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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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38/70

38話

 ミトラは意識を今に戻すと、玲奈に向け張り切ってみせた。


「でも、あなたを助けたいって気持ちは、誰よりもあるから! 私、頑張るわ!」

「うん……ありがとう?」

「導士にはなれなかったけど、魔石の扱いなら私も教えられる! ヤザン、少し口出ししても?」

「勿論です。どうにかしてやってください」

「よし!」


 ミトラが手解きしてくれるようだ。ヤザンより優しいであろうと、期待が膨らんだ。



「レナ、もう一回!」

「ひぇ……ミトラ、休ませて……」

「今が頑張り時よ! ほら立って!」


 ミトラはヤザンに負けず劣らずのスパルタっぷりだった。


「でも……もう手足ピリピリしててぇ……」

「神経痛は痛いうちに動かして慣れた方がいいのよ」

「ぅっ、ヤザンと同じこと言う……」


 玲奈の奮闘は夜まで続いた。




 夕食はサディとミトラと、三人でとることになった。二人はかなり気安い仲のようだ。当初、ミトラはサディのことを敬称をつけて呼んでいたが、それは玲奈の手前、畏まっていたらしく、今は気にしなくなったようで、呼び捨てで呼びあっている。


「ミトラって、王太子妃になるの?」

「まあ、肩書はそうなるわね」

「めっちゃ偉い人じゃん。王宮でも敬われまくり?」

「ううん、そうでもないよ。まだ子供もいないし、殿下の一側室とそんなに扱いは変わらない」

「ええ、マジ? ……ていうか側室とかいるの?」

「もちろん、一国の王子ですもの。殿下のハレムには姫君がたくさん」

「へぇ〜、ちょっと見てみたいかも」


 アニメやドラマの、綺羅びやかなハーレムを思い浮かべる。が、複雑そうなミトラの顔にぎくりと固まった。


「……ごめん。気分のいいもんじゃないよね」

「王子にとっては当たり前だし、割り切ってたんだけど……殿下は、私の寝所には来ず、ハレムにばかりお渡りになるの。最近ちょっとまいってきちゃって」

「来ないって、全然?」

「嫁いですぐに一度だけ。その後はぱったりとない」


 寝所、などというワードに玲奈は内心ドギマギしているのだが、ミトラがなんともない様子で話すので、その動揺は隠す。この辺りは文化が違うのだと思い知る。


「当然、王宮内でもその話は広まって、私が通るたび、侍女たちに殿下との不仲をヒソヒソ噂されて」

「それは辛いね……」

「その上、父まで殿下との仲に口出してくる始末」

「うわあ、最悪」

「でしょ!」


 落ち込んでいたミトラは途中から怒りに燃え始めた。


「何か粗相したんじゃないか、これから巻き返せ、いかに殿下の機嫌を取るか、お前次第で一族の今後が云々……顔を合わせるたびそればっかりよ! もう限界!」

「うんうん」

「殿下の意に添わないことは今している真っ最中ですが何か!?」

「かなり溜まってたんだね……」


 ミトラが不満をぶち撒けている中、サディは多くを語らず、静かに酒を煽るだけだった。




「ミトラっていつまで居られるの?」

「王宮を開けられるのは長くて五日。明日には帰らないと」

「そっか……」

「また会いに来る」

「……うん」


 彼女はこの世界で初めてできた、同性の友達で、血の繋がった親戚。帰ってしまうことに、玲奈は寂しさを隠せなかった。


「私がいられるうちに、魔力の成形をマスターしましょ!」


 情熱の向く先はそこなのか、と思うも、頷くだけに留めておいた。




「なんでうまくいかないかなー」

「レナ、血管と一口に言っても、場所によって太さが違うのは感じられる?」

「うん、なんとなく?」

「私の場合は、血管が太くて、血液が多く通ってることころが魔力を混入しやすい気がするの」

「太いところか……」


 アドバイスを聞いて、血管の太さを意識してみる。ドクドクと、多く血液が通っているところを探す。そこへ向けて、魔力を注入するイメージを浮かべる。


(注射してるみたい……)


 病院で注射器を持った看護師さんが血脈を探してる画が浮かんだ。そしてふと思い当たる。


(注射って、あんまり垂直に打ってない。肌に対して斜めになってるような)


 そのイメージを真似するように、魔力を血管の流れと沿わせて平行に寝かせる。そして、そのまま、ブスッと……


「あ、できたかも」

「えっ!? ほんとう!?」

「うん、血と混ざった気がする」

「おーっ、すげえじゃん! おめでとう! なんでそんなあっさりしてんの?」


 護衛を兼ねて見学していたシャロフは、飛び跳ねて喜んでくれた。自分より冷静な玲奈に突っ込みを入れる。

 

「いや、なんか……急にできて拍子抜けしちゃったかも」


 これまで、魔力を血管に垂直に立たせ、神経を研ぎ澄ませて集中していたというのに、それがよくなかったのか。角度を変えて力を抜いたらあっさりとできてしまった。これまでの頑張りの方向が間違っていたようで、遠回りした気分だ。脱力していると、ヤザンに頭を小突かれた。


「できたなら文句ない。よく頑張ったな」

「……なんか、ヤザンに褒められたら実感湧いてきたかも。やった……」

「ふふ、ずっと見てもらってたんだものね。ヤザンの言葉が一番か」


 その言葉に異論はなく、頷いてヤザンを見上げると、彼はどことなく、気恥ずかしそうにしていた。


「これで魔術が使えるの?」

「ああ、体を活性化させる躯術(くじゅつ)はそれでできる。成形した魔力を、試しに足から放出してみろ」

「うん」


 足に魔力を溜め、血液へ注入する。脹脛(ふくらはぎ)が、カッと熱くなった。


「っ!」

「跳ねてみろ」


 軽く力を入れて、上へ跳躍する。いつもなら、数十センチ、上がるだけのはず――


「わーーっ!!?」

「上出来だ」


 手が天井に届くほど、玲奈の体は高く飛び跳ねていた。着地してヤザンを見れば、満足げな笑みを浮かべている。着地すると、自然と、ハイタッチを交わした。

 

  

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