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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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26話

 昼食を取った後、玲奈はヤザンと二人きりで向き合っていた。彼が玲奈の魔術の先生に任命されたらしい。


(うー……、みるからにスパルタなんだけど……ついていけるかな)


 憂鬱げな玲奈に構わず、ヤザンはキビキビと説明しだした。 


「まず、サディ様との話の続きからだ。自分が魔術を使えるか、そう聞いていたが途中脱線しただろう」

「んん、そういえば」


 色んなところに話題が飛んでいったが、玲奈に魔術を教えるという話から始まったのだった。


「結論からいえば、人並みには使えるはずだ」

「本当ですか」

「当然だが、俺は導士ではない。魔術を使うには、魔石を使用している」

「はい」

「それは少し学べば、お前もできるようになる。得手不得手はあるだろうが、俺が叩き込めばそれなりにはなるはず……いや、俺がする」


(ヒェッ……やっぱスパルタだぁ……!)


「それから、サディ様が話してたように、この国には導士がいる。導士になれるものは限られ、彼らは血縁で繋がっている」


(血縁……ということは)


「お前の母親は、導士だ」

「母が……導士」

「あまり驚いてないようだな」

「っ! い、いやいやそんな! めっちゃ驚いてますけど!?」

「……? 急にどうした」


 急に大声を張り上げた玲奈を、ヤザンは不審げに見た。


(フー……大丈夫。ちょっと怪しまれたけど変なことは言ってない。最初に聞いたのが処刑場だけど、それは全部巻き戻してるからなかったことになってて……その後、お母さんが導士ってことは誰からも聞いてない……よね)


 記憶の中で知った情報が、逆廻を行って無かったことになっているのかどうか、玲奈は整理して発言していく必要がある。


「導士の子供ってことは、私も導士になれるってことですか?」

「そうとも限らない。子供であっても、魔力量が少なく導士になれない例もある。それ以前に、導士は幼いころから魔力の錬成を親から習う。それをやってこなかったお前がすぐできるとは到底思えん」

「そっかあ……ちょっと残念」

「フン、どっちにしろ先に魔石の使い方だ。嫌になるほど魔術を使わせてやる」

「ギャッ! お、お手柔らかに……!」


(この人の笑顔初めてみた……全然心休まらない笑顔だけど……) 


 不敵に笑うヤザンに、玲奈は背筋を寒くした。


「まずお前が覚えるべきは躯術(くじゅつ)だ。これは自分の身体能力を強化する」

「はい!」

「魔石の魔力によって、体内の神経伝達を刺激する」

「神経を刺激……?」

「見本を見せる」


 ヤザンは青い魔石を取り出すと、地面へ投げつけた。パリン!――と石が砕ける音と共に、青の光がヤザンの前に広がった。


(割っちゃうの!?)


 驚く玲奈を他所に、ヤザンは足を踏み込んだ――と思った次の瞬間、彼の姿は消えていた。


「えっ! どこ!?」

「ここだ」

「っ!?」


 声がする方を振り返ると、ヤザンは部屋の隅で壁にもたれかかっていた。


「凄い! 瞬間移動だ……!」

「ただ速く移動しただけだ。足のバネと筋肉に働きかけ、通常ヒトでは成し得ないスピードを得る」

「これが私にもできるんですか?」

「できる」


 ヤザンは断言した。そして再び魔石を懐から取り出した。


「えっ、さっき割ったのに何で!?」

「魔石は割ることで魔力を発し、術者が取り込める状態になる。そしてその魔力が吸収されると再び割れた破片が凝結し、術者の元へ自動的に戻る」

「すっご……」

「練習にはこれを使え」


 渡された魔石は、サディに貰ったものからすると、随分くすんでいた。


「八等級の魔石だが、初歩の躯術なら十分だ。ものは試し。一度割ってみろ」

「はい!」


 サディから貰った魔石はしまい、低級魔石を床に叩きつけた。そこまで勢いをつけなかったが、魔石はパリン――と音を立て、割れた。赤い光が玲奈の膝下辺りに広がる。

 

「わっ、これが魔力?」

「そうだ。ここが第一関門。魔力を体内へ取り込む」

「ど、どうやって」

「まず大事なのは、集中し、精神を落ち着けること。余計なことを考えず、無心になる。コツを掴むまで、まずは深呼吸するといい」


 言われた通り、深呼吸を繰り返す。ヤザンはそれを見て「良し」と次のステップを説明した。


「精神が整ったら、息を全部吐き出し、次の呼吸で肺を通し、血中に魔力を入れる」


(息を全部吐いて……、魔力を吸う……)


 玲奈の呼吸音がすうううう、と部屋に響き渡った。魔力はふよふよと、変わらず膝下に留まったままだった。


「これって」

「失敗だ。一度ではうまく行かないのは想定内だ。続けろ」

「……はい」


 そう簡単にできるものではないようだ。ちょっと落ち込むが、何度もチャレンジするしかあるまい。

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