表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純情白雪姫  作者: 祭歌
序 其は玉の如き白雪姫
3/37

ようこそ、エビリスの白雪姫 2

 びくんっ、と睫毛を震わせる。


「で、殿下……?」


 おそるおそる見上げると、ヴィルヘルムは困ったような表情をしていた。


「姫、そう仰って、もう戻ってはいらっしゃらないおつもりですか?」

「……は、はい?」


 意味が分からず首を傾げる。すると彼は大仰な仕草で肩を竦めた。


「私を見た女性、もしくは婚約話が上がりかけた女人は必ずそう仰って、二度とお顔を拝見することがありません。どうやら趣味が合わなかったようで」


 本当に困ったように言われて、アルマリアは漸く、彼の言う意味が分かった。

 そして慌てて否定する。


「ま、まさか殿下! そんなことありません。だってわたし、もうあの国のものではない、と陛下に言われましたから」

「え?」

「わたしが申し上げているのは、もう日も暮れてきていますから、という意味で、つまり他意はないのです。信じて下さい殿下」


 今度は彼女が困ってそう懇願すると、ぽかんとしていた王子は、ぱっと花咲くように微笑んだ。その後ろでは、エンナが心底安堵したようにへたり込んでいる。


「ああ!そういうことですか。分かりました、そうですね。もう遅いですし、集まっているのは暇人ばかりですし、また明日か、明後日か……貴女が良ければいつでも構わないですしね」

「ああ、分かっていただけて嬉しいです」


 ほっと胸をなで下ろす。——自分は、もうあの国には戻れない。だから彼に嫁ぐのだ。これもそれもあれも全てが義務だけれど。


「それでは姫、今宵はこの城に泊まって下さいますか?」

「よろしいのですか?」

「ええ、本当は今日、ここが貴女の家になる筈だったのですが……すみません」

「いいえ、いいえ! お気になさらないで下さい。——それでは、ご好意に甘えさせていただいてもよろしいでしょうか」


 小首を傾げてそう問うと。

 第一王子と侍女は強く頷いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひっそりこっそり実のない小話。(お返事は更新報告にて)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ