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純情白雪姫  作者: 祭歌
序 其は玉の如き白雪姫
2/37

ようこそ、エビリスの白雪姫

「おっ、おっ、王子————!」


 き————————ん、と耳に響くほどの怒声が上がった。

 吃驚してアルマリアが固まっていると、先程どもり気味に彼女に言い訳していた少女が、顔を真っ赤にして鼻息荒く仁王立ちしていた。


「王子! 今日だけは止めて下さいと申し上げました筈でしょう!」

「しかしだな、今日はひびの入り方がとても美しいご夫人の遺体で……」

「あああああああ変態発言はお控え下さいませ! この部屋にはアルマリア殿下がいらっしゃるんですよ!?」


 ばっ、と侍女がアルマリアを振り返る。急に話を振られた彼女は、ぱちぱちと目をしばたたいてから、


「あ、わたしのことはお気になさらず」


 どうぞ続けて下さいな、と微笑んだ。

 ざっ、と青ざめる侍女に、おお、と頬を綻ばせる王子。


「やあどうも。貴女がアルマリア殿下でいらっしゃいますね? 私はリュファーニア聖国が第一王子、ヴィルヘルムと申します。此のたびは約束の時間に遅れてしまい、申し訳なく————」

「遅れ過ぎです!!」

「……エンナ、少し黙っていてくれるかな。お待たせしてしまった姫を、さらにお待たせするのは心苦しいことだと思わないか?」

「なななななな、何をしゃあしゃあとっ————」


 ぶるぶると青紫の顔で震え出すエンナと呼ばれた少女を、アルマリアは不安気に見上げた。大丈夫かしら。血圧が上がり過ぎて倒れてしまいそう。

 どうしましょう、と思いながら、王子に視線を移すと、彼はふわりと優しく微笑んだ。


「どうかなさいましたか、姫?」


 とくり、と胸が高鳴る。

 思いがけず、綺麗で優しい声だった。

 徐々に火照ってきた頬を片手で押さえ、アルマリアは小さく、呟くように言う。


「あの、殿下」

「はい」

「今日は、婚礼は無理なような気がします」


 ぎゃ—————! とエンナが叫んだ。

 ヴィルヘルムは変わらず穏やかな笑みを浮かべている。


「おや、どうしてですか?」

「だって、もう大分日が傾いております。内輪のみの婚礼なのですし、また日を改めてでも……」

 

 言いかけた時。

 すぅっと白い指が前髪に触れた。

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ひっそりこっそり実のない小話。(お返事は更新報告にて)
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