少しずつ道が大きく、平坦になっていく。(ひら)けた先に、リュウはある姿を見つけた。


「おい、あれ!」

「えっ……あーーーーッ!」


 二人の視線の先に現れたのは、トキとナシュカだった。


「トキ! ナシュカっ!」

「え!? レナ!? リュウもいるじゃない!」


 背を向けていたトキとナシュカは、玲奈たちの呼びかけに振り返り目を見開いた。ナシュカが駆け寄ってくる。


「どこに行ってたの!? 探したんだよ!」

「こっちの台詞だわ」

「私とリュウからすると、元の場所に戻ったら二人がいなくなってたんだよ」

「……私たちは、二人を待ってても一向に来なくて、辺りをくまなく探したの。それでも見つからないから、迷宮の力かもって話して、ゲートを目指した」


 二人はあの場から動かず待ってたという。やはり、迷宮の何らかの力が働いたようだ。


「合流できてよかったー」

「本当だよ、もう〜! そりゃ、レナたちのせいじゃないけど、心配したんだから! もー!」

「いたた」


 ナシュカが肩を激しく揺さぶるので、首がガクガクと振れた。そしてようやく、ナシュカは肩の生物に気付いたようだ。


「うわっ、何この子」

「……お前、気付くの遅くないか」


 再会して初めて喋ったトキは、どうやら猫に最初から気づいて、それに気を取られていたようだ。猫の話題になり、ようやく声を発した。


「分かんないんだけど、私の魔石から出てきたの」

「魔石から?」

「うん。魔石が熱くなって、割ってないのに発光して」

「魔石が熱くなるなんて聞いたことない。こいつが原因だったのか?」

「うーん、多分」

「ただの猫じゃないわね。翼がある」

「少し前、この子が小さい横道に行けって言って、それを辿ったら二人がいたんだ」

「そういや、合流できたのコイツのおかげか」


 四人の視線を一身に浴びた猫は得意げに胸を張り、顎を上げた。愛らしい表情だ。


「くっ……っ……」

「トキ? 大丈夫?」


 何やら胸を抑えているので心配すると、「何でもない」と返される。


「猫苦手とか?」

「……違う。何ともないから放っといてくれ」

「……そう?」


 ナシュカは玲奈と目線を合わせると肩を竦めた。


(まあいいか)


「幸運の導き猫……魔石から産まれた……うーん」

「なんか知ってる?」

「心当たりはないなあ。迷宮の力が魔石に働いて、この子を産み出した……って仮説を立てるしかないかな」


 正体は分からないが、とにかくトキたちに会えたのはこの猫のおかげだ。感謝すれど追い払う理由はない。


「道を教えてくれてありがとう。この先も一緒に進む?」

「マ!」


 良い返事を貰い、猫の顎を擽るように撫でる。目を細め、ゴロゴロと喉を鳴らす姿はよく懐いた家猫そのものだ。


「ぅう……」


 再びトキが呻いていたが、気にしないことにした。


 四人が合流し、一匹プラスして、ゲートに向かい進んでいく。途中で遭ったギドリーとアルガンとのハプニングも共有した。


「そいつらが追ってきてるってこと?」

「気配は無い。仮に追ってきても返り討ちにできる程度の奴らだ。追ってくる気概があるとも思わねえな」

「一級魔石を直に見といて喧嘩売るのは、相当度胸がないと無理だろうな」

「しかしこの猫、レナの肩から降りないのね。重くない?」

「うん。綿みたいに軽いんだよね」

「本当に実在してんのか、そいつ」

「迷宮が見せてる幻?」

「あり得なくはないな」


 猫の謎で盛り上がる中、皆に言えない疑念が玲奈の中で膨らんでいく。


(やっぱり、この子から、お母さんの力と同じ感覚がする。肩に触れてると余計に)


 迷宮も絡んでいるのかもしれないが、玲奈からだけこのような生物が出てきたのは、母の魔術が原因になっている気がしてならない。


「ミャ」


 猫が玲奈にだけ向けて、小さく、だがはっきりと鳴く。正解だと言われた気がした。



 

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