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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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5話

 ぐるぐると、目が回る。鏡に入って飛ばされた時と同じ感覚だ。方向感覚を失ってゆく体。終わりは突然来た。


「いっ……!」


 ドサッ、と地面に背中から体を打ち付けた。ついさっきも体をこんな風に打ちつけた。デジャヴだ。


「……あっ!?」


 きょろきょろと辺りを見回す。そこは牢屋ではない。鏡から放り出された、まさにその場所だった。


「本当に戻った……!」


 玲奈がしたことは時間が戻るように念じだだけだったが、成功したようだ。


「とにかく、隠れなきゃ」


 今すべきことは、衛兵に捕まらないようにすることだ。その後のことは、一旦あと。


(さっきは向こうの広場の方に行って捕まったから、逆方向に)


 ブレザーを脱ぐ余裕もなく、着たままに、後ろを振り返って、狭まった道へ歩いていく。


(どんどん狭くなってく。向こうから誰か来たら終わる)


 人が一人通れるだけの幅しかない一本道を、恐怖と闘いながら行く。数分ひたひたと歩いていくと、右に折れた所でようやく隠れられそうな所を発見した。


(茂み! ここに一旦入ろう)


 脇道に背の高い植物を発見し、その緑の中へ身を滑らす。


(暑……服脱ご)


 ようやく一息ついて、ブレザーとベストを脱いだ。額には汗が滴り落ちている。ガサゴソと動いていた最中、複数の足音にぎくりと身を凍らせた。


「予定ではこの辺りと聞いているが……」

「いないな」

「向こうまで出るか」


(私を探してるんだ)


 衛兵たちが近づいてくる。玲奈は固唾をのんで、ただ見つからないように祈るしかできない。


(お願い……)


 足音は、そのまま遠ざかっていった。音が殆ど聞こえなくなってようやく、息を吐き出した。


(いつ戻ってくるか分かんない。動かなきゃ)


 幸い、暫く茂みは続いている。隠れながら、奥へ移動することにした。ブレザーとベストは茂みに隠して、多少身軽になる。


 中腰で進んでいくと、壁にぶち当たった。


(これは……超えるしかないか)


 壁は三メートルほど。所々、手や足をかけられそうな隙間がある。運動神経は自信がないが、今はそんな事も言ってられない。


(よっ……)


 平均に満たない握力で、僅かな隙間にしがみついて登っていく。手も足も痛い。


(ローファー動きにくい……)


 ゆっくりではあるが、徐々に上へ登っていく。たっぷり時間をかけて、やっと頭が壁の向こうに出た。そして向こう側の景色に目を瞠った。


「っ!」

「なんだ? 今微かに音がしたような」


(やば!)


 壁の向こう側には、衛兵がいた。慌てて壁から飛び降りる。ドサ、と音が響いたが気にしてられない。とにかく全速力で逃げるのみだ。


「物音があったぞ! 向こうへ回れ!」

「ハ!」


(やばいやばいやばい!)


 ダッシュで壁から離れる。しかしここはさっき来た一本道だ。向こうに逃げれば逃げるほど、広場の方へ出てしまう。


(どうすれば……っ、また隠れる? いや、でも)

  

 ハアハアと、呼吸が大きく響く。真っ白になる頭。恐怖にのまれ、何も考えられなくなっていく。

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