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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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1話

玲奈(れな)ー、今日あたしたちカラオケ行くけど、一緒に行く?」

「あー……私、今日は麻友子と約束してんだ! ごめん、また!」

「そっかー、じゃあまた今度ね」

「うん、誘ってくれてありがと! また明日!」

「ばいばーい」

「じゃねー」


 玲奈を見送った亜香里と奈央は、顔を見合わせ溜息をついた。


「あの子って私らと仲良くする気あんのかなー」

「一年の時の友達と一緒にいる方が楽しそうだよね」

「ねー……ま、別にいいけど」

「そう、それよりカラオケ! ハニトー食べたい!」

「えっ、絶対食べよー!」




 

 逃げるように教室を後にした玲奈は、下駄箱前にて項垂れていた。

 

(あー、さっきの良くなかったかな……うー……)


「玲奈ー、おまたー」


 現れた待ち人は、高校での一番の親友の麻友子だ。今の玲奈には、彼女の姿が天使のように煌めいて見えた。

  

「麻友子ぉ……聞いてー……」

「なによ泣きそうな声して。またクラスでなんかあったの?」

「さっきカラオケ誘われたんだけど……麻友子と約束あるって断っちゃって……」

「あんたね。約束なんて、帰るだけじゃん」

「うん……」


 校門を後にしながら、玲奈は溜息を吐いた。八津実玲奈(やつみれな)、高校二年生。専らの悩みは、クラスにいまいち馴染めないこと。


 進級し、新しいクラスに仲の良い知り合いは皆無だった。何とか入れてもらったグループは、玲奈以外の二人が一年の時からの仲良し。いい子たちだとは思うのだが、どうしても疎外感があり、進級し、一ヶ月経った今でも、クラスに馴染めないでいた。最近、学校が憂鬱でたまらない。


「あー、一年の時に戻りたいー」

「現実逃避してる暇あったら、その子たちと馴染めるように頑張ったら?」

「正論やめて」


 落ち込んでる時にかまされる正論パンチほど痛いものはない。友達なら優しく慰めてくれたっていいのに、と恨み節を浮かべる。


「こんな事なら入学した時部活入っとくんだったー」


 部活見学は色々周ったが、結局、玲奈はどこにも入らなかった。交友関係を広げておけば、と後悔するも遅し。二人で駅前のファーストフード店に入る。ぐだぐだと駄弁る内、悩んでいた気持ちは薄れていく。持つべきものは友だ。


「麻友子は明日習い事だよね」

「うん。今さら部活入りにくいってんなら、玲奈も何かやってみれば?」


 麻友子はバイオリンを習っていて、部活には入ってないが、校外で精力的に活動している。こうやって一緒に過ごしてる時には気を許せる対等な友達だが、根本的に、毎日暇で、なんの趣味も特技もない玲奈とは違うのだ。

 

「うーん……それも面倒くさい」

「あんたねえ……」

 

 呆れ顔に、えへへと笑って誤魔化す。


「高校はもういいよ。何とかやり過ごせればいいかなって。その分、大学入ったら生まれ変わるから! 留学とか、めっちゃ憧れあるし」

「ならいいけどね」


   

 麻友子と別れ、最寄り駅に着く。本屋に寄ってたら、日はほとんど落ちていた。辺りが暗くなる中で、玲奈は路地裏がやけに明るく光ってるのを不思議に思った。好奇心につられ細い道へ足を進める。

 

「なんだろう……鏡?」

 

 コンクリートの壁面が、一カ所だけ日光に反射しているようにキラキラと輝いている。

 

「でも、もう太陽落ちてるのに……」

 

 反射してるのではなく、発光しているのだろうか。玲奈はもう一歩、足を出して前のめりになった。


 その時。

 

「っ!?なに、引っぱられる……っ」

 

 鏡の中から強い風が吹いて、玲奈の体が吸い寄せられる。ローファーで必死に踏ん張るが、鏡はどんどんと玲奈を手繰り寄せるように引き込んでいく。ついに鏡と玲奈の体はひたりとくっつき、鏡の中に体が埋まっていく。


「いやぁっ! やめてっ、誰か! 誰か助けてっ!」


 精一杯声を張り上げるも、薄暗い路地に人の気はない。


「はな、離して……っ、いや、きゃあアァアっ――!」





 玲奈の体は、底の見えない鏡の中へ落ちていった。


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