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そして嵐の前、姫君のはじまり
そこまで思い出して、アルマリアは一人、ぼっ、と真っ赤になった。白い肌なのでまるで林檎のようだ。
「でんか……」
頬を押さえたままそう呟いたアルマリアは、思いのほか甘い自分の声にぎょっとした。
ぶんぶんと首を振る。
そして彼女はぺたりと座り込んだ。
*
婚礼、誓いの口づけ。
アルマリアはそれを、仄かに赤く染まった頬で臨んだ。
観衆に見守られる中、ゆっくりと距離を近付ける王子と口づけを交わす。
深く、長い口づけは、直前にした口づけの、最後のものに似ていた。
だが、あんなに息苦しくはない。違わないことは口が触れ合っていることと、この口づけがどこかたどたどしいこと。
長い長い口づけのあと、ちゅ、と小さく音を立てて離れた唇。
そのあとの婚礼の儀のことは、あまり覚えていなかった。
……気絶しそう。
婚礼って、面倒なだけじゃないのね。
面倒なんて、思っている暇もないほど大変なんだわ。
秘かに息を吐いた。