表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

46話

 日が一番高く昇る瞬間。迷宮への挑戦者たちが、扉の前にたたずんでいた。扉は迷宮の端に位置し、ゴツゴツした岩でできている。開くときにはゴゴゴと大きな地響きと揺れが起こる。


「追手はいなそうだな」

「うん」


 透明状態であっても、ずっと緊張感は拭えなかったが、杞憂で終わったようだ。


 迷宮は、一つのチームを通すごとに扉を開閉するようだ。前の者たちから順に、迷宮へ吸い込まれていく。


「さ、行こう皆」

「うん!」


 先導するナシュカに付いて、扉を潜る。頑強な扉は、一番後ろのトキを通すと、また大きな音を立ててガシャンと閉じた。


 扉の先は、暗く、遮蔽された空間のようだ。そして、一番に感じたのは、その温度。


「寒っ……」


 三十度近い外とは、まるで別世界。季節をまたいだかのようだ。


「ンだこの冷気」

「ひんやりしてるね……早めに出た方がいいかも」

「これ……なんだ、鉄か?」


 トキが叩いたのは、壁。外観はピラミッドを思わせる土壁だったが、目の前の壁は金属製だ。


「ねえ、先に入った人たちいなくない?」

「同じ所から入っても別の場所に飛ばされてんだろ。迷宮は魔術の宝庫だ」


 つまり、ここでは常識外のことが当たり前に起こっている。それを頭に入れて臨まねばならないということだ。


「分かれ道よ」


 先頭のナシュカの前には、三つの道があった。





 少し時間は戻り、サディの屋敷でも日が昇っていた。


「サディ様! レナが」

「……!」


 ヤザンの報告に、サディは玲奈にあてた部屋へ向かう。荒れた形跡はなく、何も変わりない。ただ、玲奈の姿はない。


「……侵入の可能性は」

「私がずっと控えていました。まず間違いなく、本人の意思かと……気付けず、不甲斐ないです」

「……とりあえず、探そう。レナが行けそうな所と言えば……ここに来るまでに会ったという協力者か? 行方が知れないと言ってたが」

「向こうから連絡を取れるとは思えません。レナは回路石を持ってませんでした」

「そうだな。どこかで落ち合う場所を決めていた可能性はあるが、検討はつけられない。彼女単独の行動とすれば、この国から逃げる道……」

「迷宮ですか」

「一番可能性が高いのはそこか。すぐ向かえ」


 ヤザンは首肯し、姿を消した。そして、サディはもう一人を呼びつけた。


「シャロフ」

「……はい」

「……どうした、顔が真っ青だが」

「っ……俺」

「何やら理由在りのようだな。レナ絡みか」

「…………はい」

「話せ」

「……一ヶ月前、王都に出向いた時のことでした」


 シャロフは暫く、行方知れずになっていた空白の時間がある。サディの命で、王宮の事情を把握すべく、王都へ潜っていた期間のことだ。




 この時、シャロフはサディが玲奈を招き入れようとしていることは、まだ知らぬ身であった。サディから出された命は、「破滅の子を捜索中の、王宮の動きを探ってこい」だ。破滅の子と宣告された少女は、予定では昨日、城近くに転移されてくるはずだった。だが、未だに見つかっていないという。



(しかし、なんでサディ様は破滅の子なんぞに興味があるのかね)


 身を潜めながら、王宮の周辺へ潜り込む。シャロフはサディの護衛。サディが不在の中、王宮には入れない。


 サディの立場は複雑だ。王子でありながら、兄――ロアンに、常に警戒の目を向けられている。ロアンは既にこの国の宰相として、政治においても軍備においても、実権を握りつつあった。サディに重要な情報を回さないように根回しされている。

 

 サディが王宮に来ても、自室から長く離れれば、どこからかお目付け役がやってくる。『破滅の子』の審判においても、サディは入室を赦されない予定だ。もっとも、それが開かれるかは、当人が確保されるか次第だが――


 まずは王都の酒場で情報を収集する。曰く、破滅の子は現れるとされた時刻に姿を見せなかった。衛兵が王宮の裏で怪しい物音を聞いた。女性の後ろ姿を見たという証言もある。転移が果たされなかったということではないようだ。


 最も、転移が失敗したのでは、などと大っぴらに言えば、実行役である神殿が猛反発するから、口には出せないが。


 転移の時刻から一時間後には、既にロアンは王都の検問を始めたが、それも空振り。一晩経ち、市民の家宅も含めて、王都の徹底捜査に乗り出している。


(つまり、王宮は空っぽってわけだな)


 普段張り付いている衛兵は、破滅の子探しに外へ駆り出されている。ならばと、シャロフは大胆に王宮内へ潜入した。


(これだけ兵が少なきゃ、だいぶ奥まで行けるな)


 王制審には、王族のほか、神殿の長、神官長が出席する。


(王族は難しくとも、神殿の情報を得られれば……)


 前しか見ていなかったシャロフは、背後を取られたことに気付くのが遅れた。気配を察知し、咄嗟に距離を取ったが、相手が一枚上手だった。


「ぐっ!」

「大人しくしろ。抵抗するなら足を折る」


 うつ伏せに倒れたシャロフの背に、スラッとした男がのしかかっている。


(コイツは、ロアン殿下の……クソ、俺の顔も知られてるな)


 サディの部下が王宮に入り込んでいたことが、ロアンに伝わってしまった。こちらの素性を知られている以上、逃げたとしてサディの弱みとなることは確実だ。


(そもそも逃がしてくれそうにないか)


 諦めて体の力を抜くと、連行され、牢にぶち込まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ