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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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24/49

24話

 翌朝。久しぶりの風呂に、気持ちがいくらか晴れた玲奈は、気持ちよく微睡んでいた。


(ん~~っ……ふかふかのベッドで眠れる幸せ……まだ寝てていいかな……)


 ごろごろしながらぐずっていると、ふと視線を感じる。


「あっ……お、おはようございます」

「起きたんならさっさと支度」

「ハイッ!」


 冷たい声に、玲奈はすぐさま飛び起きる。ヤザンは昨日より、さらに気を張っているようにみえた。


「あの……何かあったんですか」

「お前には関係ない。詮索するな」

「っ……、ごめんなさい」

「あ、いや」


 突き放した態度に玲奈が萎縮するのを見て、ヤザンはしまった、と撤回する。


「……悪い、少し……想定外のことがあって、焦っていた。今のは八つ当たりだ」


 ヤザンはばつが悪いようで、玲奈の顔を恐る恐るうかがった。ずっと眉間に皺を寄せ、目元をつり上げた顔しか見ていなかった玲奈には、とても新鮮に映った。


(……こういう顔すると、ちょっと幼く見える)


「言い方を間違えた。お前に伝えるかは、俺の判断ではできない」

「もちろん、言えないこともあると分かってます。謝らないでください」


 ヤザンは軽く頷いて、「朝食だ」と食事を差し出した。それを無言で食べ進める。二人の距離は、まだまだ縮まらなそうだ。


(今日も一人ご飯か……いや、食べられることに感謝しないと)


 そう言い聞かせつつも、玲奈は寂しさが拭えなかった。



 朝食後、ヤザンに地図を見せてもらいながら、サディの屋敷の周りを確認する。

 

「ここから、北西に王城。お前にとって目下、一番の敵の根城だ」

「……はい」


 できれば二度と戻りたくない場所である。玲奈は地図上のそれを睨みつけた。


「ここからの抜け道だが、寝台の下は屋敷の西に出る。王城に繋がる大通りの裏だ」


 ヤザンは地図を叩く。


「そして絵画の裏は東側へ。この川のほとりに出る」 


 屋敷の近くには、小川が流れてるようだ。屋敷の辺りだと川は細くなっているが、東に進んでいくと太く長く続いている。

  

「お風呂の所は」

「あそこは外には出ない。サディ様の私室へ繋がる」

「サディの……」

「今から出口を見に行く。丁度、サディ様がお呼びだ」

「サディが?」


 ヤザンの言葉に玲奈は露骨に喜びを顕にする。ヤザンは溜息を吐くも、何も言わずに玲奈を先導する。その後ろを、大人しくついて行く。正面からではヤザンの体にすっぽり収まって、玲奈の姿は見えなかった。サディの書斎に辿り着くと、玲奈は笑顔を浮かべた。


「サディ!」

「おはよ、レナ。よく眠れた?」

「おはよう! バッチリ! お布団ふかふかで気持ちよかった」

「それはよかった」

 

 サディは手に持っていた本をパタンと閉じると、玲奈を手招いた。


「これ、レナにあげる」 

「なに?」


 手渡されたのは、三、四cmほどのエメラルドグリーンの石だった。


「……きれい」

「魔石だよ」


 その魔石は、宝石のように煌めいた。奥へ何十にも層が広がっているように見える。


(トキが持っていた奴と、輝き方が違う) 


「今日からレナには、魔術の勉強もしてもらう」

「えっ、私も魔術が使えるの!?」

「その問いに答えるには、まず魔術の基礎を知ってもらおう。導士という存在はもう知ってるだろ?」

「うん」

「魔術を扱う者は皆、魔術師という括りに入れられる。それらは大きく二つに大別される。魔石を使わずに魔術を使えるもの、使えないもの」

「魔石を使わなくてもいいのが、導士」

「そう。導士でない者は、その魔石を媒介しなければ、魔術を発動できない。自分だけで魔力を生成できない。逆に言えば、これさえあれば、誰でも魔術を使えるようになる」


 玲奈は手の中の緑に輝く石を見つめた。

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