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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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52/68

52話

 テクの実を食べて(酸味に悶絶しながら)暫く座って待っていると、トキとリュウが戻ってきた。


「後ろから……」

「……てことは、リュウの言う通りか」

「そのようだ」


 トキも頷く。進んだはずが、元の場所まで戻されている。さっきも狭い一室に閉じ込められてたばかりだというのに、またも脱出しないといけないようだ。


「さ、どうする」

「左の川の方から行ってみる?」

「川幅が百メートルはあって、流れも速かった。俺とナシュカならまだしも、二人は厳しいと思うが」

「うん。危険に飛び込んでくよりは、まずここを突破する術を探した方がいいと思う」


 ナシュカがそう言って、方針は決まった。


「二人で同じ道を歩いた時、最初と違う所はあった? リュウは一度見たら景色を記憶できるのよね?」

「ああ。最初と比べながら歩いてたけど、木や地形そのものは変わらなかった。けど、落ちてる枝や葉の位置は多少変わってた」

「太陽は?」

「変わってない。この場所の太陽高度は四十五度。三十分歩いてる内に五度くらい落ちてたけど、この場所に戻ったらまた四十五度まで登ってる」

「高度が戻ったと気づいたのはいつ?」

「十メートル前……あのデケェ木を潜った所だ」


 リュウが指差す先には、周囲のものより、一際太い幹の樹木があった。


「あれか」


 ナシュカが木を睨んだ。

  

「あの木に何かあるの?」

「強力な禁制魔術は、自然物を依代(よりしろ)にして効力を高めんだよ。あのデカさなら千年近くの命力が溜まってる。それを崩すのは並大抵の力じゃ厳しい」

「命力?」

「生命の動力のことだ。木は動かねえだろ? 動かない分、生きただけの命力が蓄積されてる。この禁制魔術は、恐らくあの木の命力を利用してる」


 魔力とはまた違う力があるようだ。ふうんと頷くと、トキとナシュカも興味深そうに聞いていた。知らなかったのは玲奈だけではないようだ。


「やっぱり、胡の方が魔術の研究は盛んなのね。導士じゃなくても禁制魔術について詳しく知ってるんだ」

「まあ……スラジよりはな」


 女子たちが関心する中、トキは一人、リュウへ胡乱(うろん)げな目を向けていた。



 一行は、手始めにその巨木を調べることにした。木の付近を行ったり来たりしたが、特に何かを感じることはできなかった。


(おっ)きいだけの普通の木にしか見えない」

「枝でも折ってみる?」

「え、なんか怖いな」

「コイツが原因なら壊すまでよ。やってもいい?」


 待ったをかける者はおらず、ナシュカが魔力で強化した腕で枝を掴む。随分しなって抵抗した枝は、やがてパキン――と折れた。


「とりあえず折れたけど」

「もう一周歩いてみる?」

「次は私とリュウで行きましょ」


 ナシュカとリュウが歩き出すのを見送る。


「何か変わるのかなあ」

「……」

「トキ?」

「……アイツをあんま信用しない方がいい」

「アイツって、リュウのこと?」


 トキは頷いた。


「え、なんで?」

「アイツ……相当手練れの空気を感じる。七級持ちと言ってたが……その程度の実力だとは思えない」

「手練れの空気って……」

「俺は迷宮に来るために、金を貯めてた。魔石は極力使わずに荒事をした。自分より格上と会ったらすぐ退避が鉄則。おかげで、実力を見定める腕はかなり付いた。リュウは、相当できる空気を感じる」

「でも、環術は全然使えないって言ってたよね」


 躯術は魔術の初歩。その上級に当たる環術は、使えるようになるまで、訓練は勿論のこと、訓練するために使う魔石がなければできない。低級魔石しか持っていないと、そもそも環術を扱うための練習ができないのだ。

 

「だから、それが嘘だと思ってる」

「……なんで嘘つく必要が?」


 危険な迷宮で自分の実力を低く提示することなど、百害あって一利なしのはず。


「分からないから、信用できない」

「トキの勘違いなだけって可能性も」

「感覚だけで言ってない。禁制魔術の知識も、いくら胡王国の出身だからって、平民が知ってる範疇を越えてる。権力者、導士に近い立場の可能性がある」

「胡王国の、導士……」

「レナにとっては、敵の可能性もある。気を許すな」

「……うん」


 心配して言ってくれてるのが伝わり、トキに対しては一旦頷いた。しかし心の内では、リュウへ警戒心を持つということに、乗り気にはなれなかった。


(リュウが何か企んでるとは思えないんだけど……トキの勘違いじゃないの)


 勿論、無闇にリュウを信頼し、玲奈の事情を打ち明けようとは思っていない。トキに伝えたのは、やむを得ない状況だったからであり、なるべく素性は隠したい。


 しかし、トキに反発心を覚えるほど、玲奈は既にリュウへ心を許しきっていた。

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