表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/50

3話

 視界が回っている。いや、回っているのは体だ。ぐるぐると、平衡感覚を失い浮遊する体が、底へ底へ、落ちていく。


 ――ドサッ

 

「いっ……! たた……」

  

 玲奈は、地面に背中から体を打ち付けた。随分高くから落ちた感覚だったがら痛みはそこまででなく、すぐに引いていった。地面にぶつかる直前まで、何か長い夢を見ていたような気もするが、それより今の状況把握の方が優先だ。

 

「ここは……?」

 

 体を起こし、キョロキョロと辺りを見回す。すぐ近くに石造りの壁が聳え立っている。玲奈の家の近くに、こんな建造物があった覚えはない。

 

「そうだ私、鏡に引っ張られて」

 

 だんだんと記憶がよみがえってきた。不思議な鏡に引きずられ、どこかへ落ちたのだ。落ちた先が、ここだというのか。

 

「夢でも見てるのかな……」

 

 鏡の中に入って、見知らぬ土地に飛ばされたなど、現実とは思えない。

 

「ていうか暑……」

 

 噴き出している汗に気づき、ブレザーを脱ぐ。春先だったので制服はベストにブレザーを着込んでいた。今の気候は、日本の春とはほど遠い。30℃以上はありそうだ。ベストも脱いで、手でワイシャツを叩いて風を送り込む。


「何なの……」 


 座ってても仕方ないと、玲奈は腰を上げて辺りを歩きだした。壁伝いに道を進むと、開けた広場へたどり着く。

 

「あ、人いるじゃん」

 

 少し離れた先に、外国人らしき男性たちの姿を見つけ、ほっと息をついた。とりあえず、あの人たちにここはどこか聞いて、助けてもらおう。そう思い、彼らの方へ足を進める。

 

「あの、すみませーん……」

「いたぞ!」

「ひっ捕らえよ!」

「え、えっ!?」

 

 彼らは玲奈に気づくと、目を怒らせ突進してきた。思わず後ずさる。

 

(なんかヤバい!? と、とりあえず逃げ)

 

 そう思い振り返ったものの、すでに時は遅し。後ろからやってきた別の男たちが迫っていた。

 

「確保!」

「きゃっ」

 

 屈強な男に後ろ手に引っ掴まれ、膝を折る。逃げようともがくもびくともしない。

 

「大人しくしていろ。罪が増すぞ。大悪女め」

「大悪女……?い、いた、痛いっ」

 

 掴まれた手を、荒い縄でギリギリと絞められ、玲奈は涙目になる。その濡れた目にも布が被され、玲奈はあっという間に捕縛、連行されてしまった。



 無理やり縄を引っ張られて引き摺るように歩かされ、数分。今度は無理やり膝をつかされた。後ろ手にされ、縄をくくりつけている音がする。背後は柱のようだ。

 

「目隠しを」

「ハッ」

 

 覆われていた布が取られる。何度か瞬きして焦点を合わせると、玲奈をぐるりと囲むように多くの目が睨んでいて、ごくりと息を呑む。

 

(まるで処刑場……)

 

「この子が、宣告の大悪女、『破滅の子』か」

 

少し離れた、正面に座る老年の男が喋った。

 

「母親にはあまり似てないな」

「すぐに捕らえられてよかった。見た目では追いきれなかったかもしれない」

「でも、印がついてるという話では?」

 

 そう言ったのは、老年の男の近くに座っていた、若い男だ。青い長髪を後ろで結っていた。

 

「あれを追えるのは条件がある。満月とノアヴェルの重なる時のみだ」

「フーン、導士の魔術といえど不便だねぇ」

 

 赤い髪の、これまた若い男が応え、二人が会話する。老年の男はそれらに相槌は打たず、じっと玲奈を見つめた。

 

「状況を呑み込めないのであろう」

「あ……は、はい」

「無理もない」

 

 優しい声色に、玲奈は自然と頷いた。このような乱暴な扱いをされているのに、彼にはあまり、不信感が沸かなかった。

 

「父上、大悪女に言葉など要りません。すぐに牢へぶち込むべきです」

「これ、待ちなさい。王子たるもの、人の情けが必要と言っておろう」

「父上は甘すぎます」

「ロアンは厳しいつうより、その短気を治した方がいいぜ」

「……なんだと」

「やめんかロアン。アデルもだ」


 玲奈は口喧嘩を聞き流しながら、彼らを観察する。ほとんど一枚布を巻いただけのような白い服は、肩から踝までを覆っている。下衣には植物のツタのような紋様が入っていた。腰にはベルトが巻かれ、その下からフリンジが垂れている。首回りには綺羅びやかな宝飾が施されている。


 王子、父上という台詞から、この老年の男が王であると察せられる。白髪を肩の長さまで引っさげ、ただ一人、宝石が嵌められた冠を身に着けている。隣にいる同じ年頃の女性は、妻――王妃だろうか。彼女はまだ一言も発さず、こちらもまた、どこか痛ましげに玲奈を見つめている。


 そして、彼らの脇に控える若い男たち、王子が二人。向かって左がロアンと呼ばれた王子。赤い髪に、赤い目。釣り上がった鋭い眼差しは、嫌悪の感情で溢れている。


 右側の王子――アデルは、青い長髪に、金色の目。面白そうに口を歪め、玲奈を興味深げに見下ろしていた。どちらも顔の整った美少年だが、今の玲奈に悠長にそんなことを観察する余裕はない。わかったことは、彼らが友好的ではないということ。


 王は、子供たちを諌めると、再度玲奈に向き合った。

 

「そなたは十七年前、この国で産まれた。母親は導士の家系の中でも、極めて優秀な女性であった。そしてそなたは、線の細く、か弱な彼女に、やっとできた待望の娘だった……」

 

 王は遠くを見つめ、哀れみの色を浮かべた。

 

「しかし、そなたが産まれるや否や、神殿から宣告が下った。この子は将来、この国を滅ぼす大悪女。破滅の子になるとの告げだ。すぐに王制審(おうせいしん)が開かれ、そなたが十八の成年を迎えたら、斬首刑とすることとなった」

 

 国を滅ぼす大悪女。

 十八で、死刑。



 どこか聞き覚えのある話に、玲奈は意識を内へ巡らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ