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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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54/68

54話

「一人ずつ行ってみよう」

「俺が先に行く」


 リュウが先陣を切る。二本の木を通過する間、一人きりで進行し、三人は待機する。三十分待って後ろから帰ってこなければ。


「…………」

「…………」

「…………帰って、こない!」

「当たりを引いたか」

「奇数なら三人でも大丈夫なのかしら」

「行けるかもしれないが、三人の中に二人組がいるという見方もできる」

「そうね……一人で上手く行ったんだから、一人ずつ行こうか。次、レナが行く?」

「うん!」


 二人に見送られ、歩いていく。途中までは、さっき見た景色だ。だが、十五分経った頃、道が明らかに変わった。


「これが本当の道……」


 登りや下りを行ったり来たり。息を切らしながら、山道を行く。


(あ、水の音……)


 川とは別の方向に来たのだが、ループから出た先は、川と繋がっているのだろうか。せせらぎを聞きながら歩くと、前方に人影が現れた。


「リュウーー!」

「来たか」

「やった! 抜け出せたね!」

「おー。やったじゃねえか」

「ねー、良かった!」

「いや、そうじゃなくて、お前の手柄だろ」

「へ?」

「お前が読める文字だったから、解決策が分かったんだろ」

「いや、たまたま読めただけで何したわけじゃ」


 そう言いつつも、リュウの言葉は、素直に嬉しかった。照れから視線を逸らす。リュウは口の端を上げた。


「素直に喜びゃいいのに」

「謙遜は日本のお国柄なの」

「あ?」


 その後、トキとナシュカも合流し、四人は無事にループから抜け出すことができた。嬉しさの一方で、玲奈は疑問を深めた。


(なんで、日本語が……?)

  


 * * *


 無事ループを脱出し、前へ進むこと小一時間。次に四人の前に現れた障害物に、玲奈は上を仰いだ。


「これを登れってことか」

「二十メートルはあるな」


 次の試練は、断崖絶壁の登頂のようだ。


「殆ど岩の凹凸(おうとつ)がないな。相当握力がいるぞ」

「うん、つるつるだね……」


 崖らしくない崖だった。ゴツゴツと出っ張りがあれば手や足がかりになるが、ポツポツと、僅かに指先がかかるような出っ張りしかない。


「魔術を使えば、私とトキは何とかなるだろうけど……二人ね。リュウはどう?」

「このくらいなら余裕。魔石は使わない」

「ええ!? この崖を?」

「……ろくな掛かりのない、垂直の崖だぞ。素の能力だけで行けるっていうのか」

「お前には無理だろうけどな」

「ちょっと、喧嘩しないでよ」


 リュウの挑発にトキはかちんと来たようで、睨みつけた。すかさず止めに入ると、矛先は玲奈に飛んだ。


「で、お前は?」

「……自信はまるでないけど、躯術を使ったら……たぶん……」


 サディの屋敷から迷宮に辿り着くまでに、崖下から振り落とされそうな瞬間があった。魔力で強化しても、自重を全て支えるにはかなり体力を消費した。それが、二十メートル続くのだ。正直、不安しかない。


「ネックはレナね」

「できるだけサポート体制を取る。上から落ちる可能性を考えて、下に二人待機。一人は上にいたら、引っ張れるはずだ」 

「引っ張れるくらい上まで来れたらな」


 リュウのぼやきは最もである。 

 

「俺が上で待ってる」


 そう言って、リュウは軽々と一歩目を踏み出した。


「え……えーっ!?」


 一歩目で二、三メートル簡単に飛び上がると、わずかな突起に手や足をかけ、更に上へ登っていく。いや、登るというよりは、跳ね上がってる。


 玲奈が目を丸くしてるうちに、ものの二、三分でリュウは登頂してしまった。


「嘘ぉ……」

「驚いた。あれで魔力使ってないっての?」

「人間離れしてるな」


 トキとナシュカも流石に驚いている。そして玲奈はちょっと落ち込んだ。


(アイツ、魔術あんま使えないっていうから仲間意識持ってたけど……そんなの、関係ないじゃん……)


 リュウの身体能力を見せつけられ、自分の落ち零れっぷりが強調されることとなってしまった。


「じゃあ、レナ」

「うん……」


 しかし、落ち込んでいても始まらない。玲奈は魔石を地面に叩きつけた。


 緑の光が舞い、体内へ魔力を行き渡らせる。


(まずは足。あそこの突起までジャンプ)


 狙いを定め、崖に向かって飛び上がる。


「わっ」


 飛ぶ方向がズレてしまった。飛んだ先には、掴めそうな石がない。飛んだだけで、結局地面に戻ってしまった。


(う、もう一回)


 今度は方向は定まった。飛んだ瞬間、魔力を指先へ移らせる。


(掴める!)


 狙った石に、手をかけた――が、握力が足りず、玲奈の身体は下にずり落ちてしまう。       


「きゃっ……、っ、たた……」

「ちょっと、大丈夫?」

「うん……擦りむいただけ」


 またも崖下である。


(全然握力が足りなかった。魔力の移動が、間に合わなかったんだ)


 足から指へ魔力を移しきれず、握力の強化が足りなかったのだ。


(別ルートを探すか)


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