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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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57/72

57話

 その夜。玲奈は一人で崖の下に座りこみ、星を見上げていた。


(ダメだなあ……)


 綺麗な星空に、浄化されるどころか、心は沈みきって浮上には程遠い。三人は、内心玲奈に苛立ちや呆れを覚えているだろうに、ぶつけられはしない。時々リュウが嫌味を言ってくるが、玲奈を傷つけようという意図はなく、からかって遊んでやろうという風だ。


「はぁ……」

 

 勿論有り難いのだが、いたたまれなさも日に日に強くなっていく。


「何しょぼくれてんだ」


 玲奈の丸くなった背中に、声を掛けてくれたのは。

 

「トキ……」

「隣いいか」

「う、うん」


 トキは、体が触れるか触れないかという所に腰を下ろした。仄かに感じるトキの体温に、玲奈は安心を憶えた。


「落ち込んでんの」

「……そりゃ、落ち込むよ。一人飛び抜けてダメダメで、足引っ張って」

「魔術覚えて一ヶ月も経ってないんだから当たり前だ。そもそも、勝手に違う世界に連れてこられて、レナは腐らずよくやってるよ」

「……ありがと」


 励ましてくれている。その気持ちが嬉しく、そして、自分の情けなさも痛感する。


「ナシュカと比べてんのか」

「えっ」

「顔に出てた」

「ええっ」


 ナシュカにも気づかれただろうか。不快な想いをさせただろうか、と不安になる。


「向こうは気にしてなさそうだったから、安心しろ」

「……うん」


 トキには、玲奈の考えはお見通しのようだ。このパーティーで唯一、玲奈の事情を知ってる人物でもある。久しぶりに二人きりになったのもあり、弱音がぽろぽろと溢れた。


「何でもできるし、美人だし……羨ましいなあって」

「妬みってやつか」

「うっ」


(その通りなんだけど、ストレートに言う……)


「まあ美人ではあるよな」

「……トキもそう思うんだ」

「……そりゃ、あれは誰が見てもそうだろ」


 ジトっとした目で見ると、トキは少し照れたように顔を逸らした。励ましに来たのか、追い打ちをかけに来たのか分からなくなってきた。


「そうじゃなくて」

「うん?」

「比べないでいい。あれは異常種と思え。あんな奴もそうそういない」

「……うん」

「レナはさ、初めて会った時は何もできなくて、助けたのは成り行きだった。けど、一緒にいる内に、助けたい、って思うようになった。お前、凄い頑張ってるから」

「……うん」

「気づいてないだろうけど、そのひたむきなとこ。レナの良いとこ」

「…………でも、頑張っても、出来てない」

「まだ結果は出てないけど、何とかなる。そうやって頑張ってる奴みたら、周りは手助けしたくなるもんだ。少なくとも、俺は」

「…………」


 何も返せないレナの頭に、トキは優しく、触れるように、そっと手を置いた。暫し、二人は沈黙の時間を過ごした。玲奈がゆっくりと呼吸していると、トキが立ち上がった。

   

「戻るか?」


 トキから言われて、少し考える。


「もうちょっとここにいる」

「……そうか。早く戻って寝ろよ」

「うん。ありがと」


 トキを見送って、玲奈は立ち上がった。崖を見上げる。


『頑張ってる奴みたら、周りは手助けしたくなるもんだ』


(言ってもらったんだから、頑張らないと)   


 玲奈は崖から目を移し、サディに貰った魔石を見つめた。 



 * * *



 次の日は、曇りだった。


「雨降るとまずいな。滑りやすくなる」

「うん」


(早めに行かないと)


 体力を回復し、万全な状態だ。雨の不安はあるものの、日が出てないということは、汗をかきにくいという利点がある。コンディションが良いうちに。


「よし!」


 玲奈が登り始めると、少し離れた所からリュウも続いて登りだした。少しでも時間を多く残すため、先に玲奈から登ることにしたのだ。


 順調に中腹まで辿り着く。


「ふぅ……」


 脚を折りたたみ、最大限の跳躍で上へ飛び上がる。


(いける!)


 狙い通り、数メートル先の岩に手がかかった。最初の難関はクリアだ。集中が、研ぎ澄まされているのを感じる。その次も、次の突起も、見事掴み、順調に上へ登っていった。


(あとちょっと……!)


「リュウーー!」

「おう! こっちは問題ねえ」


 玲奈の呼びかけに、上から声が返ってくる。


「よし……」


(心臓バクバクしてる……落ち着け……落ち着いていけば、やれる……)


「おい、あんま悠長にしてる時間はねえぞ!」

「分かってる!」


 目を瞑り、空気の流れを読み取る。今日は、昨日までより、湿った風が揺蕩っている。イメージする。

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